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【roots】老年期 《24章》また始まる

あれから月日は流れルビーとデイブは70才になっていた。
森での暮らしは穏やかで楽しく幸せなものだった。
デイブの書いた「少年期」「青年期」の本はそれぞれよく人々に読まれていた。

"弱虫で泣き虫な少年が自分を見つける旅をして。
もの静かな優しい人が実は1番強くて何もにも奪われない鎧になる時がある。"

“泣き虫でいい。濁らない清らかさが全てを洗い流す時が来る。かじりついて諦めずにしがみついて自分の正しさを忘れないで。それが自分を守る盾になる"

そんな所が評価された。

デイブに話が聞きたいと、同じように「道に迷う少年」が相談に来てくれて。しばらく森の家で過ごしたりした。
ルビーも我が子のように世話をしてくれて、そんな時間が楽しく幸せだった。
****
ある日、そんな少年が一人でやって来た。
名前はオスカー。16才。
無口で静かな子だ。生い立ちが複雑そうだった。デイブは無理して話しかけない。
テラスで外を眺めながらコーヒーを飲んでいるとオスカーもテラスにやって来た。
「ここに座ったらいい」とデイブが隣の椅子をトントンたたいた。
オスカーは静かに座った。
「僕の本は読んだかい?」とデイブが聞くと
オスカーはうなづいた。
「好きな章はあるかい?」
「5章です」小さな声だった。
「僕も5章が好きだよ。ディランとの時間は忘れられないよ」と答えると。
「あの話は本当なんですか?」と聞いてきた。
「本当だと言えば本当。物語だと言われれば夢かもしれない。遠い昔なんでね」と微笑んで答えた。
「僕は…あんな。あんな思いをしたことがありません」無感情な声で小さく言った。
「みんなそうだと思うよ。だから本にしたんだ。何かのヒントになったらと思ってね」デイブが言うと「僕は、楽しいも美しいもわからない」と悲しそうに言った。オスカーは初めて人に感情を伝えた。デイブはそれがよくわかり小さな光を嬉しく感じた。
「僕もね。そんな子供だったんだ。でもオスカーはここまで来てくれた。勇気があるし。僕とは違うよ」
「僕、変わりたいんです」下を向いたまま言った。
「わかってる。一緒に見つけられると良いな。焦らずのんびり。時間はいっぱいあるからね。まずは自分のしたい様に。今日を後悔しないように過ごしてごらん。話したければいつでも相手になるよ。僕の友人もみんな同じ気持ちさ。オスカーは僕の大切な友達だからね」デイブは優しく言った。

「友…達?」オスカーはびっくりして聞き返した。
「そうだよ。友達。だから見つけたものを話してくれると嬉しい。楽しみにしてるよ」デイブが言うと
「ありがとう」少し顔を上げて温かく温度を感じるお礼を言った。
「オーウェンを紹介したいな。きっと良い友達になるよ」
ルビーがオスカーにお茶を持ってテラスに来た。
「あ、ありがとうございます」ルビーはニッコリ笑ってすぐ部屋に入った。ルビーの背を見送ると
「あの…。オーウェンってライオンの?」とオスカーが聞いた。
デイブはシーっというポーズをとって
「そうだよ。すぐ近くに住んでるんだ。オスカーさえ良かったら明日にでも会わせるよ」と言った。
「あ、会いたいな」オスカーの顔が明るくなった。
「じゃあ決まりだ!」と笑いかけるとオスカーも微笑んだ。
*****
夕食を食べ終わるとオスカーはルビーの元へ行って「手伝います」と皿を洗い出した。
「ありがとう、食事は口に合う?」とルビーが聞くと「美味しいです。特に今日のスープ」と恥ずかしそうに言った。
「あら!嬉しい。おかわり沢山して良いのよ。遠慮しないで言ってね」
「はい」とルビーを見ずに黙々と皿を洗った。ルビーは
「助かるわ。並んで家事が出来るなんて嬉しいし」と声を弾ませて言うとオスカーは小さく微笑んだ。

to be continue…

今日もワクワクとドキドキと喜びと幸せを🍀

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