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商標弁理士と振り返るファミコンソフトのタイトルネーミング ~その4 「〇〇の〇〇」編~

こんにちは、横浜市の商標弁理士Nです。

さて、商標弁理士である私が、これまでに発売されたファミコンソフトのタイトルを総チェックし、それらのネーミングについて、独自にカテゴリー分けをした上で語ったり、商標実務の観点からもコメントをしたりしていこうという本企画(笑)。

前回の記事では、「結合語」のタイトルを取り上げました。
今回は、引き続き「〇〇の〇〇」のタイトルを見ていきましょう!

~閲覧にあたってのご注意~
※商標弁理士Nがチェックしたファミコンソフトは、1983年~1994年までに正規のルートにて「カセット」で発売されたものとなります。ディスクシステムのソフト等は含まれません

アニメ、漫画、特撮、映画などの原作があるもの、元ネタとなるキャラクターがあるものなどのタイトルは、原則として除外しています。

※タイトルの解釈や、そこから生じる意味合いの理解が間違っている場合もあるかもしれませんが、あくまでネーミングを独自にカテゴリー分けしてコメントすることが本題となりますので、その点はどうか温かく見守っていただければと存じます。

思ったよりも多くはない「〇〇の〇〇」

「鬼滅の刃」、「すずめの戸締まり」、「進撃の巨人」、「ハウルの動く城」など、アニメ分野においては、「〇〇の〇〇」というネーミングが採用されているものが多く見られます。しかも、このようなネーミングタイトルの作品は、空前の大ヒットとなったものも少なくありません。書籍、映画のタイトルなどでも、よく見かけますね。

ファミコンソフトのタイトルにおいても同様に、「〇〇の〇〇」というネーミングが採用されているものは少なくありません。ただ、正直なところ、「思っていたよりも多くはない」という印象があります。

「〇〇の〇〇」という構成からなるネーミングは、一般的に、全体で一つのワードになると考えられますので、意味合いが生じやすく、「ネーミングから内容が想像しやすい」特徴があると言えるでしょう。ファミコンソフトの場合は、そのネーミングを構成する語によって、ストレートに意味合いが理解できるパターンと、ゲーム内容を暗示させたり、登場するヒト(生き物)・モノ・コトをイメージさせたりするパターンがあるように思われます。

「〇〇の〇〇」からなるファミコンソフトのタイトルの一例

では、「〇〇の〇〇」からなるファミコンソフトのタイトルの一例を見てみましょう。

「思っていたよりも多くはない」とは述べたものの、それなりに数はたくさんありますので、ここでは私がピックアップした一部のタイトルのみをご紹介します。

・ドルアーガの塔  (ナムコ)
・アトランチスの謎 (サン電子)
・ソロモンの鍵    (テクモ)
・高橋名人の冒険島 (ハドソン)
・戦場の狼      (カプコン)
・アイギーナの予言 (ビック東海)
・ホッターマンの地底探検 (ユース)
・マドゥーラの翼  (サン電子)
・闘いの挽歌     (カプコン)
・時空の旅人     (コトブキシステム)
・飛竜の拳 奥義の書 (カルチャーブレーン)
・高橋名人のBUGってハニー (ハドソン)
・エルナークの財宝  (トーワチキ)
・光の戦士フォトン  (タカラ)
・インドラの光     (コトブキシステム)
・サラダの国のトマト姫 (ハドソン)
・亀の恩返し     (ハドソン)
・仮面の忍者 花丸  (カプコン)
・虹のシルクロード  (ビクター音楽産業)
・おたくの星座     (エム・アンド・エム)
・ヨッシーのたまご  (任天堂)
・ヨッシーのクッキー (任天堂)
・星のカービィ    (任天堂)
・ワリオの森      (任天堂)
・悪魔の招待状     (コトブキシステム)

ヨッシーのたまご」、「ヨッシーのクッキー」、「星のカービィ」、「ワリオの森」のように、比較的ファミコン後期に任天堂から発売されたタイトルの多くが、「〇〇の〇〇」の構成からなるネーミングであるのは興味深いところです。

それにしても、どなたが考案したのか知りませんが、「サラダの国のトマト姫」は非常にセンスが良いネーミングだと個人的に思います。一度聞いたらまず忘れませんし、ネーミングからゲーム内容のこともイメージしやすいですよね。もし、このネーミングがトマトに関連する商品とか、子供向けのお菓子などに使われていたら、大ヒットしたのではないでしょうか

商標実務的にはどうか?

「〇〇の〇〇」の構成からなるネーミングは、商品やサービスの商標としても多く採用されています。前回の「結合語」と同様に、商標実務的な観点(特に、商標登録の観点)からも、比較的よく接するネーミングのタイプであると言えるでしょう。(なお、「結合語」についての記事はこちら

「〇〇の〇〇」のネーミングからなる商標の場合、他人の商標と似ているかどうかは、基本的には全体での比較によって判断がなされます。よって、それぞれの「〇〇」がどのような語になるかにもよりますが、商標登録は比較的しやすい傾向にあると考えられます。

もっとも、商標実務上、非常にやっかいなケースもあります。
それは、後半の「〇〇」が、その商品やサービスの普通名称となる場合です。たとえば、商品「たこ焼き」についての「天使のたこ焼き」のような商標です。※あくまで架空の例です。

この場合、後半の「〇〇」の部分には識別力がないと判断されるのが一般的です。その結果、他人の(前半の)「〇〇」や「〇〇の」の商標と似ていると判断される場合があるのです。上記の例では、「天使」とか「天使の」という他人の商標がすでに登録されていた場合、これらに似ていると指摘される可能性が考えられます。

最終的に似ていると判断されるかどうかは、ケースバイケースです。
それこそ、前半と後半のそれぞれの〇〇が具体的に何になるかにもよりますし、そのタイミングでの特許庁の判断傾向に左右されることも少なくありません。ここがまた、非常にやっかいなところです。我々専門家でも、どちらに転ぶかを予測するのは正直難しいです。

したがって、こういったタイプの「〇〇の〇〇」のネーミングからなる商標を採用する場合には、他人がすでに(前半の)「〇〇」や「〇〇の」といった商標を登録していないか、事前に確認するよう注意しておく必要があるでしょう。商標調査の実施は必須と言えます。

また、自分が「〇〇の〇〇」について商標登録をした後には、他人に(前半の)「〇〇」や「〇〇の」の部分を商標登録されてしまわないように、防衛的な商標登録についての検討もしておくのが良いと思われます。特に、シリーズ商品として、「〇〇の△△」とか「〇〇の□□」を今後展開していく予定があるのであれば、「〇〇の」についても、商標登録をしておいた方が安心です。上記の(架空の)例で言えば、「天使のたこ焼き」だけでなく、「天使の焼きそば」とか「天使のお好み焼き」も採用予定があるなら、それぞれの登録に加えて、「天使の」についても商標登録しておくのが望ましいと思います。

なお、「識別力」については、「単独既成語」についての記事もご参照ください。

という感じで、今回はここまでとなります。
次回は、「くん・さん・ちゃん」を含むネーミングについて見ていきましょう!

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