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(エッセイ)「秋分」

 一度近づいてみたかったのだ。大津琵琶湖南岸。本来なら、この日私は京都にいただろうし、家に閉じこもっていただろう。しかしふと、水と光に洗われたくなってこの場所に座した。
 比叡山がいつもより近い。しかしその光量はマンション群に負け、目を注視してようやくその稜線を認識した。
 琵琶湖は大海のように波を動かす。ゆらりゆらりという音がこんなにも似合う水辺は琵琶湖だけである。私はなぜ、水が好きなのか、黄昏

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(エッセイ)「そうかな」

(エッセイ)「そうかな」

 彼女に初めて惚れた夏が過ぎ、すっかり冬服が定着してきた高三の秋・十一月頃。久しぶりに彼女に話しかけれられ、これで私の恋も発展するだろうと確信を持っていたアホがいた。

 それはさておき、家から高校まで往復約三時間の電車通学のおかげか、音楽を聴く機会が多かった。故に無料版のSpotifyを使っていたが、いい加減使いづらさを覚えていた。そして、この頃からApple Musicに登録した記憶があり、よ

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(エッセイ)「安全地帯Ⅲ」

(エッセイ)「安全地帯Ⅲ」

 親の車で何度も何度も聞いた「恋の予感」。この曲こそ私の中の安全地帯を切り拓いたといっても過言ではない(といっても「恋の予感」だけに及ばず、そのアルバムに入ってる曲全部。)だろう。あれは小学校高学年に成り立ての頃、私はそのアルバムが気に入り過ぎて、親のラジカセ・親のCDを盗んで、私は初めて一人の世界で安全地帯を聞いた。あの頃の私には、流れてくる一曲一曲の歌詞の意味が分からず、ただ大人だ! と締め括

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