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【Bar S 】episode28 W浮気



「俺、マユミとは結婚出来ない」

ナオトが言った。

ナオトが珍しくひとりで店に現れた。恋人のマユミと一緒でない時には、タツヤやカエル君をいつもなら誘って来るのに。

大ジョッキのハイボールを呑みながら、みんなの噂話しをしていた。そして、マユミの事について話しを振ったら、結婚出来ないと言い出したのだ。

ナオトとマユミは同棲していて、そろそろ結婚しようか という話しになっていた。後は、お互いの親に挨拶に行き、結婚式の予定をたてていくというだけの状態になっていた。

ところが、ナオトの方に挨拶をしに行く予定をたてている段階で、マユミがナオトの母親には会いたくないと言い始めた。ナオトの母親に何度か会った時に、マユミは見下されているように感じたらしい。それで、わたしは絶対に挨拶には行かないと、ナオトに宣言した。

ナオトは母親と異常だと思えるくらい仲が良かったから、マユミの言う事を受け入れる事が出来なかった。

ふたりの話し合いは平行線を辿った。ナオトからすると、それならばいっそのこと別れてしまった方が良いのかと考えていたようだ。

「マスター 俺、実は他に好きなコができたんだよねー!」

「まだ、つき合ってるとは言えないけど、俺の話しを黙って最後まで聞いてくれて、凄くいいコなんだー。だからマユミとは別れて、部屋を出て行ってもらってから告白しようと思ってるんです。まあ、もうやることはやっちゃってますけどね!」

「でも、マユミの事も心配ではあるんです。あいつ 俺がいないと精神的におかしくなっちゃうんじゃないかと思って。直ぐに頼れる相手を見つけられればいいんだけど。」

「それは大丈夫なんじゃないかな。そんな事、気にしないで別れたいならサッサと別れちゃえば!」

私がそう言うのには、確かな理由があった。



マユミは、ナオトと付き合っていながら、他に3人の男と寝ていた。それも、ここ2ヶ月の間にだ。マユミは、ひとりで店に来ては美しく美味しそうにビールを呑みながら、私に逐一報告してくれていた。

最初は勤務先の上司。会社での飲み会のあとにホテルに誘われて、そのまま勢いで。この男には妻子があって、お互いにその場の雰囲気だけだったから、ワンナイトだけだと言っていた。
次に、マユミが通っている美容院の担当の美容師。以前から食事に誘われていたようで、結婚の事でナオトと言い争いが増えてきてから、誘いを受け入れ、食事の後 そのままホテルへ。美容師はイケメンで、優しく話しを聞いてくれて、マユミと本気で付き合いたいと言ってくれている。その後には なんと、ナオトと一緒に住むマンションに彼を招き入れ、いつも二人で寝ているベッドでいたしたという事だ。
3人目は、最近 店に来るようになった23歳の男。彼は就職の関係で引っ越してきたばかりで、ウチの店が入っている建物の3階に住んでいた。マユミがひとりで店に来ていた時に、彼(ショウタ)が始めてやって来た。マユミの隣に座ったショウタは、明らかにマユミのことを狙っていた。2回目に店で顔を合わせた日、店を出た後 ショウタの部屋で。彼とは少なくとも3回は寝ている。

ショウタは、店によく来るようになったので、ウチの常連メンバーとも仲良くなった。当然、ナオトとマユミが一緒の時にも顔を合わせているが、ショウタもマユミも、何事もなかったかのように自然に皆と仲良く話しをしていた。



要するに、ふたり共 他の人間とも仲良くやっていた訳だ。しかもマユミの方は股がゆるい。だから別れたいのなら、とっとと別れた所でマユミはそれほど困らない。

ナオトもマユミも、お互いに相手の事を浮気なんて絶対にしないと思い込んでいた。自分の方だけが、浮気をしていると。


ナオトは罪悪感を持ちながらも、やっとマユミに別れを切り出した。マユミには泣かれたようだが、思っていたよりすんなりと受け入れてくれたと言っていた。

1ヶ月後、マユミはナオトの部屋を出て、隣街に部屋を借りた。

引っ越してからも店に来て、それまで通りに皆と仲良くしていた。ナオトとも、友達として普通に話してた。


ナオトはその後、心移りした女の子に告白したが、フラれたのであった。




ーepisode 28 おわりー

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