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本書について|Free!

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 この本は二〇十九年の八月に屋久島へ旅行した時の記録です。
 いろいろと予定外なことも多く大変でした。そのいきさつを帰りの新幹線でメモしていたのですが随分と長くなり勿体無くなりました。どこかに発表できたら勿体無くないかも。ですが一緒に旅行に行った家人のプライバシーが気になりました。変なことは書いて無いはずですがネタにされていることは確かです。家人の出てくるところを削ろうかとも思いました。が、せっかく書いたものを削るのも勿体無く思い、試しに家人の名前を「ブタくん」に検索置換しました。すると驚くべきことがおきたのです。ただ文字が置き換わっただけで、まるでブタくんといっしょに旅行しているような楽しい気分になれました。というわけで、旅行記ではなく「ブタくんと旅行するお話」というていで、いつもやっている手製本にまとめることにしました。
 「2019:偽・ブタと屋久島記」の「偽」の部分は豚が喋ったりしている部分です。他の部分は覚えていることがだいたいそのまま書いてあります。
 この本を手に取った方が、ブタくんとの旅行を楽しんでいただけると幸いです。楽しめなかった人はブタくんのところを犬くんとか仔猫ちゃんに置換えて読むと楽しめるかもしれません。
※注意本書を屋久島旅行ガイドとして利用されることはおやめください。屋久島旅行を楽しむために書かれた立派な書籍が世の中にはたくさんあります。本書は(せっかくたくさん字を書いたから勿体無いと思った事と)「ブタくんと一緒に屋久島を旅をしている気分を味わってもらう」ために制作されています。

山本Q太郎

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屋久島行きのいきさつ

 五月くらい。
 ブタくんから誕生日プレゼントとして屋久島旅行を提案される。屋久島。名前は聞いたことある。場所は知らない。珍しい森の中を樹齢何百年にもなる木を見に山を登ったりするらしい「。もののけ姫」の森のイメージは屋久島を参考にしたとか。言われてみれば聞いたことがある。ただ、それらを見るためには結構な道を歩かなければならないらしい。物見遊山で行くようないわゆる観光地とは違うのだろうか。観光といういうよりは探検の方がニュアンスが近いらしい。「歳をとると大変だから体が動く今のうちに行っておくべき」とのこと。なるほど。
 アメリカ旅行という案もあったが、英語云々以前に旅行はおろか、家すら滅多に出ない我々には敷居が高い。国内で旅行の経験を積もうと屋久島行きを決める。
 「ならば金は出すからあとは任せた」とブタくん。ただ待っているだけではプレゼントは貰えないらしい。
 まずはスケジュール。ブタくんが休めるのはお盆しかないので日程はその辺。屋久島に何があるか知らない。ブタくんをおだて褒めあげ希望を聞き出す。後日「縄文杉」と「白谷雲水峡」は押さえたいとのこと。両方は一日で回れないらしいので各々丸一日を割り当てる。移動も行き帰りそれぞれ一日割り当て。八月十日から十三日の三泊四日とする。移動日は予定を立てず旅先での成り行きに任せることに。旅行といっても普段はあまり仕事を休めないので行ったとしても一泊二日。今回は島の勝手もわからないので余裕を持ったスケジュール。我々としては初めての長期日程になった。〈スケジュール埋めハイ〉になり勢いで自分の仕事の休みも決める。と言ってもグーグルカレンダーに「休み」と書くだけ。それだけでだいぶバカンス気分が盛り上がってくる。
 日程が決まったので交通手段も決められる。時期が時期だけに東京から鹿児島への格安航空チケットでもそれなりの値段。高い高いと言っているとどこにも行けないのでエイヤと購入。鹿児島から屋久島へ行く手段は飛行機、高速船、フェリーの三種類。いろんなサイトを調べた結果、高速船がオススメらしい。フェリーは便数も少ないし時間がかかりすぎる。高速船のウェブサイトを見るとチケットの予約受付は二ヶ月前から。高速船のチケット予約開始日も忘れないようにグーグルカレンダーに記入。鹿児島から屋久島へ行く手段については忘れることにする。
 次は宿。どこで何をするのかいまいちわからない。島内での移動時間もよく分からない。それでも色々なウェブサイトで調べるとホテルや民宿は宮之浦か安房という場所に集中している。そこはフェリーや高速船が入港するところ。そういう栄えたところであればご飯や物資の購入、交通の便もいいに違いない、ということで一番建物の多そうな宮之浦で宿をリストアップしてブタくんに渡す。が、どうやらお眼鏡に適わなかったらしく自分で宮之浦あたりを探して決めたみたい。とりあえず今できることはこれくらいか。

