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【roots】老年期 《29章》旅で得た物

アリソンが食後にレモンティーを入れてくれた。
「やりたい事が見つかったなら、帰るのかい?」
オスカーは聞かれて
「もう少し、何か見つけたいなと思います。僕強くなりたいと思っていて」いつになくハキハキと答えた。
アリソンはすぐさま
「何言ってんの⁉︎オスカーは充分に強い子よ。真面目で優しい。それが一番強いってことなのよ」と言った。
「前にもそう言う人がいました」デイブを思い出して言った。
皆優しい。そして、強い。
「長く生きてる人の話は聞いとくもんよ」
「はい」オスカーは素直に返事をした。
「アリソンさんは、人と話すのが上手いですね。あの…何かコツとかあるんですか?」思い切って聞いてみた。
「話すのが苦手なの?」あら、びっくりといった様子で「全然気づかなかったわ」と言ってくれた。
「本当ですか?それなら、アリソンさんのおかげです」と照れると
「大丈夫よオスカー。心配するのは必要な事だけれど。でもね、し過ぎはダメよ。オスカーにはね嫌な雰囲気が無いの。それは素晴らしいの。皆にあるものじゃ無いのよ」と言われて頬が赤くなった。
「ありがとうございます」オスカーは立ち上がって頭を下げた。そしてそろそろ…と言うと
「小麦粉。荷物になるかしら?」とアリソンが言った。
「頂けるんですか?でも、僕。袋も何も持ってないんです」とオスカーが言うと、小さな斜め掛けの袋と瓶に詰めた小麦粉を持たせてくれた。
「また会いに来てね」アリソンがハグをしてくれた。「ありがとうございます」
オスカーはアリソンの温かさで。家で待つ2人を思い出していた。デイブたちに食べさせてあげたいお土産が出来た事が嬉しかった。

****
あと11時間。何が出来るだろうな。
大切な人に出会いたい。
猫とオースティンとアリソンさん。三人に会えた。4時間で三人は上出来だよな。
やりたい事も見えたし。
アリソンさんみたいに自分で作ったものを使って人を喜ばせる料理が作れたら最高だな。
「なるほど!素敵じゃないの」と下から声がした。「あぁ、猫さんどこにいたの?」
「ずーっといたわよ。あなたが見てないだけ」といたずらっぽく笑った。
「僕はオスカー。君は?」
「シャーロット。よろしくね」
「可愛い名前だ。ぴったりだよ」とオスカーが言うと「そんな事が言えるようになったのね!驚いた」と尻尾をふった。
「君に似合う名前だなって意味で…あの…」オスカーには変な意図は無かったので恥ずかしくなってしまった。シャーロットはジーッとオスカーを見て「ありがとう。嬉しいわって意味よ」とニッコリ笑った。
オスカーはシャーロットを抱き上げた。
「ふわふわだ」「何?何するの!?」
「話し声が遠いからさ。」
「ちょっと、失礼ね。小さいって言いたいの?」
言いながら言葉とは裏腹に嬉しそうにグルグルと喉を鳴らした。オスカーはシャーロットを撫でながら歩いて
「これからどうしようかな」と辺りを見回した。
「好きにしたら良いのよ。まだ時間もあるんだし」とシャーロットが言った。
「でもね、やりたい事もわかったし。自分が思うほどダメな奴じゃないって教えてもらって。この気持ちを早くデイブたちに話したいなと思うんだ」「大切な人がいるのね」
「シャーロットもオースティンもアリソンも大切だよ。シャーロットが最初にヒントをくれたからやりたい事が見つかったんだよ」オスカーはシャーロットを自分の顔の近くに寄せて頬をスリスリとした。シャーロットも嬉しそうに目を閉じた。
「それが自分を守る大切なものになるって。オースティンが教えてくれて。自分で育てて作ったもので料理する楽しみをアリソンに教えてもらったんだ」「素敵ね」
「都会は苦手だけど、畑を持って料理をするならデイブの森がちょうど良いんだ」
「そうなの」
「湖があって魚も釣れるし。僕釣り上手いんだ」
「すごいわね」
「料理上手な人が色々教えてくれるしね」
「いいわね」
「シャーロットも行こうよ!迷惑かな?」
シャーロットはびっくりして。目をまん丸にしてオスカーを見た。
「連れて行ってくれるの?」
「うん!皆優しくて良い人なんだよ」
シャーロットは明らかに戸惑っていて
「私は、ただの案内人のつもりだったから…」
そう言って可愛い白い手でオスカーの頬を抑えた。「ちょっと考えさせて」
「そうだよね、ごめん。勝手なこと言って…」
オスカーは急におしゃべりになった自分がいけなかった様な気がして。
だから、話は苦手だって。わかってたのに…と。
何となく気まずい雰囲気になってテクテクと黙って丘を越えて林に入った。

パン!パンパン!と銃声がした。
オスカーは「オースティン!!どこにいるの!僕だよ!!」とお腹の底から叫んだ。
「オスカー!」声がする!オスカーはシャーロットをそっとバッグにしまって走り出した。
「オースティン!!!!」
足から血を流して倒れていた。「オースティン!血が、大丈夫?」そこへ猟師がやって来た。
さっき見た猟師とは違う雰囲気だった。
「僕の鹿です!スカーフが、僕のスカーフがついているのに!何故撃ったんです⁉︎」とオスカーが怒ると「邪魔だどけ!!」と猟師は怒鳴った。
「どかない!僕の大切な友達だ!!」
「うるせぇ!こいつは怪我してる。もう死ぬだけだ」オスカーはオースティンにしがみついて必死に繰り返し叫んだ。
「死なせない!!帰れ!!」
「馬鹿が!次は仕留める。わかったな」
猟師は捨て台詞を吐いて居なくなった。
バッグからシャーロットがそっと出て辺りを見回した。
「大丈夫よ。もう行ったわ」
首に巻いたハンカチを足に結んで止血したかったが、いっこうに血は止まらない。
「オースティン、僕と一緒に。一緒に来てくれないかな?僕とデイブの森へ行こうよ。安全だから」オスカーは涙でぐちゃぐちゃになりながら頼んだ。
「ありがとう…オスカー…行くよ」
「本当かい?すぐ!すぐに行こう!!」
オスカーはシャーロットを見て「君はどうかな?」とお願い!行くと言ってと言わんばかりな顔で聞いた。
「私も良いの?」「もちろんだよ。来て欲しい」
シャーロットはうなづいてバッグに入った。

どうしたらいいのかな?帰り方を聞いてなかった。
「オーウェン!僕は今すぐ帰りたい!デイブ!!助けて!デイブ助けに来て!!」と林のなかで世界の果てまで届くような大声で叫んだ。
「オスカー!!」
振り向くとデイブとオーウェンが走って来ている。
「デイブ!?オーウェン?え?」オスカーは自分が呼んだのに信じられない。
「助けを呼べと言っただろ」とデイブは両手でオスカーの涙を拭いてくれた。
「可愛い子にカッコイイ友達か。やるなオスカー!すぐ行こう」オーウェンがオスカーとデイブの肩に手を置いて目を閉じてと言った。
言う通りにすると一瞬にして地下の部屋についた。

鹿だったオースティンは巻き毛の背の高い少年で。
白猫だったシャーロットはブロンドの背の小さな少女だった。2人ともオスカーと同じくらいの年頃。
オスカーは2人を見て驚いて声も出ずただ棒立ちで自分の呼吸だけが耳に聞こえていた。

to be continue…

今日もワクワクとドキドキと喜びと幸せを🍀



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