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【5月号特別企画】「今、日記が読みたい」02 志磨遼平(ドレスコーズ)【コラムフェスティバル①】

なんだか今、めちゃくちゃ日記が読みたい。

きっと一生に一度レベルであろう、この特殊な状況下で皆どう過ごし、どんなことを考えているのか。まずそれが気になるし、人と会う機会が減った寂しさから「肌触りを感じる文章」に触れたくなった、という気持ちもある。そんなわけで、個人的に気になる人たちに約1週間の日記を書いてもらった。

今回の書き手は、ドレスコーズの志磨遼平。この激動の2020年にメジャーデビュー10周年を迎えた彼は、何を感じていたのだろうか。

編集/前田隆弘
カバーイラスト/スッパマイクロパンチョップ

しま・りょうへい●1982年、和歌山県出身。作詞作曲家・文筆家・俳優。2003年「毛皮のマリーズ」結成。日本のロックンロール・ムーブメントを牽引し、2011年、日本武道館公演をもって解散。翌2012年「ドレスコーズ」結成。2014年以降はライブやレコーディングのたびにメンバーが入れ替わる流動的なバンドとして活動中。2020年4月15日、メジャーデビュー10周年記念ベスト盤『ID10+』リリース。毎週木曜 深3:30~4:00、TOKYO FMにて「志磨遼平のラジオ」放送中。
ドレスコーズ[the dresscodes]オフィシャルサイト
メジャーデビュー10周年『id10+』特設サイト

5月6日(水)雨、一時雷

ゴールデンウィーク最終日、あいにくの荒天。もとより今年は行楽など夢のまた夢、である。サッド・ヴァケイション。

当初は今日までとされていた緊急事態宣言もやはり延長が決まった。
もしも自分がちいさな店などを営んでいたならどうするだろうか、と考える。先行きの見えなさに店じまいを考えるタイミングかもしれない。おそるおそる営業を再開し、急場をしのごうとするかもしれない。

先月までの「とにかく今は粛々とすべし」というモードから切り替わりつつある自分に気づく。一市民としての、清濁併せ吞むような生命力を。

昼、惣菜パン2つ
夜、テイクアウトのパスタと前菜のセット
原稿などを書き、送る。

5月7日(木)快晴

楽曲制作の一日。

昼過ぎにネットで購入した本が届く。
ヴィクトール・フランクルの『夜と霧』、カンパニー社から出た『ハリー・スミスは語る』。最近話題の2冊。
自らに禁じていたネットショッピングを今は “緊急事態” につき容認している。本来、欲しいモノはそうカンタンに手に入れたくない。一生懸命探し求めた末にようやっと見つけたい。ambivalentなマニア心。

昼、からあげ弁当
夜、松屋のごろごろ煮込みチキンカレー
深夜、自分のラジオ番組をリアタイ聴取。今宵は満月。《フラワームーン》と呼ぶらしい。

5月8日(金)快晴

昼頃に目を覚まし、近所の空き地で読書。
天気のよい日はこの空き地でしばらく日光浴をするのがここ最近の日課となっている。その際は缶のブラックコーヒーを飲む。苦手だったブラックが、なぜかここに座るようになってから美味く感じる。

今日から新宿紀伊国屋書店が営業を再開したそうだ。朝から100人近い行列ができ、もっとも売れたのは「あつ森」の攻略本だそう。

昼、とんかつ弁当
夜、セブンイレブンのサラダとパスタ

制作の合間にオンラインで打ち合わせなど。仕事がある=嬉しい。健全な感情。

5月9日(土)曇り

本来なら大阪でデビュー10周年記念公演が開かれていたはずの日(明日には名古屋公演も控えていた)。なんの準備もリハーサルもせず、今日を迎えてしまった。まるで宿題にひとつも手をつけずに二学期が始まるような、妙な罪悪感がある。

ここ最近は、未視聴のDVDを少しずつ鑑賞している。今日は『ヘヴン』。イタリアが舞台の美しいラヴストーリー。あからさまな恋愛描写は一切なく、哲学的、宗教的なおごそかさにつらぬかれた素晴らしい映画だった。

昼、ケイジャンチキンジャンバラヤ弁当
夜、シュウマイ弁当

計画中の映像作品の構想を練る。
夜半過ぎ、リトル・リチャードの訃報。ロックンロール黎明期の偉大なるキングであり、クイーン。

5月10日(日)晴れ時々曇り

Twitterにて《検察庁法改正案》への異議申し立てがすさまじい勢いで広がるのを目の当たりにした。改正反対派、反対の反対派も含め、一日のうちに300〜400万の老若男女がいわゆる「政治的」なアクションを起こしたのは、自分が記憶する中では今日が初めての事ではないだろうか。

時間の経過とともに、論議の的は法案から「政治的発言(特に著名人からの)を拒絶する風潮の是非」に飛び火していった。

音楽にせよ、服装にせよ、味覚にせよ、誰しもに好む/好まざるの主張があり、その多様性があるからこそ人生は楽しいのであって、好む/好まざるを奪われることは反音楽的であり、反人間的であることを、自分は音楽から学んだ。反対するもよし、せぬもよし。ただ、他人の主張を嘲笑うなかれ。

昼、薩摩錦ちきんの唐揚げ弁当
夜、セブンイレブンのざるそばとおにぎり

5月11日(月)快晴

都内の最高気温は30℃、早くも真夏日。

いつもの空き地へ向かう途中、近所に暮らすバンドマンと遭遇し、しばし雑談。それとなく距離(ソーシャル・ディスタンス)を置いて座った自分たちが可笑しい。

たかが友人との雑談は、はじめはやや後ろめたく、次に懐かしく、次第にいつもと変わらぬ調子に戻っていった。まるで監視下のディストピアに暮らす気分。

昼、回鍋肉
夜、セブンイレブンのチキン・グラタン

自宅でラジオ番組を収録するなど。腹の調子がやや悪し。

5月12日(火)晴

3月から4月はまったく手につかなかった制作も、やっと調子が戻ってきた。
その原因が「状況にほだされた発想」を避けていたためだと、今ならわかる。
震災直後もそうだった。天災がいかに恐ろしいとは言え、「そんなもの」のために曲など作ってやるものか。自分が曲を贈るのは、いつだって愛すべき人のためだ。

インプットは常にトレンドを、アウトプットはそこからドリップした一滴の真理を。それを一年も続ければ、ようやくコップ一杯分ほど溜まる。

昼、チキン南蛮弁当
夜、セブンイレブンの博多とんこつラーメン、鯖寿司


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