「原理原則をすこれ」2020 Jリーグ第18節 ガンバ大阪vs名古屋グランパス

 ちくわです!急に秋!朝起きて寒くてびっくり!涼しくなってきたのでデーゲームが増える、そうすれば息子をスタジアムに連れていける……と思う今日この頃です。お客さんも少なくて精神も平静を保てそうなU-23の試合からトライしてみようと思ってます。今年で最後だもんなーU23。森下監督のゲキが聞けなくなるのはとても寂しいですね。。

 さて今回は名古屋戦のレビュー。もはや慣れてきて開催を忘れつつあるミッドウィークの試合です。前節、ガンバは札幌相手に久しぶりの4-4-2を採用し、1-0で勝利をもぎ取りました。ただ内容は決して良かったとはいいがたく、相手の不出来に助けられたようなイメージもあるモヤっとするゲームでした。そんな中迎えた名古屋戦は2-1の勝利で連勝。結果はもちろん大事ですが、チームの一歩が見て取れるようなゲームになっていたので筆を執っている次第でございます。

スタメン

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 これまでWBで起用されていた福田の存在から3バックへの回帰が予想されたスタメンでしたが、ふたを開けてみればガンバは4-4-2を継続。ここのところ不調だった宇佐美がついに今期初めてスタメンを外れ、パトリック・アデミウソンが2トップを務めることになりました。前節怪我で離脱した三浦はベンチ外となり、引き続き昌子がCBの一角を務めます。

 名古屋は勝利した神戸戦からシャビエル⇒相馬の変更のみ。ここまでの起用を見ても、センターラインへの信頼は厚いようです。

前半:対照的な両チームの設計

 前半は名古屋のキックオフでスタートしました。名古屋は最終ラインまで戻してロングボールを蹴ってきましたが、ここでおっ、と感じたのがパトリックの守備です。去年は脇目もふらずにボールに猛進するイメージの強かったパトリックですが、今期に入ってからは、背中に居るボランチを確認しながらボールホルダーとの距離を詰め、ボールをサイドに誘導する守備(いわゆる"カバーシャドウ"というやつ)を勤勉にこなせている印象です。

 名古屋は、ボール保持の際、前線の4人と後ろの6人(+GK)に明確な役割の違いを感じました。前線の4人は流動的に動いてガンバDFラインの裏やギャップを狙い、ボールを引き出す。そして後ろの6人は定位置を大きく崩すことなく、前線までボールを届けることに徹する、というイメージです。

 ガンバの4-4-2採用、そして前線の守備貢献もあり、名古屋の「後ろの6人」とガンバの前線、中盤のプレッシングはまともにかみ合っていました。名古屋はそこから無理してプレッシングを外すよりは、ロングボールを活用しながら裏のスペースや孤立した逆サイドのウインガーを使おうとするシーンが多かった印象です。

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 クリーンに前進できずとも、名古屋の前線は突破力のある面々が揃っています。彼らを抑えられるかどうかが鍵でしたが、今節は守備陣がよく頑張ってくれました。地上戦のデュエル数に着目すると、サイドに陣取ったマテウスを9回のうち2回、相馬を7回のうち2回の勝利数に抑えており(Sofascore調べ)、サイドに運ばれたとしても、そこからの攻防で優位に立てていました。

 一方のガンバのボール保持。こちらは名古屋の保持と好対照でした。形を変えずにプレッシングに対応した名古屋と異なり、ガンバはボランチがCBの間に落ちる変化。幅を取る名古屋のサイドハーフとは逆に、積極的にブロックの中に入るガンバのサイドハーフ。去年の4-4-2の時期にも行われていた変化ですね。

 「突破力のあるプレイヤーを生かしたい名古屋」と「中央の連携で崩したいガンバ」との違いがそれぞれの設計に表れていました。

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 ただ前半のガンバ、「どこにボールを届けたいか」ははっきりしていたと思いますが、「今届けてどうすんの?」というシーンが多かった印象です。見えている出口に「とりあえず出す」ようなシーンが多く、二手三手先をイメージして相手陣形を動かし、ボールを運ぶ工夫が少なかったように思います。

 DAZNではリプレイで見えませんでしたが、失点につながる東口の連続パスミスもそうした「とりあえず出す」傾向の現れのような気がします。

 名古屋のCKも、ニア逸らし⇒ファーの金崎と、ゾーン守備で守るガンバ対策として見事にデザインされていましたが、ホームでミス起点の失点が続いてしまうのはそろそろ何とかしてほしいところですね。

 その後もマテウスのロングボールからの抜け出しなど危険な機会を作られますが、0-1で前半は終了。

後半:ワンサイドゲームを導いた変身と献身

 前半にイエローカードを1枚もらっていた高尾と藤春が交代し、福田が右SBに回ります。

 後半から、ガンバはこれまで「CBの間」に立つシーンが多かった山本の位置が「2トップの脇」に変わります。ここに立つことで、「CBの間」に立っていた時は引き出せなかった名古屋のプレッシングを引き出せるようになっていきます。

