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春の気づき

ずいぶん久しぶりに文章を書いてみた。ぼんやりしているうちに、時間だけが勝手に過ぎていくような感じがする。気が付いたら、冬が終わって春が来ていた。


暖かくなってきてから、少し体を動かそうと思い始めた。この間は姉と一緒に、二年ぶりくらいに登山に行った。地元は山だらけで登山に困らないのでありがたい。

履きなれたスニーカーと、お気に入りの帽子と、動きやすい服装と。リュックにこまごましたものを詰めて、出発する。平日の朝ということもあって人は少なかった。おじさんにおばさん、若い男の人に、小さい子どもを連れたお母さん。そういえば、いつ行っても、同年代の女の子とはほとんど会ったことがない。
途中で出会った気さくな人たちと、少しだけおしゃべりをした。これがもし街中だったらお互いきっと素通りしていただろうから、山の中では人との距離が自然と近くなるのかもしれない。

低い山なのもあって、一時間も経たないうちに山頂に着いた。慣れた山なので特に達成感があったわけではないけれど、よく晴れていて、山頂から地上を見下ろすのは気持ちよかった。あと、山で食べるチョコレートはやたらと美味しいといつも思う。

ここのところ、外に出ることがめっきり減っていたせいか、家でも職場でもない場所にいるのが新鮮だった。家の中にも楽しみはもちろんあるけれど、やっぱりいろんな感覚が鈍っていたように思う。久しぶりに体を動かして、刺激を受けて、急に目が覚めたような感じがした。


時々は、散歩にも行くようになった。一時間くらい、川沿いや田んぼ道や山の周りをぐるりと歩く。咲いている花だとか、木々の様子とか、鳴いている鳥や虫の種類とか。車に乗ってばかりいると、見逃してしまいがちな季節の様子が、歩いているとよく見えたり聞こえたりして楽しい。あの草は吹くと笛みたいな音がしたなとか、あの花の蜜を吸ったことがあったなとか、よく草相撲してたなとか、いろんなことを思い出した。

大人になってすっかり世界は広がったけれど、逆に近くにあるものが見えなくなってしまったような気がする。子どもの頃は今より世界も狭くて、不自由なことも多かったけれど、その分楽しみを見つけた時の喜びも大きかった。
もうその頃に戻ることはできないけれど、せめて今楽しいと思えることとか、やりたいと思っていることとか、一緒にいてくれる人たちを大事にしていきたいなあと思った。


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