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【roots】老年期 《25章》オスカーとオーウェン

オーウェンはリリーを連れて来てくれた。
これでオスカーに4人の友達ができた事になる
「オ、オスカーです」オスカーは下を向いて自己紹介をした。
「オーウェンです。こちらは妻のリリー」
オーウェンは至極優しく挨拶をしてくれたのだが見た目が大きくて怖そうな顔なので、オスカーは怖がっているみたいだ。
「オスカーは何才なの?」リリーが声を掛けた。
「16才です」
「デイブの最初の旅より少し年上だな」オーウェンが言うと、オスカーは下を向いたままだ。
「そんなに緊張しないで大丈夫だよ。君のおじいさんと話す気持ちで、何でも聞いてよ」とオーウェンが笑って言った。するとオスカーは
「ぼ、僕も、あの、あの廊下に行くことは出来ませんか?」と言った。
年寄り4人はびっくりした。
「え?オスカー、そうなの?」とデイブが言う。
オーウェンが「大変だぞ。わかってるのか?本は読んだのか?」と聞いた。
「読みました。全部、何度も」オスカーは落ち着いた声で答えた。
「見つける旅ならここでも出来る」とオーウェンが言うと。
「そういうんじゃなくて…」とオスカーが口籠った。「ここは平和だからな。でも、街が嫌でここに来たんだろ?」とオーウェンがきいた。
「イヤって言うか。そう言うのではなくて…」
オスカーは説明が難しい気持ちに当てはまる言葉を探して上手く話せない。
「何かを見つけたいんだよな。わかるよ。きっかけがほしいんだ。変わるきっかけがさ」とデイブが助け舟を出した。
「デイブと違って、勇気もあるし、泣き虫でもなさそうだ」とオーウェンが言うと
「泣くとか…笑うとか…楽しいとか悲しいとか…よく判らないんです。」オスカーが絞り出すように言った。
「それが言えるなら、チェイスとも戦えるな」とオーウェンが言うとオスカーは顔を上げて
「チェイスって…影の?」と聞いた。
「今、心の影と戦っているって事だろ?自分が変わりたいなら、心を動かす事をしなくちゃダメだ。見るんだよ。心でね。デイブも最初は出来なかったな」オーウェンがデイブを見た。
「そうだった。楽しむ方法もわからなくて、恥ずかしがってばかりでね」と言うとオーウェンが
「その時俺が言ったんだ。人生は怖くて恥ずかしくて嬉しくて悲しくて驚いてばかりだよ。それを見つけるんだよってね」と言って「オスカーにも贈るよ」と微笑んだ。
「は、はい!ありがとうございます」
オーウェンはガハハハと笑って
「デイブにも最初避けられてたよ。ライオンは怖いから近寄りたくないってさ。」と言った。
デイブはすかさず「近づいたら怖くないって事もわかるんだ。側で見てみないと何もわからないんだよ」と言った。
「本当に…?」オスカーはモジモジてしていた。
オーウェンがオスカーの頭に手をおいて優しくくしゃっと頭を撫でた。
「オーウェン、怖くないだろ?」デイブの問いにオスカーは「まだ…少し…」とすまなそうに答えた。
正直だなとデイブとオーウェンは大笑いして
「正直が1番だ。いいぞオスカー!」
「廊下は少し危険があって行かせられないけど、一日だけなら新しい自分を見れる方法はある」とオーウェンが言った。
「本当ですか?行きたいです!」とオスカーは顔を上げて力強く言った。
「そんなのがあるの?」デイブが聞くと
「24時間だから、どれだけ自分に見る意志があるか。知ろうとする決意があるかで旅が変わるけどね」とオーウェンが答えた。続けて
「怖いことも、騙される事もあるかもしれない。
自分を知るためには辛い事も受け入れる覚悟はあるか?」とオスカーに聞いた。
「少し…考えても…いいですか?」
「もちろんさ。オスカーは正直で真っ直ぐだな。人に返事をする時に誠実である事は素晴らしい事だよ。こうした大切な事は特にね」とオーウェンは言ってまた頭をくしゃっと撫でた。
オスカーはこくりとうなづいて。大きな手を見上げた。
「そうだ。そうやって見なくちゃダメだ。心と目で判断するんだよ。ゆっくりで良い。デイブが側にいてくれるんだ。色々教わってから行くと良い」オーウェンの言葉にオスカーは真っ直ぐ見つめてうなづいた。オーウェンは優しくニッコリと微笑むともう一度くしゃっと頭を撫でた。
ルビーとリリーがもう良いかしら?と話の中に入ってきた。
「リリーが焼いてくれたクッキー。すごく美味しいのよ」とルビーが言うとオスカーはすぐに口に運んだ。「美味しい!」大きな声が出た。
年寄り4人は嬉しそうにオスカーを見て
「良かった。沢山食べてね」とリリーが嬉しそうに言った。
ルビーは、もしかしたらオスカーは料理に興味があるのかしら?と思って、何か出来ないかなと考えていた。

to be continue…

今日もワクワクとドキドキと喜びと幸せを🍀

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