 ここに、前半からずっと名古屋のディフェンスラインを押し下げ、「深さ」を取り続けていたパトリックの献身が重なり、名古屋が維持していたコンパクトな4-4-2のブロックが縦に伸びていきます。

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 前半の「今届けてどうすんの?」への回答が、上記のポジション変更だったと思います。名古屋のブロックを縦に伸ばすことで、ボールを届けた後に使えるスペースを増やす。こうすると、前半は息苦しかった名古屋のライン間に入るガンバの選手たちも生き生きとプレーしはじめます。

 その文脈で得たのが小野瀬のドリブルからのファウルであり、山本のFKゴールでした。壁の間を抜けるという少しラッキーな形でのゴールではありましたが、早い時間で同点に追いつけたのは自信に繋がったと思います。

 ブロックが攻略されつつあることを察知したであろうフィッカデンティ監督は、56分に前田⇒阿部、相馬⇒シャビエル、61分に金崎⇒山﨑と立て続けにカードを切ります。

 名古屋がポゼッションを回復した時間もありましたが、2トップの働きで常に相手のラインを押し下げることができていました。そのため、前後が分断された状況でのカウンターは単発に終わり、セカンドボールの回収で優位に立てるシーンが多く、後半は総じてガンバがモメンタムを握ることができていたと思います。

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(※参考:ガンバと名古屋のCBヒートマップ比較(sofascore)。DFを低い位置に押し込めていたことが伺える)

 75分にはガンバが宇佐美・渡邊千真・遠藤を同時投入。これはガッチリ理にかなった采配でした。間延びした4-4-2のブロック間で自由に居場所を見つけて決定的なパスを供給できるヤット、パトリックの役割をこなせる千真、そして後は何とかしろ宇佐美。

 決勝点は間で受けて前を向いたヤットがこれしかないタイミングで浮き球を小野瀬に通し、その折り返しに詰めていた宇佐美がゴール。井手口が一手前に触っていたので難しいタイミングでしたが冷静に決めてくれました。

 これで宇佐美はやっと今期4ゴール目。実はこのゴールが、PKを除くと今期の宇佐美が初めてペナルティエリア内から決めたゴールでした。ゴラッソもええけどもっとPA内で打ってくれよ。笑

 その後も危なげなく試合を進め、2-1で勝利。名古屋戦では実に2016年以来となる、そしてパナスタでは初めてのリーグ戦勝利でした。

まとめ:原理原則をすこれ

 札幌戦で4-4-2に切り替えてこれで2連勝。そして久しぶりに自分たちより上位のチームを叩くことができました。札幌戦から名古屋戦の前半までは、やや噛み合っていない局面が多くみられましたが、後半はこれまでの閉塞感が嘘のようなスペクタクルな試合になっていたと思います。

 この試合の影のMan Of the Matchはパトリックでしょう。彼がDFラインの裏を狙って「深さ」を取り続けることで、ガンバの攻撃陣がバイタルエリアで輝くことができました。

 上記は仙台戦前のインタビューですが、この「裏を狙う意識」というのは、チームの中でも共通認識としてあったはず。ただ、それを愚直にやり続けることの意味がピッチ上で示されてこなかったのがこれまでのゲームだったように思います。

 次節はまた中3日で試合がやってきますが、チームは、このパトリックの働きをどう評価しているのでしょうか。もちろんサッカーは相手ありきで今節と同じことをしてもうまくいく保障はないですが、「幅」や「深さ」を取って相手のブロックを広げ、攻略するスペースを得る、という「原理原則」は、サッカーが現状のルールである限り変わらないはず。

 次の試合にどのようなスタメンが組まれるのかは分かりません。ですが、今日のパトリックの動きは、ひとつヒントをもたらすものになったのではないでしょうか。

 逆に言えば、次節スタメンが変わってこうした動きがパタっとなくなってしまったとすると、とても悲しいことになるわけなのですが……。ここから広島⇒鹿島⇒鳥栖⇒東京と、厳しい相手が続きます。この試合で見えた光明が次に繋がっていくことを期待します!


雑談BOX

・影のMOM次点、福田。本職は一応サイドハーフのはずなのに、前半は左SB、後半は右SBで目立ったミスもなく、むしろ後半はマテウスから2回もがっつりボールを奪ってイラつかせるという……。男子三日会わざればなんとやら。名古屋のSHは守備の意識が高いので、彼が高い位置を取り続けることでカウンターの威力を弱めることにも繋がったと思います。

・逆にちょっとモニョっとするところが多かったのは倉田。責任感の現れかインサイドハーフの名残か、ちょっといろんなところに顔を出しすぎてしまっていたような気がします。いい感じに役割分担できるようになってくれるといいですけどねぇ。

・オジェソクの挨拶は泣いた。ちゃんとお別れできなくてすまんかったな……


ちくわ(@ckwisb

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