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お上よ 現場を振り回すな

学校現場に限ったわけではないと思うが,現場を引っ掻き回す人間がリーダーに就任すると,一気に勤労意欲,帰属意識が削り取られていく。
いったい今までの苦労は何だったんだ…と,気持ちが萎えていく感覚を経験したことのある方もいらっしゃることだろう。
今回は,そんな感覚の最たるものである,文部科学省への失望を綴る。

グダグダになった新入試制度

中央教育審議会が,大学入試の選抜方法の改革を促す答申案をまとめたのは2014年,その後2016年3月に骨子が発表され,2020年度より実施,センター試験が大きく変貌し,国語と数学に記述式問題が導入される,「大学入試共通テスト」(仮称)という名称が明らかになった。
これを受け,学校現場でも当然大きな変化への対応が必要となった。高等学校は勿論,発表当時の中学3年生から対象となるため,小学校・中学校も常に実際の動向に気を配り,それに向けた学習内容を模索することとなった。国を通じて大学入試を改革するという通達は,それだけ大きなインパクトを起こしたのだ。
しかしその内容が明らかになった時,正直私は肩透かしを食らった気分だった。

「覚える」から「考える」への比重移動

日常生活に即した課題解決を,既習範囲の活用により行い,場合によっては理由を記述で回答させるというものだった。

言わせてもらおう こんなことを授業で行っていない人間など教員失格だ

知識を覚えるだけならば,学校など通わなくとも,ネットや書籍で調べたり,動画を見たりすれば十分であり,教科書通りに知識の一方通行を繰り返す授業など一体何の価値があるのか。

勿論,実際に試行問題として実施された内容は,一見これまで主流として扱われてきた問題集では対応しきれないように感じられたが,落ち着いて考えれば使うべき知識は問題なく導くことが出来,文章読解力が試されているという印象だった。
ただ,私個人としては,授業で扱う資料にこの手の問題を必ず混在させるように初任者の時代から心掛けていたし,そもそも一方通行の授業を行おうものならあっと言う間に無関係な事を始めようとする連中が大挙して教室にいる環境にもいたため,生徒に考えさせ,発言させる時間を取らないことなど全く思い付かなかった。
それでもこのような形で改革を実施しようとしていたのは,一方通行的に知識の伝達ばかり行っていた教員がよほど多かったのか,それとも現場を全く知らないポンコツ政治家が自分の実績を何とか残したくて無理に語っているかのどちらかだったのだろう。

そんな何だかんだに怪しい雲行きを感じていた私にとっては,昨年発表された共通テスト方式及び英語民間試験活用の延期は,「まあ無理だよな」としか思えず,さほど驚きは無かった。
文部科学大臣辞任要求運動が起こるのも至極当然であり,何でこんな阿呆な事で生徒が振り回されなきゃならんのかと,呆れと怒りしか湧かなかった。

プリント配って終わりなら全日制なんていらねえだろ

この局面に追い打ちをかけるように,新型コロナウィルスの世界的流行が重なった。
2月27日に突如,3月2日からの全校一斉臨時休校という現場の事を全く考えていない施策が発表されたおかげで,まず各学校の管理職や教育委員会が寝ずの対応に追われ,並行して現場職員も生徒の学習内容補充への処置に追われ,皆さんもよくご存じの大混乱が幕を開けた。

そして4月,前代未聞の新年度が始まった。
「自分は大丈夫」という謎の自信を持ったクソ馬鹿どもが何の対策も無しに闊歩しやがったせいで,ウィルス感染の拡大は終息する兆しが無く,「危険なことわからんやつは,とっとと感染しちまえ」という宮沢京都大准教授の当たり前のツイートが何故か非難されながら,学校の休校延長が決定した。

ここで始まったのが,英会話教室などの「学校ではない教育機関」でしか経験出来なかったであろう,双方向オンライン授業だ。

いつになったら,再びかつてのように何も気にせず学校へ行くことが出来るようになるのかと思いながら,不自由な思いをしつつ,初めて触るzoom等のツールで授業を受けた生徒もいることだろう。
また,一部のコンピュータ大嫌い教員が,「生徒に不公平感を生むのではないか」という生徒をダシにした仕事逃れをしているせいで,オンライン授業がなかなか実施されないというクソのような記事も目にし,いよいよ終わってるな公立学校現場と,思わず天を仰いでしまった。

そしてここで考えなければならないのが,「特例として,家庭学習を学校での授業の代替として認めても良い。」とする,文部科学省の見解だ。

前述したとおり,オンライン授業は全ての生徒に対して実施されているわけではなく,ICT教育に取り組む面倒さから逃げるべく,一律に対応することばかりを考えた結果,課題を配布し,生徒に自宅で取り組ませることによって,学習内容の定着を図ろうとした学校が存在した。

しかしそんな状況をやむなしと考えて対応せざるを得なかったのかは分からないが,文部科学省から「新型コロナウィルス感染症に対応した小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等における教育活動の再開等に関するQ&A」(下記リンク)という文書が関係各所に送付された。

この文書の問72~75に於いて,件の特例措置についての見解が回答として載せられているのだが,私は個人的に,この措置には絶対反対である。

当たり前のことを言うが,家庭学習は家庭学習であり,授業を行ったことにはならない。
ここで言う特例措置は,「平常時であれば宿題として生徒が取り組むものを,実際には実施していない授業の代わりとみなし,実施したものとして先に進む。そして学力の定着を確認するためにテストは当然やるよ。」という暴力以外の何物でもない対応を,認めてしまうということだ。

んなことで習得すべき能力が付くなら全日制の学校なんていらねーんだよ
コンピュータ触りたくねーなら今すぐ教員辞めちまえ
そして文科省もそんなこと文書で認めてんじゃねーよ

だが失望ばかりではなく,一縷の望みが見える,興味深い動画がある。
YouTubeの「GIGAスクールch」の動画内で,文部科学省の良識ある担当者が,『ICT教育をやろうとしないということが一番子供に対して罪だと,私は思います。』と発言しているのだ。

ICT教育アレルギー患者の「先生方」は見なければ失職ものの内容である。
緊急事態宣言解除後から順調に新規感染者数が増加し続けているのに,再び宣言を出す状況にないと官房長官がほざいちゃう以上,第2波で休校させられる蓋然性は極大なんだから,良いから四の五の言わずオンライン授業学びやがれ。

対応するのは現場なんだよ

「国家の危機に対応する」という仕事は,我々の想像など及びもしないスケールだし,その現場の最前線で東奔西走されている皆さんには本当に頭が上がらない。
しかし,有益なものならまだしも,不要不急の筆頭であるGoToキャンペーンを強行するような凶悪トップダウンのせいで,そんな方々の汗と涙が無駄になってしまうのは本当に我慢出来ない。

有事に対応するのが官僚や代議士の現場担当者なのと同じように,そこからの指示で末端の対応に駆り出されるのも現場職員なんだ
そこへの敬意を持たずに私腹を肥やすことだけやりたいのなら,とっとと辞職してくれ,お上の皆さん

お立ち寄りくださいまして,誠にありがとうございます。 皆さんが私に価値を見出してくださったら,それはとても素敵な事。 出会いを大切に。いつでもお気軽にお越しください。