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短編の読後感

質の良い短編小説を読んだあとの読後感はどこからくるのだろう。

短編といえば、ショートショートの神様といわれる星新一。

この著者の物語は誰が読んでも面白く、オチで心地よい驚きがある。また社会問題にも言及していたりして、哲学的な物語も多い。

星新一も良いけれど、最近おすすめなのがトーベ・ヤンソンの短編集。
ムーミンで有名なトーベ・ヤンソン、実はムーミン以外の短編集も面白いのです。


短編集「黒と白」の一遍「自然の中の芸術」から抜粋します。


『芸術作品にせよ文学作品にせよ、はっきりと理由はわからぬままに人の心を動かすのは、外からは窺いしれぬ秘密をかかえているからだ。 芸術作品を前にしたときの無言の敬虔、そして使信(メッセージ)を自分なりに理解したいという欲求、このふたつは矛盾しない。』


この作品に出てくる老夫婦は一つの『わけのわからぬ抽象画』を巡って、それぞれの作品の鑑賞の仕方の流儀を押し付け合う。だったらいっそ、作品を包んで中身を見えなくして壁に飾ればいい、というオチ。

トーベ・ヤンソン物語は、わかりやすくオチが書かれていないものが多い。読んだあとに尾を引っ張られ、「なんだろう?」と考察する余地を与えてくれる。題材は人間の本質や、哲学など考えざれられるものばかり。

また、1文1文に意味が隠されており、読み解くために高い集中力を必要とするので、読む最中に体力が必要で、最後には気づきや閃きが起こる。

これが心地よい読後感につながるのだろうと思います。

TVなど、わかりやすいメディアに慣れてしまうと、感性は気づかないうちに心の奥に埋もれてしまいがち。

自分の感性を掘り起こすためにも、定期的に短編を読むのは効果的かもしれません📕

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