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文章(散文)

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#山

【散文詩】セミの声

身の上の細かい問題も大きな問題も何一つ解決せぬが今日はもうやめよう。セミが鳴いている、あたりに人はいない。今日は風が気持ちい、日陰のベンチで横になり、目を瞑る。寝不足で酩酊しているような頭の中は仕事のことばかりでツクツクボウシと風に揺れる木々の音に身をゆだねることも叶わない。

 家の近所じゃ生活と仕事の影が付きまとう。現実が嫌でも目と耳に入ってくる。だからこうして車を走らせ山に来る。いまだ人生の

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【散文詩】アラーム

 時計でもスマホでもアラームをかけて、そのアラームが鳴るのが怖くなりアラームが鳴る前に止めてしまう。

 山へ登り、空を見て、山の上から遠くの山を見る。そんな心休まる時間もアラームが気になる。心穏やかな時間は一瞬ですぐさまアラームの存在に気付き、意識する。焦る。
 焦燥感はあらゆる景色を切なく虚しいものへと変える。時間や日の光が儚いものに思える。すぐに夜は来て、この景色も無くなり現実に呼び戻される

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