心のキーマン(ショートショート)「音声と文章」
山田ゆり
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※note毎日連続投稿1616日をコミット中! 1613日目(4年余り)
※聴くだけ・読むだけ・聴きながら読む、
どちらでも短時間で楽しめます。
おはようございます。
山田ゆりです。
今回は
心のキーマン(ショートショート)
をお伝えいたします。
ビジネススーツにビジネスバックを持ったリョウコは会社の玄関のドアをノックした。
玄関を開けるとそこはワンフロアになっていた。
「本日、14時からの予定で面接に参りました〇〇と申します。」
リョウコは口角をあげいつもよりワントーン高めの声で相手に告げた。
受付の方に促されて椅子の方を見たら数人のリクルート姿が見えた。
ああ、私の前にまだこんなにいるのか。
皆さん、なんかできそうな感じ。
私大丈夫かな。
いや、大丈夫。
気張らずに、背伸びせず、誠実にお答えすればきっと私の良さは伝わるはず。
勧められた椅子に近づいた時、その2つ前の椅子に座っていた人が顔を上げた。
「あっ^^」
ミチヨだった。
そうだよな。
基本給が少し高くて職務内容からしてミチヨが応募してもおかしく無いよなとリョウコは納得した。
ミチヨはニッと笑い、リョウコも笑い返した。でも場所が場所だから何も話さなかった。
どうやら面接は予定よりかなり遅く進んでいるようだった。
ミチヨの番になり彼女はリョウコに軽く会釈をして面接室へ入って行った。
30分後、面接が終わったミチヨはニコニコしながらリョウコに小さく手を振りながら会社を出ていった。
リョウコは彼女にここは取られたなと思った。
仕事内容からして彼女は全てできる。だって前職の会計事務所の先輩だから。
ミチヨはご両親の介護のために会社を辞められた。
会社には特に不満はなかったがもう少し早く帰宅できる会社に勤めたいと言っていた。
それは良くわかる。
リョウコも同じ理由で最近、会社を辞めたから。
この辺の求人は一般事務の募集がほとんで、リョウコはそれが物足りなかった。
そして、たまたま見つけたこの求人は
一般的な事務から決算までする。
給料計算や年末調整もする。
社会保険などの手続きや建設業の各申請もする。
仕事内容が全てできる。
ワクワクしかない魅力的な求人だった。
だから、現在、一般事務として勤めているがこの会社に履歴書を送ったのだ。
この会社はミチヨに決まるかもしれない。
仕方ない。私は別を探そう。
面接が終わったらすぐハローワークに行ってみようとリョウコは思った。
面接が終わり会社を出たらミチヨが車から出てきた。
ああ、待ってくれていたんだ。
リョウコも話したかったから嬉しかった。
それから二人はそれぞれの車で移動して
かつて、私たちのたまり場だったあの喫茶店に入った。
ガラガラと音がするドアを開くと店内からは静かにジャズの音色が流れていた。
「おっ、いらっしゃい。いつものでいいかい?」
グラスを磨きながらマスターがミチヨに話しかけた。
二人はいつものコーヒーを飲み最近のことを話した。
リョウコは久しぶりに気の合う人と話しができていつもより饒舌になった。
今の職場はまだ入ったばかりと言うこともあり、会社では私語をほとんど言えない雰囲気だったから尚更だ。
会計事務所時代は本当に忙しかった。
特に確定申告の時期になると、毎日残業で、夕食は近くの中華料理屋さんにみんなで出かけそこで食べていた。
特に炒飯が美味しくて、家で待っている子どもたちへのお土産として買って帰り、玄関で出迎えた子どもたちは小躍りしていた。当時、保育園児だった長男は今年高校に進学した。
毎年1月から3月14日までは
夕食を自宅で食べられる日は3分の1くらいだった。
2月にもなると、駆け込みの顧問先様が多くなり、休日出勤が当たり前で、リョウコ達は一緒に戦う同志のようなものだった。
琥珀色の空気の中で、大きくなった子供の話や夫への愚痴、親の介護の大変さなどを話し、「同じ40代同志、頑張ろうね」と言って二人は分かれた。
その後、ミチヨがその会社に入社し、リョウコもほどなくして別の会社に就職できた。
お互いの親の通夜の席で顔を合わせ、その後も何度かあのマスターのお店で落ちあい愚痴や将来の夢などを語り合っている。
長い人生の中で、ずっと離れていたのにひょんなところで一緒になる。
再開した時は昨日も会っていたような近さを感じる。
ミチヨとリョウコはそういう仲だった。
離れていても心の奥底では繋がっている。
そんな人がこの世に一人か二人は居る。
それは配偶者だったり親だったりする。
ミチヨはリョウコにとって心のキーマンなのかもしれない。
今回は
心のキーマン(ショートショート)
をお伝えいたしました。
本日も、最後までお聴きくださり
ありがとうございました。
ちょっとした勇気が世界を変えます。
今日も素敵な一日をお過ごし下さい。
山田ゆりでした。
◆◆ アファメーション ◆◆
.。*゚+.*.。.。*゚+.*.。.。*゚+.*.。
