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文章(散文)

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#夏

【散文詩】セミの声

身の上の細かい問題も大きな問題も何一つ解決せぬが今日はもうやめよう。セミが鳴いている、あたりに人はいない。今日は風が気持ちい、日陰のベンチで横になり、目を瞑る。寝不足で酩酊しているような頭の中は仕事のことばかりでツクツクボウシと風に揺れる木々の音に身をゆだねることも叶わない。

 家の近所じゃ生活と仕事の影が付きまとう。現実が嫌でも目と耳に入ってくる。だからこうして車を走らせ山に来る。いまだ人生の

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【散文詩】8月の散歩

 暗闇に意識だけがある。重だるい体のせいなのか意識にも重量があり、暗闇の中、布団を意識が押し潰しているようだ。

 夜中に目を覚ます、クリアになる意識と立ち上がるどころか寝返りも面倒に思えるほど重たい体。寝れない夜は散歩をしたい、うつ伏せで寝たまま頭の中で散歩する。大きな川の堤防を歩く。明かりはなく星がよく見える、洒落た階段があり土手に降りれる、土手には駐車場があり、昼間は人がいるが真夜中の誰も居

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【散文詩】少し眺めた

 八月、とても暑く、刺激の無い見飽きた景色は己の自信の無さと先の見えない不安に輪郭を持たせる。心は相変わらず浮足だしふらふら右往左往している。ジタバタ体を動かし、無駄に疲れ、汗をかくも何も解決していないし、一昨年の自分もずっと前の子供の頃の自分も同じように焦りからジタバタしていた記憶が蘇る。何だかまるで成長していない気がして苦笑い。眉間に皺を寄せてイーーっと歯を噛み締め、自信なさげに笑う。

 山

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