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【読書メモ】『黒田官兵衛の情報学(インテリジェンス)』(著:宮崎正弘)

既に経済・技術の分野でも情報保全制度が定着している他のG7諸国やオーストラリア等との信頼関係が深化して、日本企業のビジネスチャンスが拡がることや、国際共同研究の機会が増えることを、大いに期待しています。

豊かな知見をもって法整備の方向性を示して下さった有識者会議の先生方、クリアランスを保有しない日本人が海外ビジネスで直面している厳しい現状を率直に語って下さった各企業の皆様、閣議決定前の審査などで大変なお力添えを賜った各党議員の皆様、条文の調整も含めて懸命に頑張り抜いて下さった関係官庁職員の皆様、有難うございました。

出典:「高市早苗議員、「X(旧Twitter)」2024年2月27日ポストより」

少し前、経済安全保障分野におけるセキュリティ・クリアランス制度等に関する有識者会議からの「最終とりまとめ」が出ていました(令和6年1月19日付)。メンバーを拝見したところ『情報と国家』や『経済安全保障』の北村滋さんのお名前もあって、ふむふむと。安倍さん肝いりの国家安全保障局(NSS)の局長を勤められていた方でもあります。

安全保障の概念が、防衛や外交という伝統的な領域から経済・技術の分野に大きく拡大し、軍事技術・非軍事技術の境目も曖昧となっている中、国家安全保障のための情報に関する能力の強化は、一層重要になっており、経済安全保障分野においても、厳しい安全保障環境を踏まえた情報漏洩のリスクに万全を期すべく、セキュリティ・クリアランス制度を含む我が国の情報保全の更なる強化を図る必要がある。

我が国の既存の情報保全制度のうち、例えば、特定秘密保護法の施行により、我が国の情報保全制度の信頼性が高まり、同盟国・同志国との情報共有が一層円滑になった一方、主要国と異なり、同法では政府が特定秘密として指定できる情報の範囲が、防衛、外交、特定有害活動の防止、テロリズムの防止の4分野に関する一定の要件を満たす事項に限られており、経済安全保障に関する情報が必ずしも明示的に保全の対象となっていない

情報保全の強化は、安全保障の経済・技術分野への広がりを踏まえれば、同盟国・同志国との間で更に必要となるこれらの分野も含んだ国際的な枠組みを整備していくこととあいまって、既に情報保全制度が経済・技術の分野においても定着し活用されている国々との間での協力を一層進めることを可能とし、ひいては、国家安全保障戦略が示す我が国の安全保障に関わる総合的な国力の向上にも資するものである。

出典:「最終とりまとめ」(「経済安全保障分野におけるセキュリティ・クリアランス制度等に関する有識者会議」2024年1月19日)

こちらは、日本が「普遍的価値観を共有できる陣営」であり続けるために必須の法案、高市先生肝いりの情報保全強化の施策でもあり、防衛・外交のみならず、経済・技術にまで広がり続けている「安全保障」の範疇を補っていくためにも必要なものとなります。明確な理由を提示することもなく、ただただ反対する方々はまぁ、お里が知れるってものでしょうかね。

なんて考えながらふと『黒田官兵衛の情報学(インテリジェンス)』との一冊を思い出しました。確か大河ドラマで黒田官兵衛をやっていた時期に、友人の結婚式(2014年6月頃)で訪れた姫路の本屋で購入、この他にもいわゆる「官兵衛本」がたくさん平積みされていた覚えもあります。

信長、秀吉、家康と移り変わっていった戦国期、その中を「情報」を武器として生き抜いた人物としての黒田官兵衛像を描き出そうと試みている内容、といったところでしょうか。

活用、応用、転用ができなければ「情報通」とはいえない

出典:『黒田官兵衛の情報学(インテリジェンス)』

まさしく今の時代にも通じる概念と思います。戦国時代の最終的な勝者ともされる徳川家康も決して百戦百勝だったわけではなく、三方原などでは武田信玄相手に大敗しています。その理由はひとえに「情報」を活用できなかったから。そして、痛い目を見た後の家康は、再チャレンジを重ねて文字通り生まれ変わっていくことになります。

実践による再確認が、家康を本当の智者にした

関ケ原はインテリジェンス戦争の総決算

出典:『黒田官兵衛の情報学(インテリジェンス)』

家康の足跡を追いかけつつ、あわせて「現代の日本の状況」への警鐘を鳴らしながら、わかりやすく描き出しているのが個人的にはスルッと肚落ちしてきた覚えが。戦国時代ものとして読むと少し肩すかしになるかもしれませんが、現在と紐付けながらの官兵衛像という点は、なかなかに新鮮でした。

明を侵し、その明の軍団を駆使して日本を落とすというのがキリスト教団の野心であり、この証拠となる文書は戦後になって夥しく発見されている

(キリスト教の布教は)武力による侵略とセット

出典:『黒田官兵衛の情報学(インテリジェンス)』

本書自体は10年前に発行されたのですが、その時から比べると、安全保障の範疇は防衛・外交のみならず、経済、技術、情報、思想等々、ますますに拡大の一途をたどっています。今現在は「認知戦」との言葉もだいぶ浸透してきてはいますが、できれば「痛い目」にあう前に情報活用のフレームをきちんと運営できるようにしておいてほしいところです。

(一神教の)思想の価値観が『唯一絶対の善』と『唯一絶対の悪』の存在を前提として、これを人間社会に実現しようとする

強くもあり、弱くもある人間には、『絶対の善なる個』も『絶対の悪なる個』も存在しない

出典:『黒田官兵衛の情報学(インテリジェンス)』

そしてこちらは、なかなかに示唆的な記述でもありました。八百万の環境下でいるとなかなか実感はできないのですが、「一神教の思想の下では「戦争」は絶対に終わらない」なんて言い方も、確かになぁ、、と、イスラム教やキリスト教、共産主義等の排他性を鑑みながら、左右、属性問わずに全体主義化した連中には注意をしておきたい所です、、卑近だとれいわ新選組や日本保守党という政治団体などがあがってきますかね。

余談ですが、信長、秀吉、家康と担い手が移り変わっていった戦国期、応仁の乱で疲弊しきった既存社会へのカウンターを始めた信長と、形を変えながらもその系譜を受け継いでいった秀吉、家康たちの姿に、戦後レジームからの脱却を担った安倍さんと、その想いを引き継いでいっている、菅さん、岸田さんの流れを重ねてみる事が増えてきてもいます。

やはり、安倍さん、早すぎましたよ、、



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