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読書記録⑮切り拓くのは確かめたあとでもいいのです『もしもし、運命の人ですか。』

『もしもし、運命の人ですか。』穂村弘 著

読書をとるか人と会って過ごすかって迷いませんか?映画とか観劇は、鑑賞と人を会うことをある程度は同時にこなすことができますが、読書はそうはいきません。書物はどこまでも個人のために作られた形態だと思います。案外VRに近いんじゃないでしょうか。違うのは映像を目で見ているか、脳内に想像して描き出しているか。

ぼくにはささやかですが、人と同じ空間で、二人で黙って読書をしていたいという夢があります。この本の中でもそれをテーマにしたような短歌が紹介されていました。

冷蔵庫が息づく夜にお互いの本のページがめくられる音 /穂村弘

こういう二人がそれぞれにくつろいだ時間っていいなと思います。好き勝手に本に向き合いながら時間を共有しているのです。読書デートとか流行らないかな。

穂村弘さんのエッセイ本は大好きで、7冊くらい持っています。どれも可愛らしいまでにぐだぐだのキャラクターの穂村さんが顕れているのですが、世界への着眼点は案外鋭いのです。他の作家さんなどによる解説を見ても、それが窺えます。一体ほんとうはどんな人なんだろう。

この本は、恋愛の、それも恋愛に絡みつく逞しい自意識や妄想について記されたものです。6ページほどのエッセイが全部で29本。どれもいい意味でかっこわるくて、とってもキュートです。読みやすい文章ですし、それぞれの長さもそんなにないので読み止すのにもぴったりだと思います。

穂村さんの本で他に好きなのはいっぱいありますが、実は歌集はまだ持っていません。お恥ずかし。そのうち持ってる歌集ぜんぶ集めて歌集用の本棚も作ろう。夢が増えました。空いた時間が多いと妄想や夢想がはかどります。今のうちに空想や思想を貯金しておいて、社会を渡るころに少しずつ切り崩して使うことにします。


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