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ネット動画3.0のパラダイムについて整理してみた - 日本と海外ではコンテンツ進化の過程が違ってくる話

追記:このまとめは2020年1月下旬ぐらいに書いたものです。時間がどんどんたってしまい状況が変化してしまいました。。。

半年ぐらい前に議論されていた話で、もう今から始めるにはおそいと思うのですが、個人的にネット動画まわりのコンテンツ拡充とユーザーグロースについて興味があって、最近継続的なインプットをし続けています。

そして、それを続けている間にも、どんどん有名人のyoutubeチャンネルが開設されたり、世界一周旅行の振り返りでも書きましたが、世界的に4G/LTEがこなれてきて、動画コンテンツが世界中の人達に配信・利用されるようになり大きな潮流としてようやくネットサービスの中心地にやってきた感も出てきたので、頭の整理をする意味兼ねていろいろまとめてみました。

特に下記の2つのnewspicksの番組はいろいろな示唆を与えてくれるので勉強のとっかかりとしておすすめです。内容が重要ではなくて、こういう考え方のプレイヤーが戦場にいるのか、イノベーションが起こっているスピード感を議論の流れで体感できるかあたりの視点のほうが勉強になるのかもしれませんが。

1.動画コンテンツのこれまでの潮流

動画3.0というタイトルを書きましたが、振り返れば少し前にLTEが2012年ぐらいから本格的な普及期に入り、いよいよ動画の時代がくると騒がれて実際に動画メディアが急激に作られ始めた時代がありました。分散型バーティカル動画メディアの時代です。だいたい2015〜2017年ぐらい。(その後facebookなどのプラットフォーマーの掲載ロジック変更を経てほとんどのプレイヤーが撤退します)

そのときは本当に高いパケット代を払ってユーザーが動画を見るのか不思議だったのですが、はやった動画にパターンがありました。(早送り、大量生産、撮影・照明アングル、家庭内wifiなどの落ち着いた内容で楽しむか、短い動画)そのパターンを忠実に実行して、キュレーションメディア科学的なグロース手法で大きくなったサービスが、クラシル・デリッシュキッチン・CChannelです。同時期に、LINEがLive機能の提供を開始し、ここにコンテンツを提供したり、ライブコマースにつなげたりする勢力も登場しました。

その当時の動画の手法は、低コストだけど限りなく無駄のない品質のそれなりの動画を量産し(主に縦型動画か縦型アプリ内で閲覧される動画)、SEOやSNSやメッセンジャープラットフォームのマーケ導線を確保し、インフルエンサーも駆使しながら、地道に収益を確保しながらユーザー拡大・事業拡大していく形でした。

ところが、facebookなどのSNSの動画優遇施策の方針変更などのあおりをうけたりして、こうしたバーティカルメディアのグロース手法にのっからないユーザーへのリーチが出来ないまま、いったん収束しました。とはいえヤフーやKDDIの傘の下で地道にユーザーを増やしているレシピ動画の戦いはなかなかすごい。

並行して、動画共有SNS的なサービスとしてのyoutubeのユーザー数は着実に増え続け、youtuberの影響力は無視できなくなってきました。ゲーム攻略動画の世界・キッス向けの動画の世界から先行してグロースしていきます。

このあたりの潮流が個人的には動画2.0の時代です。動画1.0の時代はPCがメインのyoutubeやニコニコ動画を見る2010年以前の時代です。

この動画2.0の時代は、結局ユーザーの裾野がどれだけ増やせるのかが広告事業のキモだったとすれば、そこはまだ所詮はニッチでバーティカルな特殊環境下での動画市場であり、地上波テレビの動画コンテンツの仕組みを担ぐためには、abemaTVのような、巨額投資で地上波テレビの仕組みをレバレッジとして活用した仕掛けが必要でした。顧客への強力な導線を持つ大型プラットフォーマーも一時期は動画への訴求を優遇しましたが、ぱたっととめてしまいます。

動画を視聴する層は、テレビを持たない若い層、ネットサービスの延長上のショートカット動画を見るレベルでしかなかったので、広告価値としてもそこまで高くなかったのです。

2.ネット動画を大人がいつでもどこからでも見る時代に変化

ところが、amazon primeと、Netflixが黒船のごとく地味に家庭内のテレビに進出し、youtubeを使う顧客層は地道に増え続けることで2019年ぐらいにバーティカル動画のキャズム超えのような現象が、動画プラットフォーム側、特にたyoutube側で起こった。youtubeはどちらかというとネット側の人たち、暇な人たち、年齢層が若い人たちが見る動画プラットフォームだったものに年齢層の移動が起こったような気がしました。

