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【roots】少年期 《一章》気づく

【roots】少年期
《一章》気づく
ここを進んだらまずライオンがいる。
思い出してみると、大人しいライオンだった。
この廊下の先に何があるのか知っているみたいだった。
今度はちゃんとライオンと話して、この廊下の事を聞いてみよう。
自分で決めて歩くのだから、知らなければいけない。
ちゃんと見て行こう。
そう強く思って、一歩、一歩進むとライオンが見えて来た。

よし!と心に決めて近づいた。
「またきたのか?」とライオンから声をかけてくれた。
「こんにちは。ライオンさん、知りたいことがあるんだ」と出来るだけ元気に言ってみた。
「何かな?わかる事なら答えるよ」とライオンは穏やかに答えた。
「この廊下の先に何があるの?」
それを聞くとライオンは立ち上がって
「それは、君次第だよ」と答えた。
「行き先が決まってないって事?」
「そうだね。そうとも言うね」
ライオンは優しく次々と答えてくれた。
僕は気持ちが楽になって明るく
「僕が行きたいと思う所に行くの?」と聞いた。ライオンは少し重たく
「そんな簡単なわけないさ。だって戻って来たじゃないか」と言って小さく笑った。
「僕がちゃんと見てないからって」
と口ごもると。
「進むたびに自分をどうしたいのか、大切なことは何なのかを1つ1つ手にして行けと言う事なのさ」
「大切なこと…」
「今ここでは、何を手にしたのかわかるかい?」ライオンに聞かれて、
そっと立髪に手を伸ばすと気持ち良さそうに目を閉じて撫でる事を許してくれた。
僕はそこから伝わる事を口に出してみた。
「勇気…決意…」
ライオンは僕を見つめて嬉しそうに微笑むと
「そう。ここは始まりの獅子門。歩く事は生きる事。手にするもので道は変わって行くんだよ。勇気を出して、決意を持って進んだその先にあるものをちゃんと見るんだ」と真剣に言った。
「俺を撫でる以上の恐怖に必ず出くわす。負けるか負けないか。どう生きたいか。何を知りたいか。意識を持って決断して行くんだ」
一息ついてゆっくりと続けた。

「一度目に来た君はどうだった?」
僕も自分の心の中を一生懸命のぞいて真剣に答えた。
「ただ、戸惑って。何故、何故と。思ってた」
ライオンはうんうんと聞いて。ゆっくり話し出した。
「人生とは新しいことの連続さ。怖くて恥ずかしくて嬉しくて悲しくて驚いてばかりだよ。何故かなんて誰かに聞いても判らないのさ。自分で見つけるしか答えはないんだから」
そうなのか…と僕は思いながら
「行き着いた所が思いも寄らない所ばかりで…」とボソボソと答えた。
「そう言うものさ。俺が今獅子門番をしている事と同じさ。思いも寄らない所に着いて、そこで何を知るのか。見るのかなんだ。面白がらなきゃ何も見えないんだよ」
「面白がる…」
「こうして出会っても話をしてみなくちゃ何にもわからなかっただろ?」
その言葉で僕はやっと目が覚めた気がして
「そうだね。ライオンさんが怖いって決めつけてた」と言うと
「物凄く避けてたもんな」と笑った。
「見ようとしなかったんだ。知れば怖く無いって知らなかったし」大きく息を吐いてから続けた。
「ありがとう。見つけに行って来るよ」行くために僕は再びここにいる。
「何を見つけたのか俺に見せに来てくれ。待ってるよ」優しい眼差しで僕を見つめて言ってくれた。
ライオンの首に手を回してハグをしてまた会う約束をした。
「俺はオーウェン。忘れるなよ」と名前を教えてくれた。
この廊下に来る前。
僕はまた会う約束をするような友達は1人もいなかった。そんな気がする。
振り向けば居てくれ人がいるって心強いんだね。
「オーウェン。行ってきます」
僕は自分の名前が思い出せない。

to be continue…

今日もワクワクとドキドキと喜びと幸せを🍀


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