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【roots】老年期 《26章》大切なもの2

昨日の続きから

「強いって何だと思う?」デイブがオスカーに聞いた。オスカーは黙ってしまった。
「僕は決して力も強くないし、体も大きくない」とデイブが言うとオスカーはうなづいた。
「口も乱暴じゃないし、人相も怖くない」
オスカーはうなづきながらニッコリ笑った。
「僕には友達がいて、大切な人を守りたいと思う気持ちが強かったんだ」デイブは続けて
「そして、自分が清らかな者だって事を失いたく無かった。ここまでの旅で感じた事、手にした事を失わない方法を探したんだ。自分の中にある智恵だって気づいたんだ。でも、結局準備して動いてくれたのは全部友達だからね。ディランが言ってくれたんだ。友達が助けてくれるのは自分の力だって。良い友達を持っているって事だよって。
自分だけじゃなくて、友達まで褒められてますます嬉しかったよ」
オスカーは最後の言葉に少し寂しくなって湖に目を向けた。
「オスカー。もしかして、僕には友達はいないと思ったのかな?」ハッとしてデイブを見た。
「僕たちは確かに年寄りでオスカーと年は離れてるけど、オスカーの役に立てる友達だよ。少なくとも、もう4人。君には友達がいる。忘れるなよ」とデイブが言うと。オスカーはすかさず
「そうでした。ごめんなさい」と頭を下げた。
「良いんだ。こちらこそ、同じ年頃じゃなくて申し訳ない。でもね、ルビーからしたら僕は今でも6才らしいから。オスカーよりずっと年下だよ」
デイブがワハハと笑うとちょうどルビーが見えた。「噂をしたらルビーだ」
「僕、皆さんが…すきです」オスカーがデイブを見て言った。「ありがとう。いつでも頼りにして」とデイブが答えるとルビーも2人を見つけて手を振っている。
「僕、行ってきます」オスカーが走ってルビーの元へ行き荷物を持った。ルビーは嬉しそうにオスカーにお願いしている。2人に孫がいたらこんな感じなのだろうかと、デイブはふと思う。
僕たちはいつ戻るかわからない旅だから子どもを持たなかった。オスカーが本当の家族の様でありがたいな。ルビーも笑顔が増えている。
「ルビーありがとう!オスカーありがとう。さぁお昼にしようか」とデイブも立ち上がり2人を迎えた。

お弁当を食べながら、ルビーが
「あら!珍しい。沢山釣れたのね」とバケツを覗いて言った。デイブはニコニコしてオスカーは申し訳なさそうに「僕が釣って…」と言った。
ルビーは嬉しそうに「上手なのね!デイブはからっきしなの。たまにしか釣れないのよ」と笑った。オスカーがデイブをチラッと見た。デイブはニッコリ笑うとオスカーも微笑んだ。

「このお肉美味しいですね」とオスカーが言うと
「嬉しいわ!今度一緒に作りましょうよ」とルビーが誘った。オスカーはパァッと顔が明るくなって「作ってみたいです!」と言った。
「今日のお魚も手伝ってくれる?」とルビーが言うとすぐに「はい!」と返事を返した。
「もう夕飯が楽しみなんて今日は贅沢だな」とデイブが嬉しそうに言うとルビーがちょっと意地悪に「デイブは食べる専門家だもんね。美味しそうに、嬉しそうに食べるのよ」と言って笑った。

「仲が良いんですね」とオスカーがしみじみと言った。
「大切な人だからね。ルビーは僕にとってたった1人の特別な人なんだ。オスカーにも見つけて欲しいよ。必ずいるんだ、この世のどこかにね」
とデイブが言うと。オスカーは
「すぐには見つからないかな…」と暗い声で言った。
「どうかな?見つけようと歩けば見つかると思うけど」とデイブが言うと「間違えたりもするけどね」とルビーが意地悪そうに言った。
「根に持ってるな?」デイブが笑うとルビーが
「.デイブはね、私に化けてた子にしばらく騙されてたの」とオスカーに告げ口した。
「そんなことあるんですか?」オスカーが驚くと「清らかな者はね、狙われるのよ」とルビー。
「そんなことは良いじゃない。ちゃんと違うってわかったんだからさ。」とデイブが話を終わらせ様とすると鼻をつまんで引っ張った。
オスカーは2人を見て笑うと「僕にも友達が出来た。大切な人がこうやって増えっていって、特別な人も…そんなこと本当にあるのかな」と言った。
ルビーはオスカーの前髪を少し掻き分けて目を見つけると「1日だけでは出来るかわからないけど。自分を見つめる事が出来たら、自信を持って人と接する事が出来るようになるわよ。自分が大切にしたい事が何なのかわかればね」と言った。
「僕が清らかさを大切にしたいと知ったようにか」とデイブがしみじみ言った。
「デイブはね美しいものが好きなの。見た目にも心も美しいものがね」それを聞いてオスカーは
「僕は何だろう…好きなものか」と小さく呟いた。「ゆっくり見つければ良いのよ」
「何だろうと思っていれば、色々と出会うものだよ。一つ一つ試して、感じて行けば良い」
「うん…」不安そうに返事をした。
「意志を持って生きることで自然に道が作られて行くんだよ。大丈夫さ」
「やってみます」オスカーは素直に返事をした。
*****
夕飯の魚料理もとっても美味しかった
魚とハーブ。白ワインで蒸して良い塩加減で箸が進んだ。

食後、片付けまで手伝ってくれたオスカーにルビーが一冊のノートを渡した。
「レシピノート?」
「そう、つけてみない?」
オスカーは嬉しそうにペラペラとページをめくった。絵を描く所、材料を書く所、と手順を書く所、など仕切りがあるノートだ。
「嬉しい。ありがとう!」
オスカーは早速熱心に書き始めた。
魚の絵に色付けしていると
「絵も上手いんだね」「字も綺麗よ」とデイブとルビーがニコニコと眺めた。
オスカーは2人が褒めてくれる事もレシピノートをつけている事も嬉しくてこの家に来て1番の笑顔を見せていた。
今までの料理も描きたいから毎日手伝いをすると宣言してルビーをますます喜ばせた。

to be continue…

今日もワクワクとドキドキと喜びと幸せを🍀

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