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商標弁理士と振り返るファミコンソフトのタイトルネーミング ~その9 「ファミリー」編~

こんにちは、横浜市の商標弁理士Nです。

さて、商標弁理士である私が、ファミコンソフトのタイトルを(頼まれてもいないのに)総チェックし、それらのネーミングについて(頼まれてもいないのに)独自にカテゴリー分けをした上で、(頼まれてもいないのに)商標実務の観点とあわせてコメントしていく本企画(笑)。

気が付けば、今回で第9回目となりました。

前回は、「ワールド・ランド」を含むタイトルについて考察しました。
今回は、「ファミリー〇〇〇」からなるタイトルを見ていきましょう!

~閲覧にあたってのご注意~
※商標弁理士Nがチェックしたファミコンソフトは、1983年~1994年までに正規のルートにて「カセット」で発売されたものとなります。ディスクシステムのソフト等は含まれません

アニメ、漫画、特撮、映画などの原作があるもの、元ネタとなるキャラクターがあるものなどのタイトルは、原則として除外しています。

※タイトルの解釈や、そこから生じる意味合いの理解が間違っている場合もあるかもしれませんが、あくまでネーミングを独自にカテゴリー分けしてコメントすることが本題となりますので、その点はどうか温かく見守っていただければと存じます。

家族団らんのイメージと「ファミリー」ネーミング

ファミリー(FAMILY)」という語に、「家族」という意味合いがあることは、我々日本人にもよく知られているでしょう。

「家族」の姿はさまざまで、諸々の事情があるケースというのも少なくないとは思います。ですが、一般的に「家族」といえば、「あたたかさ」や「かけがえのないもの」がイメージされることが多いのではないでしょうか。少なくとも、決してマイナスイメージのある語ではないはずです。

そのようなこともあってか、私たちが普段生活をする中で、「ファミリー〇〇〇」とか「〇〇〇ファミリー」というネーミングを見聞きすることも、珍しくはないでしょう。

たとえば、コンビニの「ファミリーマート」がありますね。
最近大ヒットした漫画・アニメにも、「スパイファミリー」があります。
いまや国民には欠かせない「ファミリーレストラン」も、忘れてはなりません。

そもそも、今ここで話題にしている「ファミコン」こと「ファミリーコンピュータ」も、まさにこれに該当するネーミングの一つです。

ここで、たとえば「スパイファミリー」とか「シルバニアファミリー」のように、「〇〇〇ファミリー」の場合は、そのまま「〇〇〇の家族」という意味合いで使われていることが多いように思います。一方、「ファミリー〇〇〇」の場合は、「家族で楽しめる」とか、「家族のための」といったような、「家族団らん」のイメージを、そのネーミングから感得できるように思います。実際、そのような意図で「ファミリー〇〇〇」と付けられることは、少なくないのではないでしょうか。

では、ファミコンソフトのタイトルのネーミングにおいてはどうでしょうか?

「ファミリーコンピュータ」用のソフトのタイトルだったら、「『ファミリー〇〇〇』というネーミングは当然多いのでは?」と考えられるのが普通ではないでしょうか。しかも、そのほとんどが、ファミコンの発売元である任天堂のソフトであろうと思うのではないでしょうか。

しかし、実際に調べてみると、「ファミリー〇〇〇」というネーミングのタイトルは、実は意外に少ないことがわかりました。しかも、その大半は任天堂のタイトルではありませんでした。

「ファミリー〇〇〇」ネーミングのファミコンソフトタイトルの一例

では実際に、「ファミリー〇〇〇」ネーミングのファミコンソフトのタイトルの一例を見てみましょう。

・ファミリーベーシック   (任天堂)
・ファミリーベーシックV3    (任天堂)
・プロ野球ファミリースタジアム    (ナムコ)
・プロ野球ファミリースタジアム87 (ナムコ)
・プロ野球ファミリースタジアム88 (ナムコ)
・ファミリージョッキー   (ナムコ)
・ファミリーボクシング   (ナムコ)
・ファミリーマージャン   (ナムコ)
・ファミリーマージャンⅡ  (ナムコ)
・ファミリーテニス     (ナムコ)
・ファミリーサーキット   (ナムコ)
・ファミリーサーキット91 (ナムコ)
・ファミリーピンボール   (ナムコ)
・ファミリーブロック    (アテナ)
・ファミリークイズ 4人はライバル (アテナ)

意外や意外、実はこの程度の数しかありません。
しかも、大半が任天堂ではなく、「ナムコ(現:株式会社バンダイナムコエンターテインメント)」のゲームタイトルです。

たしかに、当時ナムコの「プロ野球ファミリースタジアム」は爆発的な人気があって、子供たちの間でもよく知られていましたので、ナムコから「ファミリー〇〇〇」というタイトルのソフトが発売されているという印象を持っていた人は、私も含め少なくはないと思います。

ただ、実際にはこんなに種類が出ていたのかと思うと、少々驚きです。
ナムコは、この「ファミリー〇〇〇」を、まさにシリーズ作品のネーミングのように使っており、ブランド界隈でいうところの「ファミリーネーム」(そのままですが(笑))のような使い方をしていたと言えるでしょう。

そのようなナムコの作品群がある中で、「ファミリーブロック」と「ファミリークイズ」は、別の会社からリリースされているというのが、興味深いところですね。

ちなみに、ファミコン世代の多くの人はご存知かとは思いますが、上述の「プロ野球ファミリースタジアム」は、「88」以降はその略称であり愛称でもあった「ファミスタ」のタイトルで、その後も続編が発売され続けました。

商標実務的にはどうか?

上述のように、「ファミリー〇〇〇」からは、「家族団らん」のイメージが感得できることから、多くの人々に受け入れられやすいネーミングであると思われます。また、「〇〇〇ファミリー」からも、「〇〇〇の家族」といった意味合いが直感できるため、一般的には人々に好感が持たれるネーミングだと言えるでしょう。

ですから、こういったタイプのネーミングが、商品やサービスの商標として採用されても、何もおかしいことはありません。

ここで、特許庁のデータベース(J-PlatPat)で、「ファミリー?」をキーワードとして「商標(検索用)」で検索すると509件、「FAMILY?」をキーワードとして同様の検索をすると533件がヒットしました。

また、「?ファミリー」をキーワードとして「商標(検索用)」で検索すると386件、「?FAMILY」をキーワードとして同様の検索をすると464件がヒットしました。

これらの検索結果がすべて「ファミリー(FAMILY)〇〇〇」や「〇〇〇ファミリー(FAMILY)」という構成の商標というわけではありませんが、それを踏まえても、それなりの数が存在しているであろうことが確認できます。やはり、事業者からも好まれるネーミング要素なのでしょう。

なお、「商標が似ているかどうか」が判断される際には、前回の「ワールド・ランド」を含むネーミング商標の場合と、基本的な考え方は同じと言えます。ただ、「ファミリー(FAMILY)〇〇〇」の構成からなる商標の場合、「〇〇〇」の具体的な内容と指定商品・指定役務の関係によっては、商標全体として識別力が否定される可能性もあり得ることに留意が必要でしょう。

という感じで、今回はここまでとなります。
いよいよ終盤。次回は、「伝説・冒険」ネーミングについて見ていきましょう!

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