人間中心設計はブランディングに役立つか?
こんにちは、デザインマネジメントファームCOLOGUEでデザインリサーチをしております藤井です。近年、私も組織の「ブランディング」に関わらせていただく機会が増えてきました。すると、なぜ私は人間中心設計を学んでいるの?それって役に立つの?という疑問が浮かんできます。
いや、役立つ。絶対役立つ。と私は考えているので、よければ「その心」を今日はお伝えしたいと思っています。
このnoteのターゲット
ブランディングに関わるデザイナー
ブランディングをスタートしたい、見直したい企業担当者
人間中心設計に関わる方々
参考書籍
ブランディングとはなにか、多くの方々が定義されていると思いますが、今回は西澤明洋さんの名著ブランディングデザインの教科書から、定義を引用しました。とても平易な表現かつ体系的、実践的にブランディングをまとめてくださっている書籍なので、ぜひご興味のある方はご覧ください。
MUJIさんがどのようにMUJIらしさを世界に広げ、ブランドをマネジメントしているかのヒントが詰まった書籍です。「マーケティング」というタイトルづけですが、個人的に3章はブランディングを運営するヒントが詰まっていると思います。
まず、ブランディングとはなにか
人間中心設計に役立つか?という議論の前に、まずは今回の主題である「ブランディング」がなにか定義していこうと思います。
つまりブランディングは、人から人へ自然に「なにか」を伝える取り組みのことです。書籍をもとに、もう少し掘り下げて考えてみます。
親ブランドを人から人へ伝えることで、子ブランドを形成する
先程の「なにか」とは「他と全然ちがう(差異化された)とわかるブランド」のようです。つまり、ブランドの提供者が「親ブランド」をデザインし、これを人から人へ自然に伝えることで、人々の頭のなかに「子ブランド」を形成する、これら一連の取り組みがブランディングと言えるのではないかと思います。
さて、親ブランド、子ブランドとは具体的にどんなものでしょうか。次は別の書籍を参照しながら検討していきます。
親ブランドとは具体的にはなにか
MUJIというブランドには、店舗マニュアルはあるものの、ブランドのマニュアルはなく「無印良品」というコンセプトと著書では述べられています。社員が商品開発で悩んだときは「無印良品の本(現在は絶版)」というMUJIの世界観を感じることができるムック本を読み、ヒントをもらうそうです。
つまり、世界観から「たぶんMUJIってこんな感じ(暗黙知)」というイメージを社員一人ひとりが読み取り、商品を開発し「これってMUJIっぽいね」という形式知化を繰り返すことで、MUJIらしさを保っているそうです。
ここから私は、親ブランドとは「世界観と言語化されたコンセプト」が一例にあげられると考えました。社員一人ひとりがこれを確認することで「そのブランドっぽいイメージ」である「子ブランド」が形成され、さらに生活者へ伝言されて形成されるのは「孫ブランド」と言えるものかもしれません。
ブランドはどのように伝言されていくか
親ブランド、子ブランドの具体性が上がってきたところで、最後にどのように伝言されていくかを考えていきます。
さきほど子ブランドは「ブランドっぽいイメージ」であると考えました。このイメージが形成されるプロセスには、どんな体験が考えられるでしょうか。「MUJI」が題材になった書籍を参考にしているので、そのまま「MUJI」を例に考えてみます。
第0フェーズ:提供者が親ブランド・子ブランドをつくる
MUJIの基本コンセプト(親ブランド)は「感じ良い暮らしの実現」です。このブランドをもとに、社員が子ブランドを頭に形成し、これを実現するような商品開発をします。この商品は生活者が立ち入るような店舗にならびます。
第1フェーズ:生活者の生活圏に入る
たとえば、MUJIはイオンやアトレのような大きな商業施設に店舗が入っていることが多いですね。なので、MUJIの店舗に入らなくても「なんか赤茶でナチュラルっぽい雰囲気の店がある」くらいの記憶を生活者に残します。
