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「デザイン思考は終焉?」を考え直してみる。

初めまして。株式会社TAM UXデザイナー/Webディレクターをしています。吉本と申します。(初めて個人で投稿させていただきました)

「製品やサービスを改善するのにユーザーインタビューしても意味がない」、「デザイン思考のメソッドはダメになった?」
といった意見を聞きます。

モノやサービスが飽和状態であるこの世の中で、サービス提供者(企業)は、「これから何を提供すれば顧客は喜んでくれるのか分からなくなってきた」、そのため顧客からヒントを得ようとヒアリングやデプスインタビューした結果、「いやいや・・・こっちも何が欲しいか聞かれても分からないです」と返答されたと。そこで「デザイン思考はもう役に立たないのでは?」という背景があるようです。

馴染みのあるテーマなので調べてみると、確かに・・・

https://designing.jp/what-if-design-isnt-problem-solving

https://www.technologyreview.com/2023/02/09/1067821/design-thinking-retrospective-what-went-wrong/

なぜなのでしょうか?

まず私がデザイン思考を学び始めた10年前にも、「世の中に製品やサービスはあり過ぎるから、何を提供すればいいのか?」という企業側の声はありました。その救世主となったのが、IDEOによるデザイン思考メソッドで、ビジネス業界やマーケティング業界にも広まっていったんですね。

そのなかで、記事にあるように「顧客とそのニーズを理解する」というデザイン思考の「共感」の作業が、企業も簡単に行えるとフォーカスされた為に、どこかのタイミングで「顧客とそのニーズを理解する」=「顧客に答え・ヒントを求める」という解釈に変わっていったからなのかもしれません。

私個人の意見ですが、そもそもデザイン思考をビジネス業界やマーケティング業界による「問題解決の手法」としては捉えてはいなかったです。

「今ある技術を活用して新しいサービス体験を作りだすイノベーション開発」のためのフレームワークだと考えていました。(学生時代は、「今の研究を問題解決と口にしないように!」とお叱りを受けたものでした。)

私たちデザイナー/サービス提供者が、何が欲しいのか?

「何をしたいの?」「何が欲しいの?」「どんな体験をしたいの?」これは顧客やユーザーに向けてではなく、作り手のデザイナーたちへの質問です。新しい体験を求めるとしたら、まずは自分たちが欲すること「ビジョン」として掲げることから始まるのではないでしょうか?

そこから、そのビジョンを可能にする技術やサービス手法を集めた後、ユーザーの課題を調査するという、デザイン思考の「共感」のステップを活用してきました。

解決のヒントは、インタビュー結果ではなく、深掘りした分析から得られるもの。

ただ単に1時間ぐらいのユーザーインタビューで課題を知ったから、ペルソナを作成して・・・、といったプロセスではありません。行動観察(民族誌調査)を通して、1つのインサイトやメンタルモデルを導き出すために、時間をかけて深掘りした分析も大切にしていました。

特に難しいのは、最適なリサーチ対象者を見つけることです。自分たちと似た課題やビジョンを秘めて、独自で工夫しながら良い体験に近づこうとしている人たちです。

対象者に出会えたら、1つの体験に対してどのように行動しているかをひたすら観察して記録していました。ヒアリングや質問は、こちらが気になったことを尋ねるだけです。そして写真や映像、数千字のメモから、

  • 「どんな環境で過ごしている?」

  • 「どんな道具を使っている?」

  • 「どこまでを行動範囲として動いている?」

  • 「どんな家族や友人と関係を結んでいる?」

  • 「人間関係が、その人の思考にどんな影響を与えている?」

など、大量の記録をもとに、さまざまな角度から分析して、ビジョン実現に役立てられる「インサイト」や「メンタルモデル」を1つでも見つけようとしていたと思います。役立たたないときは、また別のリサーチ対象者を探して再挑戦することもありました。このプロセス繰り返すことで、より精度の高いペルソナを設定でき、ビジョンもより明確な更新され、やっと具体的なアイデアを出し合う議論やストーリーメイキングへと進めていくことができたと記憶しています。

行動観察分析のイメージ

最後に

Webサービス開発やアプリ開発によく携わっていますが、予算やスケジュールが制限されているなかで、どのような進め方が有意義なのかと常に考えさせられてます。ただ、デザイン思考をイチから順に真面目にメソッドに沿っていくことはほとんどありません。(イノベーションを起こしたい!と新しい製品やサービス開発する時は別かもしれませんが)いつもメソッドや進め方をアレンジすることが増えてきました。

そして、クライアントから「こんなサービスを目指しているんです!」と目的(ビジョン)を提示されたら、思わず「ほんとに御社が欲しいサービスですか?問題解決の施策になっていませんか?」と問いつつ、他の提案することも。

「デザイン思考のメソッドはダメになった?」
まだ使い方を見つめ直したら、活用できるメリットはあるはずではないかと、私自身への復習も兼ねて今回投稿しました。


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