準備

 七月に入った
 気がつけば八月。
 七月に入った時に鹿児島-屋久島間を運行している高速船トッピーの往復チケットを二人分確保済み。これで宿と移動手段は全てバッチリ。それ以外の準備は皆無。今更のように屋久島のガイドブックを買っているような有様。それでも少しづつ準備をするうちにだんだんと屋久島で何をやるのかイメージできるようになってきた。
 屋久島でやることがより具体的になってわかったことは
〈やばくない?〉
 ブタくんは近年特に忙しく、普段の生活で一番遠くに行くのはトイレ。ほとんど家からも出れない状況が日常となっている。「縄文杉」を見るには山の中を一日に二十キロも歩かなきゃいけないらしい。それもちゃんと登山の装備をしないといけないやつ。一日に二十歩も歩かない人にそんなことができるのかしら。本人にもその自覚はあるらしく、ついに「縄文杉へ行く途中で断念した場合」の計画をたて始めた。普段の生活にウォーキングを取り入れる計画をたてた方がよほど建設的な気がする。言わないけど。体力的な不安は人ごとではない。ブタくんが言い出しっぺで本当に良かった。
 難易度がガイド本やウェブサイトによって結構違う。縄文杉を見に行く場合「トレッキング初心者レベル」と書いてあるウェブサイトもあれば、「ちゃんとした装備で行かないと危険です」という本まで。本来なら計画的に毎日五キロなり十キロなりウォーキングをして体力づくりをするべきだが、今さらできることは限られている。せめてお金で解決できるところはケチらないようにしよう。我々は体力的にも経験的にも最低レベルと想定して予定をたてることにする。
 出発の一週間くらい前あたりから、必要そうなものを買い集める。泥カバー、レインウェア下、汗がすぐ乾くインナーウェア。などなど。何を準備するにも大量に種類があって機能も様々。どれを選べばいいのかさっぱりわからない。試している時間もないので、フィーリングを駆使して購入。気がかりは腕時計。もう何十年も使っていない腕時計。けれど、今回は必要な気がする、そして、物欲的に欲しい気がするAppleWatch。iPhoneとも、仕事で使うiMacとも連動。何ができるかは知らないがなんか色々できそうな空気だけはガンガンと発散している。多分あると便利。でも、おそらく、きっと、屋久島以降は使わないだろうAppleWatchに四万五千円。そもそもいつも腕になんか巻いてるなんてきっと耐えられない。どうせ酔って外して失くすに決まっている。それを考えるとあまりにも高い。気がする。悪ふざけしにしても高い気がする。悩みに悩んだ末、百均で見つけた偽G-ショックを三百円で購入。なんと生活防水。G-ショック的見た目で生活防水という日常感がいい。屋久島は一日に何度かバケツをひっくり返したような雨が降るらしいが生活防水で大丈夫だろうか?大丈夫。三百円だから。スマホを雨から守る防水カバーなどなど、細かいモノも徐々に買い揃えてゆく。ここで案の定、仕事がどんどん入り始める。ふふふ、知っていたのさ。もうおじさんだからね。欲しい時にはない、そして、欲しくない時にはある。それが仕事。お盆休みを前に仕事がどんどん発注されてくる。いつもはこれがあるから、旅行の計画なんか立てない。けれど今回はもうすでに宿も飛行機も大枚を(ブタくんが)はたいているので今更なかったことにはできない。そんな仕事の隙を見つけ買い物や荷物の準備。ブタくんは、そんな隙は見つけられず出発前日まで仕事。

……続き

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