もしくは家族がMUJIの商品を買って、使っていて目にするかもしれません。なんか家でよく使うシンプルな食器だなくらいの認識です。次の瞬間には忘れているくらいの認識です。
第2フェーズ:生活者がイメージで覚える
同じ商業施設を利用していると、何度もMUJIの店舗を見ることになるでしょう。そうするとちょっと入ってみようかなという気になるかもしれません。もしかしたら商品を買うこともあるかもしれません。すると「アトレの4Fの雑貨の店」や「ナチュラルな雰囲気」くらいの記憶が残ります。
第3フェーズ:生活者が気に入る
購入したシンプルな皿を使っていると、どうも使い勝手がよくて、いろいろな料理をのせるのにちょうどいいな、なんて思うようになります。すると、この生活者はあのナチュラルな雰囲気の店で、もう少し小さい皿を買ってみようかなと思うようになりました。
第4フェーズ:生活者がブランドでえらぶ
先程MUJIでお皿を買ったときは一人暮らしでしたが、結婚してお皿を一揃い買い換えることにしました。生活者は結婚相手にMUJIで皿を買い揃えることを提案します。なぜ?と言われたら生活者はこう言うかもしれません。「だって、MUJIって感じ良くてちょうどいいんだもん。」
ここにきて、ようやく最初の親ブランドに近い孫ブランドが生活者のなかに形成されたようです。ふう。時間がかかりましたね。つまり、ブランドは一気に構築されるのではなく「たくさんの印象や体験の集合知」と言えるかもしれません。
…ん?体験?やっと人間中心設計らしい言葉がでてきましたね。
人間中心設計はブランディングに役立つか?
やっとこの問いに戻ってきました。さぁ、答え合わせの時間です。役立つ理由をお伝えしていきます。
改めてですが、人間中心設計とはなにかをおさらいします。
人間中心設計は、生活者が達成したい目標のために「普通に使える」ことをめざします。
1.人間中心設計はブランディングの流れを止める原因をなくす
さきほどのフェーズをまとめてみました。
これらのフェーズで、「製品やサービスを普通に使える」ようにする人間中心設計が関わるのはどこでしょうか。
そう、第0フェーズ、親ブランドができたときに、子ブランドをもとに社員が商品開発をするときですね。ここで「普通に使えない」商品を作ってしまってはそもそも第3フェーズの生活者が気に入るに至りません。つまり、人間中心設計はブランディングの伝言の流れを止めないために必要なものと言えます。
2.人間中心設計は、親ブランドのヒントをみつけて検証できる
さらに、人間中心設計は親ブランドの形成にも関わりがあると考えます。MUJIのコンセプトは「感じ良い暮らしの実現」でしたが、これは人々が「感じ良い暮らし」を求めているからこそ成り立つことです。そう、人間中心設計は人々が求めている「目標」を探検するプロセスでもあります。
親ブランドの形成の際にも、そのブランドが本当に求められているものかを探検することが必要です。なので、親ブランドをつくろうとしているブランディングデザイナーの皆さま、きっとあなたのデザインの探検や検証に人間中心設計が役立ちますよ。
人間中心設計の思想を考えた記事もあるので、よければどうぞ。
まとめ
人間中心設計はブランディングに役立つか?という問いに対していろいろと考えてきました。
答えとしては、人間中心設計は、親ブランドのヒントをみつけて検証でき、かつその先のブランディングの流れを止める原因をなくすことができます。よって、ブランディングを始めようとしている人はもちろん、ブランディングを実践している人はぜひ学ぶことでブランディングを推進しやすくなると思います。人間中心設計について学びたいと思われた方は参考書籍をおいておきますので、よければご覧ください。
(ブランディングに特化している本はあまりないので、いつか私が実践した事例をnoteにしてみようかなとも思っています。)
ここまでお読みいただきありがとうございました!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?