大人が見るようになってきたのです。

これはユーザーサイド側でも、情報発信側でも起こった。

これを期に、地上波コンテンツ側の人たちが一気にネット動画側にシフトを考え始め、テレビに出るよりネット動画で活躍シーンを増やしていったほうが儲かるのでは、という流れが出来た。お笑い芸人やスポーツ選手の参入が相次ぐようになりました。

ここに2019年から2020年の今にいたるまで、youtube側にどんどんテレビ側の出演者やクリエイターが殺到する仕組み・仕掛けが出来始めたのが今日なのかなと思います。

そこでは日々コンテンツの成功パターンなどの検証・仕掛け繰り返しが高速回転して行われている。

これが動画2.0の時代なのです。

その試行錯誤の中心地はyoutubeと、もしかしてNetflixなのです。abemaTVもよいポジションにいますが、多様性とプラットフォーム的な裾野の広さを考えると、少し位置づけが異なるのかなと思います。

3.NHKネット同時配信の衝撃

2020年3月から本格化するNHKのネット同時配信化が本格化すると、ラジコのように、ほどなくしてテレビ放送がそのままアプリですべて見られる時代がやってきます。(abemaTVはそのうちの一つのポジションを目指しているのかと)

そんな時代、それが私の考える動画3.0の大戦国時代です。

アメリカではもともと3大ネットワークとケーブルテレビによるコンテンツ配信の仕組みが並列な感じで並んでいましたが、NHKがいよいよネット配信を開始すると、TVer的な民放の配信形態も変化していくことが余儀なくされるでしょう。

ここにきて放送行政がどうなっていくのか、という別の視点での今後は考えなければならない視点かと思います。もはや放送局はついでに同時放送されているだけで、主戦場はネット配信になっている。(この数年で主従関係が客逆転)

そこに独占禁止法的なプラットフォーマーに対する規制は議論されることは容易に予想できますが、放送法の延長線上での規制はありえない。youtubeを牛耳るシリコンバレーのGAFA利権勢力が、アメリス政府を使って圧力をかけてくるのでしょう。

このあたりがどうなっていくのかには個人的に興味があります。

日本ではこれまで映像コンテンツは地上波テレビ局が牛耳ってきたところに動画プラットフォームの大人化が進み、NHKのネット同時放送後の世界ではこの2つの分野の融合がどんどん進む。

海の向こうでは、Netflixがコンテンツに投下する年間予算は、ハリウッドのコンテンツ投下予算を超えたと言われる別のパラダイムが進行中です。ネット業界の資本のレバレッジを生かした世界戦争が一方の世界では起こっており、ネット側との融合が進む既存放送・動画コンテンツ業界はこの流れを無視することもできません。

ネット動画について、いよいよ普通の人が普通に使う時代がきたのです。通信キャリアは5Gに巨額投資しますが、動画の閲覧が本格化すれば回線はパンクしてしまうので投資は必須ですし、きっと5Gは成功してとてつもなく儲かると思います。

4.まとめ

ということで2020年はオリンピックがあり、4K放送が本格化します。

お茶の間テレビの買い替えが消費増税の影響をうまく乗り越えられれば、動画視聴がマルチディバイス化し、配信側も、地上波テレビ・国内ネットコンテンツ発信者・GAFAプラットフオーマー・netfixという勢力図の大戦国時代がやってきます。

そうした中で「本物のエンターテイメント」にこだわってきたプレイヤーがネット業界の発信速度に追いつきながら、グローバル品質で生き残れない黎明期のプレイヤーとの入れ替えが進む、そんな一年となりそうです。

2015〜2017年のスマートフォンの世界におけるゲームアプリの状況に似てくるでしょう。

楽しむ側としては、動画配信を携帯電話から安価に楽しめる料金形態が、5Gの登場と楽天モバイルによる料金体系の競争激化の中でもたらされることを期待します。(通信キャリアは決済アプリのバラマキなんかにお金を使わないで今こそLTEの大幅値下げを断行したほしい)

この記事は「投げ銭」記事です。ポジティブにお金が回る仕組みにしてみたいと思いました。記事をおもしろいと感じてくださった方は「投げ銭」をよろしくお願いします。