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BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係 #00 環境と建築を考える その2   「生態建築」?

前稿からだいぶ間が空いてしまいました。

前稿のおさらいをすると、これからの環境建築を考えるとき、建築を「閉じた箱」として捉えるのではなく、自然との関係性の中で捉え、考えることが必要でしょう、ということでした。

建築の近代化は設備を伴い、また、主に工業材料で作ることが可能になり、ゆえに、環境と関係なしに成立することとなりましたが、それが環境への負荷を増大させることとなったわけです。

改めて、建築が建つその場所の風土、気候、地域性などを考慮し、できるだけそこの循環の輪の中で、建築を作ることが必要な時代になってきています。

和辻哲郎の有名な著作に「風土」があります。その中で、和辻哲郎は世界の風土を3つのパターンに類型しました。「砂漠型」「草原型」「モンスーン型」というものです。そうしたそれぞれの風土がもつ特徴の中で、人は環境との関係性を認識し、また文化や暮らし方、家の作り方までが特徴をもつとしました。

日本について言えば、北は北海道から沖縄までそれはそれで様々な気候区分があるとはいえ、概ね「モンスーン型」に区分されるでしょう。砂漠型や草原型では、環境を客体化し、それに抗うように建築を作る傾向があるのではないか、と思います。それに対して、モンスーン型の気候では自然が豊かであり、その恵の中で暮らしてきた人にとっては、自然と人は半ば分かちがたい文明観を育ててきたのではないだろうか、ということです。

だとすると、建築もまた「開放型」の作りになるのが日本の民家など、従来のものでした。北ヨーロッパのような気候が厳しい状況の中では、いわゆる「閉鎖型」の建築ができることになります。

これは窓の考え方によくあらわれています。英語では窓のことを「WINDOW」と言いますが、これは「WIND」=風が通る「OW」=目 という語源だそうで、つまり壁にあいた穴、ということのようです。つまり「壁」があることが前提になっている。

それに対して、東南アジアをはじめとして、従来の日本の建築は木造の柱と梁のフレーム構造になっていて、その構造材の間は壁があるところ以外は、当たり前ですが、全て空いています。

つまり、壁に窓を開けるのか、フレームに壁をつけるのか?ということで、建築に対する内外の仕切り方への意識に大きな違いがあるということです。

現代の建築の作り方は、建築をまず閉じ、工学的にその内部を制御しやすいようにするのが良いとされているのではないでしょうか。これは、近代の建築家と言われている人たちの思想からは宜なるかな、と思います。関心は「建築」そのものにある。それを高性能にすることに腐心する。

それはそれで良い面ももちろんあるだろうけど、機能主義的な建築一辺倒で本当に良いのだろうか?という素朴な疑問も一方ではある。技術は、光ばかりを追い求め過ぎているように思います。しかも専門家の領域、という幅の狭い範囲の中で。

光あるところには影がある、表には必ず裏がある。イルカは躍動するけれど、それは海というイルカが活きるステージ、環境があってこそ。

ということで、これからの環境と建築を考えるときに、建築の外側にある状況ともっと結ぶ作業が必要のように思います。

かつての暮らしが自然にもっと近かったとき、建築もまた自然との連環の中で成立していました。温故知新、そうした知恵に改めて学びながら、現代の技術をどう繋いでいくか。

現代の住環境 閉じた関係性?

そうした作業の中にこれからの環境建築の未来像があるように思います。

そう言いながら、「環境建築」という言い方もまだちょっと固いなあ、、、と感じています。やはり、機能重視、という匂いがする。

後に紹介しようと思っている、「パーマカルチャー」や「バイオシェルター」という思想の中には、環境との合一性や環境の仕組みに寄り添う考えがあります。建築を生態系そのものの仕組みに合わせていく、あるいは生態系そのものとして想起する。

そうだとすると、「生態系的建築」なんていう言葉がなんとなく浮かんできます。

実は、アメリカのアリゾナの砂漠でアーコサンティという壮大な都市を建設しているパオロ ソレリ(故人)という建築家がかつて「生態建築論―物質と精神の架け橋 (1977年)」(和訳)という著作を書いています。(原題は「The Archology of PAOLO SOLERI」)

ArchologyというのはArchitectureとEcologyの造語ですが、それを訳して生態建築としたのでしょう。

学生の頃、読みましたが、何やらポエティックで、かつ翻訳本ということもあり、委細はよくわからず、生態系と建築が合体した哲学が提示されていることにただただ感動していた覚えがあります。

(余談ですが、私は勤めていたゼネコンを辞して再就職した設計事務所の所長が若い時分にアーコサンティに滞在していたと聞いて、不思議なご縁を感じました。)

3回にわたって、建築と環境に対する私の姿勢めいたものを綴りましたが、これからぼちぼち私が考えるこれからの環境建築像(生態建築像?)を頑張って書いていこうと思います。

どうぞよろしくお付き合いください。


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