私は愛されています
大きな愛で包まれています
失敗しても
ご迷惑をおかけしても
どんな時でも
愛されています
.。*゚+.*.。.。*゚+.*.。゚+..。*゚+
※聴くだけ・読むだけ・聴きながら読む、
どちらでも短時間で楽しめます。
おはようございます。
山田ゆりです。
今回は
心のキーマン(ショートショート)
をお伝えいたします。
ビジネススーツにビジネスバックを持ったリョウコは会社の玄関のドアをノックした。
玄関を開けるとそこはワンフロアになっていた。
「本日、14時からの予定で面接に参りました〇〇と申します。」
リョウコは口角をあげいつもよりワントーン高めの声で相手に告げた。
受付の方に促されて椅子の方を見たら数人のリクルート姿が見えた。
ああ、私の前にまだこんなにいるのか。
皆さん、なんかできそうな感じ。
私大丈夫かな。
いや、大丈夫。
気張らずに、背伸びせず、誠実にお答えすればきっと私の良さは伝わるはず。
勧められた椅子に近づいた時、その2つ前の椅子に座っていた人が顔を上げた。
「あっ^^」
ミチヨだった。
そうだよな。
基本給が少し高くて職務内容からしてミチヨが応募してもおかしく無いよなとリョウコは納得した。
ミチヨはニッと笑い、リョウコも笑い返した。でも場所が場所だから何も話さなかった。
どうやら面接は予定よりかなり遅く進んでいるようだった。
ミチヨの番になり彼女はリョウコに軽く会釈をして面接室へ入って行った。
30分後、面接が終わったミチヨはニコニコしながらリョウコに小さく手を振りながら会社を出ていった。
リョウコは彼女にここは取られたなと思った。
仕事内容からして彼女は全てできる。だって前職の会計事務所の先輩だから。
ミチヨはご両親の介護のために会社を辞められた。
会社には特に不満はなかったがもう少し早く帰宅できる会社に勤めたいと言っていた。
それは良くわかる。
リョウコも同じ理由で最近、会社を辞めたから。
この辺の求人は一般事務の募集がほとんで、リョウコはそれが物足りなかった。
そして、たまたま見つけたこの求人は
一般的な事務から決算までする。
給料計算や年末調整もする。
社会保険などの手続きや建設業の各申請もする。
仕事内容が全てできる。
ワクワクしかない魅力的な求人だった。
だから、現在、一般事務として勤めているがこの会社に履歴書を送ったのだ。
この会社はミチヨに決まるかもしれない。
仕方ない。私は別を探そう。
面接が終わったらすぐハローワークに行ってみようとリョウコは思った。
面接が終わり会社を出たらミチヨが車から出てきた。
ああ、待ってくれていたんだ。
リョウコも話したかったから嬉しかった。
それから二人はそれぞれの車で移動して
かつて、私たちのたまり場だったあの喫茶店に入った。
ガラガラと音がするドアを開くと店内からは静かにジャズの音色が流れていた。
「おっ、いらっしゃい。いつものでいいかい?」
グラスを磨きながらマスターがミチヨに話しかけた。
二人はいつものコーヒーを飲み最近のことを話した。
リョウコは久しぶりに気の合う人と話しができていつもより饒舌になった。
今の職場はまだ入ったばかりと言うこともあり、会社では私語をほとんど言えない雰囲気だったから尚更だ。
会計事務所時代は本当に忙しかった。
特に確定申告の時期になると、毎日残業で、夕食は近くの中華料理屋さんにみんなで出かけそこで食べていた。
特に炒飯が美味しくて、家で待っている子どもたちへのお土産として買って帰り、玄関で出迎えた子どもたちは小躍りしていた。当時、保育園児だった長男は今年高校に進学した。
毎年1月から3月14日までは
夕食を自宅で食べられる日は3分の1くらいだった。
2月にもなると、駆け込みの顧問先様が多くなり、休日出勤が当たり前で、リョウコ達は一緒に戦う同志のようなものだった。
琥珀色の空気の中で、大きくなった子供の話や夫への愚痴、親の介護の大変さなどを話し、「同じ40代同志、頑張ろうね」と言って二人は分かれた。
その後、ミチヨがその会社に入社し、リョウコもほどなくして別の会社に就職できた。
お互いの親の通夜の席で顔を合わせ、その後も何度かあのマスターのお店で落ちあい愚痴や将来の夢などを語り合っている。
長い人生の中で、ずっと離れていたのにひょんなところで一緒になる。
再開した時は昨日も会っていたような近さを感じる。
ミチヨとリョウコはそういう仲だった。
離れていても心の奥底では繋がっている。
そんな人がこの世に一人か二人は居る。
それは配偶者だったり親だったりする。
ミチヨはリョウコにとって心のキーマンなのかもしれない。
今回は
心のキーマン(ショートショート)
をお伝えいたしました。
本日も、最後までお聴きくださり
ありがとうございました。
ちょっとした勇気が世界を変えます。
今日も素敵な一日をお過ごし下さい。
山田ゆりでした。
◆◆ アファメーション ◆◆
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