消費者として服の捨て方を考えなおす
今回は繊維業界に携わる中で、一介の消費者として意識の変化が起きた「服の廃棄方法」に関して学生目線での気づきなどを共有できれば良いなと思い、noteを執筆してみました。
至らぬ点も多いかと思うのですが、最後までご覧いただけると大変嬉しく思います。
消費者としてのサステナブルファッション
アルバイトの個別指導で小学生にSDGsについて質問した時、概要を常識かのようにすらすらと答えていてSDGsもかなり浸透しているのだなーと実感した経験があります。今回、服の廃棄を考えるにあたり、いま一度正式な概要にあたってみます。
こうした取り組みが世界中の各地域・業界・分野で幅広く行われていますが、その中でもファッション産業は、消費エネルギーや商品寿命の短さなどから環境負荷が非常に大きく国際的な課題となっています。
衣服の生産・使用・廃棄に至るまで環境負荷を考慮したサステナブル(持続可能)なファッションへの取り組みは近年世界において急速に拡がっている一方、日本においてそのような取り組みはまだまだ限定的かつ認知度が低いのが現状です。
こうした考えが広がるのには一般消費者の認知や働きかけが大きなカギを握ります。そして我々が服の環境負荷低減に積極的に携われるタイミングは主に購入・使用・廃棄の3つのタイミングです。
上記ページは持続可能なファッションを目指し環境省が発信している特設ページです。ここで掲げられている消費者として行える取り組みは大まかに以下の5点です。
今持っている服を大切に着よう
再利用でファッションを楽しもう
先のことを考えて買おう
作られ方をしっかり見よう
服を資源として再活用しよう
このうち今回注目したいのが先ほど列挙した3つのタイミングのうちの「廃棄」で、環境省が発信する「服を資源として再活用しよう」にあたるものです。
同省は消費者に以下のように促しています。
また一方で、企業に対しては店頭回収の推進を促しています。
また消費者庁もサステナブルファッション習慣のすすめとして特設サイトを設置。
JAPAN SUSTAINABLE FASHION ALLIAANCE(= JSFA)も伊藤忠商事、ゴールドイン、帝人フロンティア、東レ、豊島、ユナイテッドアローズ等の企業が正会員となって設立されるなど、ファッション業界におけるサステナビリティは日々重要性とその求心力を増していることが分かります。
衣服廃棄の現状
お気に入りだったけど汚れてしまった洋服、成長して合わなくなった子供服、トレンドとあわない服、このような不要となった衣料品が日本だけで毎年100万トン以上(そのうち家庭による廃棄は年間約75万トン)廃棄され、そのうちのなんと9割が焼却されています。
かくいう私も「これはもう捨ててしまおう」と思った際にはゴミ袋に詰め込んでいたことを思い出します。
捨てる=ごみとして廃棄するという考え方が一般的であるがために画像のように再資源化される衣服は全体の5%にとどまっているのだと感じます。
衣料メーカーが手掛ける「廃棄」の新常識
環境省も推進する不要服回収サービスは、クローゼット整理が環境に貢献しつつ行える、そして経済的メリットまであります。
ただゴミ袋に詰め込み焼却するのは「もったいない」ということは、以下のサービスを知ったあとではずっとよく分かるはずです。私もこれを知ったあとに今までゴミ袋に詰め込んできた服が急に惜しくなりました。
1 UNIQLO, GUの取り組み
UNIQLO、GUは自社製品の回収ボックスを全店舗に設置し、営業時間内であれば常時対応。
回収された衣類の行先はというと、世界各国の難民キャンプ・被災地への支援物資あるいは代替燃料への再生など様々です。誰かの不要が誰かの必要に変わる、広いネットワークと大資本を持つファーストリテイリングにこそなせる業ですね。
2 無印良品の取り組み
無印良品を展開する(株)良品計画は「あなたの服を地球の福に」の合言葉のもと、下着を除く無印良品の衣料品全般(タオル、シーツ、カバー類も含む)を回収するBRINGという企業連携プロジェクトを常時実施中。
回収品はバイオエタノールやポリステル樹脂などにリサイクルされるほか、状態が良いものは染め直した上で限定店舗で再販売。
MUJI passport会員は1回の回収でその場で1,000マイルが付与されるお得なキャンペーンでもありますね。
3 H&Mの取り組み
H&Mでは、なんとブランドや状態を問わず、衣料品の回収を国内全店舗で常時実施中。片方だけの靴下や古いシーツでも持ち込むことができます。
回収品はrewear, reuse, recycle, energy4つの方法で再利用されるといいます。
まだ着用できるものは古着として世界で販売、もしくはリメイク用の材料や清掃用品などに再利用。
再着用・再利用できないものは新たな繊維や自動車産業において制振材・絶縁材としてリサイクルされます。
循環型ファッションを目指し様々な取り組みを実施しているH&Mでは、商品に使用する素材も2030年までにすべてリサイクルまたはサステナブルに調達された素材へと切り替えを推進中だそうです。
https://www2.hm.com/ja_jp/customer-service/product-and-quality/product-sustainability.html
4 ZARAの取り組み
国内全店舗に設置した回収コンテナで商品リサイクルを受付中。ブランドは不問で、衣類のほかにホームファブリックも対象となっています。
とのことで、直接のメリットはないかもしれませんが着古した大切な服を提供することが社会支援になることはどこか嬉しい気持ちになりますね。
5 GOLDWINの取り組み
THE NORTH FACEやHELLY HANSENなどを展開するGOLDWINではブランドや製品状態を問わず回収を実施。
服のみを対象をとし提供者には500円分のクーポンが付与され、その持ち込み点数は問いません。また、一日の持ち込み回数は1回までで持ち込む前には洗濯が必要となることに注意が必要です。
以上のように各企業で多種多様な取り組みが行われていることが分かりますね。
このほかにもRight-on, Onward, SNOWPEAK, WACOAL, 洋服の青山、 近鉄百貨店などあらゆる企業でSDGsに向けた取り組みがスタートしています。
BRING とはなにか?
BRINGというサービスをご存じでしょうか?
そう。さきほど無印良品の回収サービスを紹介した際に出てきたサービスです。実はこの取り組み、日本環境設計というリサイクル開発を行うベンチャー企業が先陣を切って推進しているサービスで、協賛企業がとても多いのが特徴です。
BRING – 日本環境設計株式会社 (jeplan.co.jp)
このBRINGというプロジェクト、何が行われているのでしょうか?
HPには以下のように書いてあります。
このようにまずはゴミ廃棄を減らし、形を変えたりあらゆる工夫を行い回収品が世界に再流通する仕組みを作っている取り組みを行っていると分かります。
服として寄付やリユースができないのならば、素材やパーツごとに分別しているとのこと。このプロジェクトに協賛企業が多いのも頷けますね。
次世代の環境のためにみんなで小さな配慮を
持続可能な環境を次世代に残すためには、大企業が巨大資本で抜本的改革を推し進めることがその唯一の解決法ではありません。
むしろ消費者である我々が、使わない服を再利用するあるいは無駄な買い物をしない。そんな目の前の小さなことからサステナブルファッションへの道は開けているのです。
このような個々の積極的な行動が企業や社会の在り方を変化させ、大量生産から適量生産へシフトするきっかけになります。
まずは今度のお休みに要らない服を回収サービスに持っていくところから始めてみませんか?
以上が繊維業界で働く大学生の目線から考える等身大のSDGsです。最後まで目を通していただきありがとうございました。この記事が読んでいただいた方の何らかのプラスに作用することがあれば幸いです。
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