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【roots】老年期 《30章》新しいくらし

「良い旅で良かったな。帰りが早かったから何も手にして無かったら…って思っていたんだ。オスカーは賢いんだな。手にするのが早い」
とデイブは嬉しそうにオスカーを褒めた。
「デイブはいつだって褒めてくれるね。」
「友達2人とこれからもっと仲良くなれると良いな」デイブの言葉にオスカーは
「うん。縁を感じたんだ」と言った。
「素敵な言葉ね」とルビーがお茶を運んで来た。
「一度姿を消したのに、再び現れて、僕を助けてくれたんだ」とオスカーがルビーを目で追いながら言った。
「縁か。そうだね」デイブが優しく言うとオスカーが寂しそうに「もう会えない人もいるのかな。また会えるかな」「会えるさ」デイブがすぐに答えてくれた。
「アリソンを2人に会わせたい」オスカーの表情からどんな出会いだったのかが伺える。
「会いたい人がいれば頑張れるわ。良かった。本当に良い旅で」デイブの脚の上にルビーがポンと手を置いた。
「デイブは辛い旅だものね」とオスカーが言うと
「大したことはないよ。こっちに来てからの方が大変だった」そう言うデイブの手をルビーがさすった。オスカーは気付いて「やけど…」
「あぁ、大したことはない」とデイブは微笑んでルビーの手をさすって返した。
「かっこよかったのよ!皆んなのヒーロー、ね!」とルビーがはやしたてた。
「違うよ。僕のせいで沢山の人を危険な目に合わせた。色々な人たちを巻き込んでね」と珍しく沈んだ声で言った。
「思い出させて…ごめんよ」オスカーの気にしている様子にデイブは「人生たったの1日の事だよ。あとは幸せにやってる」と微笑んで返した。

トントンと階段からシャーロットが降りて来た。
「眠れなかった?」オスカーが聞くと、シャーロットはコクリとうなづいた。
「座って」とルビーがそばまで行ってオスカーの隣りに座らせてくれた。
「オスカーに沢山のヒントをくれたんだね。ありがとう」とデイブが言うと
「デイブはオスカーのおじいさんですか?」
とシャーロットが聞いた。
「違うんだ。僕が伝説のデイビッドに会いたくて訪ねて…住まわせてもらってる」と急いでオスカーが説明した。「伝説?」
「僕がさっきまでしていた旅の、もっともっと長い冒険を成し遂げた人なんだ。本も出してて。それを読んだんだ」シャーロットは腑に落ちない様子で「本を…そうなの…」と呟いた。
「君は白い猫だったでしょ。ルビーは白い花だった。それは綺麗な花の妖精だったんだって」
とオスカーは続けた。
「その話はすごく長くなるんだけど」とデイブがルビーを見て笑った。「ゆっくり教えてあげるわ」とルビーが体を乗り出し優しく言うと。
シャーロットも少しホッとして微笑んで「家族かと思ったわ。ものすごく仲良しだから」と言った。
「家族だよ。シャーロットも今日からそう思ってくれたら嬉しい」とデイブが言った。
「ありがとうございます」

「ねぇ、誰かと一緒の方が眠れるならオスカーと同じお部屋にしましょうか?」とルビーが言うとオスカーが「え?いや…そんな…」とドギマギした。その様子にデイブとルビー、シャーロットは笑って。
「大丈夫です。3人のお仲間に入りたくて起きて来たの」とシャーロットが言った。ルビーが
「遠慮しないで何でも言ってね。私が一緒に寝てあげたいんだけど…寝相があんまり良くないの」と恥ずかしそうに言って、デイブが吹き出した。
「2人はとっても仲が良いんだ」とオスカーが嬉しそうに言うと「素敵ね」とシャーロットも微笑んだ。
「本当に1人で大丈夫?今日くらいは一緒に…」
「ありがとう、大丈夫よ」オスカーは本当は大丈夫そうじゃない。そう感じて。
「僕、今日ここで寝るよ。いつでも降りて来て。話し合い手になるから」と言った。
「名案だな!ここに布団を敷こう」とデイブがすぐに話に乗ってくれた。
「ありがとうございます」
シャーロットはオスカーの事もよく知らないのにココへついて来て。不安でいっぱいだった。
優しい人たちに囲まれて、少しずつ進めるのかなとやっと希望を感じられた。

今日のルビーのスープは本当に絶品だった。
心も体も芯まで温まった。
「美味い!本当に美味しいよ!」オスカーの心底から溢れている喜びにデイブは涙ぐんで
「良かったなルビー。オスカーが無事で」と言葉を詰まらせた。ルビーは急いで
「デイビッド、あなたが泣いたらオスカーが困るじゃないの!」とエプロンで涙を拭いてあげた。
「もう、本当にいつまでも6才なんだから…」
と言うルビーにシャーロットがクスクスと笑った。
「ルビーは出会った時からデイブを6才って言ってるんだってさ」とオスカーが説明すると
「良いわね。6才って」と微笑んだ。

食事の片付けを手伝ってから、オスカーはテラスに出た。この眺めが1番だなと風に当たりながら考えていた。
シャーロットが少し離れて横に立った。
「大丈夫?疲れたろ?知らない人ばかりの中で。僕が連れて来てしまったから…」オスカーが切り出すとシャーロットは真剣な面持ちで
「オスカーが…本当に来てくれたから。どこまでも一緒に行くんだろうなって…思ってた」と答えた。
オスカーは気付いているの?
デイブにとってのルビーのように。
オスカーのシャーロットだと言う事をわかっているのだろうか。シャーロットは言葉を飲み込んで「デイブもルビーも大好きになったわ」と言った。「良かった」オスカーは嬉しそうにシャーロットを見た。
「オスカーも」
付け加えてくれたシャーロットの言葉に
「良いよ。ゆっくりで。僕の事はゆっくりで良いんだ」と遠くを見たまま言った。声は嬉しそうに聞こえた。
「うん」シャーロットは少しホッとした、オスカーは誠実な人だと思えたから。

「お風呂に入りなさーい!」とルビーか家の中から叫んでる。ふたりでクスっと笑って。
「シャーロット行っておいで」とオスカーが言うと「じゃ、先に行くね」とシャーロットは小さく手を振って中に入って行った。

夜風が本当に気持ち良い。空気も美味しい。
生まれた土地では無いけれど。親も無く1人で生きてきたオスカーにはここが故郷だと心から思えた。
あぁ、帰って来られた!!
デイブとルビーを心から父と母だと思った。
2人の元に帰って来れた事が幸せだと全身で感じていた。
数時間前の体験が自分に与えた大切な気付きを噛みしめた。
ここで畑をして。
自分で作ったもので。恩返しが出来るような料理をして。2人を大切にしたい。親孝行をしたい。
そう強く誓った。

「オスカー布団なんだけど」とデイブが声を掛けた。「今、行くよ!」オスカーは、弾んで家の中に入って行った。

to be continue…

今日もワクワクとドキドキと喜びと幸せを🍀



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