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はじめてのなつやすみ

母が地元で飲食店をオープンすることになった。
その準備やオープン後の手伝いなどで、ここ1ヶ月ほど、週3,4回くらい地元に帰っている。
地元には高校1年くらいまで住んでいて、それからあと10年以上は正月やお盆に帰るくらいの感じだったので、この1ヶ月はとても新鮮な感じがする。

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最寄駅から距離があるので、叔父に借りた自転車で店へ向かう。
考えてみれば小さい頃、近所で遊んだり、うろうろしたりした記憶があまりない。近所に友達があまりいなかったのと、塾通いの日々だったからかもしれない。ごく近所でも知らない場所が結構多い。

それに加えて、私の地元はこの十数年ですっかり様変わりした。
公園や団地はすっかり新しくなり、古い建物は取り壊されて病院や介護施設や高齢者向け住宅になった。
2020年の記事でも少し書いたが、大半の知らない風景の中に、記憶の中の風景がぽつぽつ混ざっている感じだ。そもそも薄い記憶がより薄まりつつあるのを感じながら自転車を漕ぐ。

記憶があるような無いような道を自転車で走る。
「この道ここにつながってたんや・・・」「なんやここ、初めて通るわ」「あの建物まだあるんや」「えー何もなくなってる!」
記憶の答え合わせと上塗り。自転車でうろうろするのが楽しくて、店に着く前に近所を少し探索していくのがお決まりになりつつある。

近所の探索とかいう、本来なら小学生の夏休みにやってるようなことを、30超えて初めてやってるやん、と思って面白くなってる。人生で初めて、ちゃんと夏休みしているかもしれない。
近所うろついて、お母さんやおばあちゃんの手伝いして、ご飯食べさせてもらって、また来るね〜と言って家に帰る。小学生の夏休みでしかない。

お店は8月上旬にオープンした。
オープン後は、近所の人は勿論だが、親戚が毎日誰かしら来ている。
母の家系は親戚がめちゃくちゃ多いのだ。今でもたまに会う親戚、小さい頃に何回か会った(かも・・・)な親戚、正直知らん親戚。
これもまた、小学生の夏休みのやり直ししてるみたいで面白い。お盆はおばあちゃんちに泊まって、親戚が誰かしら訪ねて来て、夜は酒飲んでテレビ見てだらだらして帰っていく親戚達。
久しぶり、前に会ったのいつやったっけ?今何してるん?あの人はどうしてる?また来るね!・・・みたいな、

正直、大人になってこんな経験や気持ちになれると思ってなかった。
大人になるにつれて、コロナや時代の雰囲気や、それぞれ歳を取ったりもして、昔みたいに親戚が集まるような感じでは無くなっていたから。子供の頃のお盆や正月の、あの空気感はもう味わえないと思っていた。

あの頃の、記憶の中の景色の続きを見ているようで嬉しい。
みんな等しく歳をとり、時は容赦無く過ぎていくから、今夏はせっかくの"夏休み"を大事にしたいなと思っている。



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