子宮筋腫と子宮もろともおさらばした話 開腹手術当日
昼過ぎに手術である。
「ああ、このヨーロッパ絵画を彷彿とさせるような美しく豊かな下腹部ともお別れだ……」
「遠慮なく腹肉をつかめるのも今のうちだな」
などとアホなことを思いつつ過ごした。
※2021年の体験
前回↓
子宮を取る、ということ
子宮を取ってしまう、ということについては、悲しいという気持ちはなかった。
むしろ、さっぱりするな、と。
物理的に妊娠不可能になるので、「選んで出産しないこと」のうしろめたさ(本人は無自覚だが、もしかしたらどこかに発生してるかもしれない空気的なもの)とも無縁になる。
私の周りには幸いにもいないが、万が一この先
「結婚しないの?」なんて聞く人が現れても、
「わたし子宮ないんですよねーハッハー」と言えば速攻で引いてもらえそうだ。
(念のため断りを入れておくが、子宮がない女は結婚すべきでない、などと考えているわけでは全然ない。念のため)
神様が私に子宮をつけてこの世に送り出してくれたけど、それを一回も使わなかった。
でも「別にいいよ」って神様が言ってくれてるから、手術の話も順調に進んだのだ。そう思う。
手術を待つ時間は長い
朝から食事なし、8時過ぎには水も飲めなくなった。
11時に左腕に点滴の管をつけられた。体に管をつけられる、ということ自体が私は初めてである。
「そんなに怯えなくても」と看護師さんに呆れられるが、もうまともに動ける気がしない。何をするにもおっかなびっくり。
時間はゆっくり流れた。
やることがないのだ。ただ待つばかり。
(今、こうして当時の記録を書けるのは、暇に任せてA4ノートの日記を書きまくったからだ)
13時過ぎ、ついに看護師さんに呼びに来られた。
ついに人生初の手術へ向かう(徒歩で)
手術室って自分の足で歩いていくんだ。
そりゃそうか、何しろ手術前までは元気いっぱいなのだ。なんか変だけど、そうなのだ。
「中央手術室」。両開きのドアがいともあっさり開いた。入室すると名前確認。人間違いがあるとたいへんだもんな。
頭にキャップをかぶった。
手術室の中にはいくつも手術室があるようだった。
私の手術室は。入った。ものすごい照明。その下に、小さい寝台。
そこに乗って背中を丸めた。着ていた浴衣を脱ぐ。パンツを引き抜かれる。
「茶ぶどうさん体小さいですね」
ええ、おなかまわりは豊かなんですが。上手に小さくなれたことを褒められるという謎の喜び。
背中に管が入れられる。おお、入ってる。そんなに痛くない。
不織布マスクの上からさらにマスクをかぶせられ、
「深呼吸してください」
何回か深呼吸したら
もう終わっていた。
管だらけの体に
「手術はきちんとできました」
と主治医のO先生が言っている。
私はベッドの上、運ばれている。
気持ち悪いからまわらないで。
元いた部屋についたらしい。
痛み止めの説明をぼんやり聞いた。寝返りはOKらしい。マジか。
約10センチ切られたはずのおなかは、ぼんやりしつつも重い。
痛くはない。マジか。痛み止め偉大だな。
尿管・痛み止めの管(背中)・点滴(左腕)と3つの管つき。
麻酔のせいか、気分悪い。
いきなり、できないことだらけになった。
右足がかろうじて動かせるが、左足は麻酔でしびれて感覚ほぼゼロ。さわるとゴムみたい。何これ、私の足なの?
腹に力が入らず、蚊の鳴くような声しか出ない。
看護師さんにうがいをさせてもらうだけで、口から水を飲むことも許されない。
眠れそうにないと看護師さんに訴えたら、睡眠薬を点滴で入れてくれた。
手術のあとの夜も長い
夜は長かった。
たびたび血圧・体温測定があり、ちょっと眠ってもそれで起きてしまう。
毛布が暑い。タオルケットに替えてもらう。体温調節が難しい。
慎重に、ゆっくり寝返りを打ちながらひたすら朝日を待った。
思ったほど体はしんどくないが、時が過ぎるのが遅すぎた。
両ふくらはぎに巻かれている血栓対策のポンプが
ぷしゅー、 ぷしゅー
と音をたてて収縮しているのを、ずっと聞いていた。
朝、部屋の他の患者さんが退院し、5人部屋に1人となった。まさかの個室。
次回↓↓
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