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一人では有松絞りを作ることはできない。一つを、人と人と人で紡ぐ。
温度のある一反に迫る。

#02 Interview with Takeda Kahei syouten

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創業慶長13年(1608年)創業。有松絞りの開祖竹田庄九郎によって設立され今日まで400年以上、有松絞りをそして有松という地域を支え続けてきた竹田嘉兵衛商店様。そんな彼らは苦しくても自分たちが走り続けないといけないと語る。決して一人では作りあげることのできない、人と人と人とで紡ぐ。温度のある一反に迫る。

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:有松絞りはどの様な工程で作られていくのでしょうか??


近藤さん:
有松絞りは基本的には分業制で作られていきます。一人一手といって一人の人はだいたい同じ工程をずっとやり続けます。くくりの人はくくり。染めの人はずっと染め。そうすることで一つ一つの技の精度が上がり良いものをたくさん作ることができる。年間15万反なんか昔では作っていたんでこういった分業制をとっていたんですよね。だいたい一反作るのに12〜13人ほどで作り上げます。今回見ていただいている浴衣では製品になるまでに3ヶ月、着物となると全体では3年かかることだってあるんですよ(笑)今は、職人さんの数が減ってしまっているので完全な一人一手の体制とは行かないのですが、それでも昔ながらの分業制での作りを続けています。

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:物によっては製品になるまでに3年もかかる、、、大変な作業ですね。今回1反作りあげる工程を順番に見させていただいていおりますが、中でも大変な作業はどの様なものがありますでしょうか?


竹田さん:

楽な作業はないとは思いますが、僕はその中でも染めの作業は大変だと思います。めちゃくちゃ暑いんです(笑)染める液が高温だから、この時期なんかはもう暑くて暑くて、ほんと死んじゃいそうです。湯のしなんかの作業も、良い塩梅の絞りの凹凸が残る様に特殊な蒸気の出る一種アイロンみたいなもので伸ばしていきます。3人がかりで家の中を行ったりきたり。そしたら畳んで、また次の一反へ取りかかる。なかなかの重労働ですよね。

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:確かに、取材しにお邪魔させていただいた時もすごく暑かった、、、
個人的に僕は鹿の子絞りの糸をとる作業が衝撃的でした。バチバチバチって。音がもうちょっと怖い(笑)

竹田さん:

確かに、見ていて心配になる音してますよね(笑)
あの取り方ができるのって鹿の子絞りだけなんですよね。だから、他の絞りの糸は先に抜いちゃっておく。そうしないと破れちゃいますからね。様々な絞りを組み合わせて一反の模様を作り上げていくので、鹿の子絞りの糸を抜く作業は最後の締めにあたります。このとる一瞬でこの一反が良いものか良くないものなのかを判断するんですよ。



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:すごい、、長年の経験で直感的にわかってしまうのですね。
良いものっていう文脈の流れで、これまでの大量消費の時代が飽和状態になりものが溢れかえっている中で良いものを少しづつ作るみたいな風潮に変わってきている様な気もするのですが、実際はどうなのでしょうか?

竹田さん:
そうだねぇ。確かにそれでやっていけるのが一番良いんだけどねー(笑)



近藤さん:
そうもいかないのが現実だよねぇ(笑)
やっぱり少しの受注では生地屋さんを守り(もり)できないし、ある程度生地を仕入れてあげないと染め屋さんも守りできない。今染め屋さん半年しか仕事がないからね。一年間仕事がなければ誰もやらないよ。
だからある程度数を動かして産業として成り立たせないと。有松絞りは、有松っていう地域は死んでいってしまう。有松絞りって人と人と人が紡ぐ布のことを言うんだと思う。だから一人じゃ多分ダメなんだよね。
人が少なくなってこれからの若い人はどうやってやっていくのだろう、、ほんと絶滅危惧種だよね(笑)



守り・・・面倒をみる。守る。
(仕事量が少なくなると、仕事が途絶えて職人さんの雇用を維持できなくなる。そうならないために見守り、仕事を出し続け守っていく。)

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:絶滅危惧種、、(笑)なくなっていってしまうのはなんだか寂しいですよね。

近藤さん:
まー無くなって困るものではないけどね(笑)
室町時代のものがなくならずに残り続けているのかと言うと全部が全部そうじゃない。結局いつかは無くなってしまうんじゃないかなと思う。だけど、若い世代の人達には形を変えても残せるものがあるのであれば残していってもらえると良いな。


竹田さん:
本当にそうだね。
うちも染めてもらっている染屋さんに「最近注文の数も少なくなってきているし、ボイラーも調子悪くなってきちゃっているからそろそろ他も考えないとね。」って言われちゃって。(笑)要は染め屋さんってボイラー使うから毎日使ってあげないと悪くなっちゃうんだよね。最近はコンスタンスに注文が上がってくるわけではないから、少しづつ劣化してしまう。人も同じで動いていないと少しづつダメになってしまうんだよね。一回止まっちゃうと修復はなかなかむずかしい。だからどんな形であっても、僕たちが止めてしまったらダメだし、誰かが続けていかないと。



近藤さん:

確かに、止めちゃダメだよね。
もしかしたら本当は私たちのやり方は時代遅れなのかもしれない。やり方を変えなければならないのかもしれない。でもね、80代90代のウチのおばーちゃん達が死ぬまではやりきらなきゃなって(笑)そのおばあちゃん達に、もう仕事ないからね。とは言いたくないから。今苦しくても私たちが頑張らんとね(笑)



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:最後に有松絞りが有松という地域がどうなっていって欲しいか、どうしていきたいか教えていただきたいです



竹田さん:
これからを考えるためには、今まで支えてくれていた職人さん達を守りながらも、自分たちは新しいことに挑戦していかなければならない。
僕が小さい頃はもっとこの地域も人が歩いていた様に思えるんですよね。それこそ絞り屋さんだけではなく、本屋さんであったり靴屋さんであったりもっともっとたくさんのお店があって賑わいを見せていたんです。そう言ったお店も今では少なくなって、どんどん寂しくなってきてしまっている。そう言った現実を変えたい。愛知の方だったり名古屋の方だったり、一人ではなく、人と人の繋がりの力で有松というつながりをもっと盛り上げていきたい、行けたら良いなと思っています。良い絞りを作るのと同じですね(笑)

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*interview
竹田嘉兵衛商店 : http://www.takeda-kahei.co.jp/
商品部          竹田昌弘 さん
生地メーカー       近藤美規子 さん

撮影協力 : 張文さんなど各工程の担い手の方々

*続々 - つづく-
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監督・編集:
山田七叶 instagram { nanato_0505 }

デザイナー・ライター:
安藤瑞基 instagram { ancian____ }

youtube:

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