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“公共”って何だ?―“公共”ד社会教育”―

 こんにちは。北海道の地方公務員・渡邉です。

 すっかり執筆ペースが落ちてしまいましたが、来年度に向けての業務がひと段落したので、少しずつnoteでの発信を再開していこうと思います。

 実は、下書きのままほったらかしていた別の記事を書き直していたのですが、急遽予定を変更して、このテーマにしました。

 今回は、“公共”ד社会教育”ということについて、社会教育行政の業務を通じて考えていることを書いていきたいと思います。

 私がnoteを始めたきっかけについては、こちらの記事をご覧ください。

 このnoteは、“社会教育行政”という分野で働く公務員の私が、勤務時間外のプライベートな時間約128時間/週を使って、いろいろな角度から町を盛り上げたいと思い、普段の業務を通じて考えていることやアイデアなどを書きためるものです。あくまでも一個人の考え方であり、私が所属する組織の総意ではありません。

映画紹介―『パブリック 図書館の奇跡』(原題『The Public』―)

 映画観るのも本を読むのも好きで、普段の業務でも図書を担当(今は一部の業務だけ)している私が、タイトルだけで「観よう」と借りたこの映画(実は時間がつくれず長い間放置してましたが)。

 個人的にかなり良かった。

 アメリカ・シンシナティの公共図書館を舞台に、主人公の図書館員・スチュアートは、凍死者が出るほどの大寒波にもかかわらず、シェルターが満杯で行き場を失った常連のホームレスから、「図書館を占拠する」と告げられます。
 はじめは、ホームレス70人とスチュアートによる“平和的デモ”だったはずが、メディアの偏向報道やステークホルダーたちの思惑によって、ついには警察の機動隊が突入することになって…というあらすじです。

 監督に脚本、制作、さらには主演まで務めたのは、エミリオ・エステベス(ちなみにチャーリー・シーンの兄)。彼は、ロサンゼルス・タイムズに寄稿されたエッセイにインスピレーションを得てこの映画を制作したんだそうです。

 本作では、差別や貧困も重要なテーマとして扱われていますが、私的には、やはりタイトルにもなっている“Public”(=“公共”)というテーマに惹かれました。

 というのも、つい先日、何の気なしに観た、バリアフリーをテーマにしたテレビ番組で、障がいのある方が「誰のための公共なのか」と仰っていたのがすごく印象に残っていたのもあったためです。

「公共」ってなんだろうか?

 図書館を訪れる人の大きな目的は“本を借りること”だと思いますが、実は、それだけにとどまりません。

 たとえば勉強・調べもののためであったり、別の用事までの時間つぶしであったり、最近は飲食できるスペースが設けられている図書館もあるので、そこで会社員たちがお昼を食べたり、先の映画であれば、ホームレスたちのシェルター代わりとなっていたように、訪れる人によって様々です。

 年齢や性別など、一切の差別なく、しかも無料で利用でき、呼び込むことをせずとも人がやって来る公共施設というのは非常に面白い場所だと思います。

 そうしたところに着目して、ここ数年、“図書館を地域づくり・町づくりの核にしよう!”という動きが全国各地で活発に行われていて、好例が次々と生まれています。

 もともと読書好きだった私も、様々な事例を見聞きする中で、「図書館って“町づくり”という面で、かなりのポテンシャルを秘めているのでは」、さらには「うちの町の図書室を町づくりの核にしたい」という思いを持つようになりました。

 そんな考えが「図書室を核にして町づくりをするために地域おこし協力隊を募る」ということにつながっていくのですが、この話は別の機会に。

 さて、話が逸れてしまいました。

 様々な人たちの「居場所」となっている図書館のような公共施設がある一方、とある自治体で台風による避難所が開設された際、ホームレスが受け入れを拒否されたというニュースがありました。

 現場で対応した職員は、ホームレスがその町の住民でなかったために、「この町の住民対象の避難所であるから」として拒否したそうです。

 たしかに、ほとんどの自治体で、人口に対して避難所の収容人数が圧倒的に足りていないことを考えると、そうした対応を取らざるを得なかったということかもしれません。

 しかし、

「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。」(日本国憲法第15条第2項)
「すべて職員は、全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当つては、全力を挙げてこれに専念しなければならない。」(地方公務員法第30条)

と明示されている、公務員であれば、一番最初に覚える・覚えさせられるフレーズの1つ、「全体の奉仕者」という観点から言うと、「何かもっといい方法があったのでは」と思ってしまいます。

 昨今、「居場所づくり」というフレーズを様々なところで見聞きしますし、社会教育もその一端を担っています。

 人が集まれば、いいこともありますが、当然悪いことも起こりえます。では、相対する意見が出てきたときに、どうすればうまくお互いが納得できる道に進めることができるのか

 地域住民の様々な考えや意見を聞いて、それをうまくまとめる“ファシリテーター”役である社会教育行政の身として、この映画を通していろいろと考えさせられました。

 今回もお読みいただきありがとうございました。では、また次回の記事で。

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