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【roots】青年期 《18章》心の中に

水を持ってルビーがやって来た。
「あ、えっと、あ、カフェ・オ・レと。あ、お、おすすめありますか?」
僕は焦ってシドロモドロだ。
ルビー笑って自家製のハムサンドをすすめてくれた。
「じ、じゃあ、それを」
「はい、少しお待ち下さい」と笑顔で去っていった。ダメだ!勇気が出ない!頭を抱えてテーブルにうつ伏せてるとカフェ・オ・レの香りがしてルビーが立っていた。
急いで体を起こして、テーブルを腕でワサワサ拭いた。ルビーは微笑んでカフェ・オ・レをテーブルに置いた。
「上に住んでいらっしゃるんですか?」
「ひえ?」ルビーに声をかけられて、とんでもない声が出た。ルビーはますます笑って
「手ぶらだから」と言った。
「そ、そうなんです。昨日。昨日越して来て。」
僕は立ち上がって
「デイビッドです。待たせて…すごく。ごめんなさい」と頭を下げた。
ルビーは目をまん丸にして僕を見た。
「デイビッド、私が誰だか判るの?」
「ルビー…だよね。待たせて本当に。」
僕は不覚にも涙が溢れて来て言葉に詰まった。ルビーは穏やかに
「もう会えないって思ってた。来てくれて、でも私だって判らないだろうって思ってたから」と言った。
そりゃそうだよな。何ヶ月経ってるんだよ…
ルビーが優しく腕をさすってくれる
「僕が、僕のせいで…ごめんよ」
ルビーが厨房に呼ばれた。
僕は運ばれて来たハムサンドを持ち帰りにしてもらい。部屋番号を伝えて店を出た。
僕は何を話したら良いかなんて全くわからなかった。でも、ルビーと話さなければいけないと。
それだけ。不安でいっぱい。
でも知ってもらえるように。
僕の悪い所も全部。正直に話そう。
出来ることはそれだけだと思った。
夕方チャイムが鳴った。
ドアを開けると、はにかんだルビーが立っていた。

「いらっしゃい」
「お邪魔します」
段ボールだらけの部屋に招き入れた。
ダイニングテーブルに向かい合わせで座った。ルビーがコーヒーをテイクアウトして来てくれていた。
「何から話そうかな」と僕が言うと
ルビーが真っ直ぐな瞳で僕を見て優しい声で「来てくれてありがとう」と言った。
その声の優しい音に僕は声が出なくなった。
「1回目に会った時、意地悪に帰したから花園に来てくれないんだなって思っていたの」
僕は意を決して喉から音を出した
「い、行ったけど…でも君まで辿り着けなかったんだ」
「あの子が騙したの。私に会えなくしたのね」
ルビーは1人でいる間、僕を理解しようとしてくれていた。
「湖が溢れてびっくりしたろう?花園にいたの?怪我しなかった?」と僕が言うと
「デイブはやっぱり清らかな君だって安心したわ。本当よ。少し寂しかっただけ」
平気そうに話すけど、悲しい思いをさせた。間違いなく。
「ミアと、ルビーだと思って数ヶ月一緒に暮らしたけど。何故か深く近づくことが出来なくて。
それに、最初の1か月はチェイスに騙されて…色々あって生活も落ちつかなくて…」ルビーは優しい瞳でうなづいて聞いてくれる。
「言い訳だね」僕はコーヒーに目を落とした。
「私の事は、なぜ判ったの?」
「ミアが罪の意識からかな…前にエイデンと湖に入ってエイデンを行方不明にした事があると言い出したんだ。それでエイデンを探す内にルビーが違うんじゃないかって。オーウェンが調べてくれて…彼女はルビーじゃなくてミアだって判ったんだ」
「そう、ここにはどうして?」
「わからない。とにかくすぐに引越しをって。一階がカフェなのが気に入って」
「偶然なの?」
「そうだよ。オーウェンがルビーは探さなくても必ず会えるから大丈夫だって言ってくれて。その通りになったよ」
「オーウェンたら」
ルビーは嬉しそうに微笑んだ。
「ルビーはどうしていたの?」
「花園が水に包まれて。ここに辿り着いて。カフェで働いて。デイブを待ってた。それだけよ」
とニッコリ。
「楽しくしていた?」
「えぇ、みんな良い人だもの。あなたの旅に悪い人はいないわ。チェイスくらいよ」と言ってくれた。
「ありがとう。…チェイス…また来るかもしれない」
「デイブの清さを濁しに来るの。試しに来るのよ。執拗にね」
「僕、負けないでいられるかな…」不安そうな僕に「この間はどうしたの?」と聞いた。
「危なかったよ。オーウェンが助けてくれて」
「あなたのナイトだもの。オーウェンはいつだって」ルビーに言われてその通りだと思った。
「なぜ騙されてしまうのか判らないけど…騙すよりずっと良いかな…」
「デイブらしいわ」とルビーが嬉しそうに言って目を細めて僕を見た。
「僕はルビーの何も知らない。これから知ってゆきたい。良いかな?また会ってもらえませんか?」と立ち上がって頭を下げた。
「イヤって言うと思うの?」と下げた僕の頭をぽんと叩いた。
顔を上げるとルビーは泣いていた。

to be continue…

今日もワクワクとドキドキと喜びと幸せを🍀

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