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【roots】老年期 《33章》チェイス2

昨日の続きから

デイビッドさん!!」警察に包囲されている中でデイブの中にチェイスが入って行った。
黒い煙がデイブの中にすっかり吸い込まれて行くと
立ち上がってニヤリと笑い、突然走り出した。
階段を駆け下り、病院の入り口に停めていたパトカーに乗り込んだ。警察はデイブに続いて駆け下りたが、どう手を出して良いのかわからない。
デイブは「出せ!」と運転手に怒鳴り車を走らせた。「滝だ!猛スピードで行け!!」
チェイスが「滝?」とデイブに聞いた。
「僕が邪魔だろ!僕を洗い流してチェイスだけにしてやるよ」とデイブが答えるとチェイスは興奮して口笛を吹き「300年の扉が開く!!早くしろ!!」と運転手を怒鳴りつけた。
森に着くと車は乗り捨て歩いて滝に向かった。
闇夜の中に月がうすぼんやりと浮かび、歩く道を照らす。
チェイスに気付かれないように家の近くを歩かないルートで無心で滝へと急いだ。

滝の流れは少なくなっていた。
チェイスを取り込んだせいだ。
それを見るなり
「ほぉー本当に俺に支配されるんだな!!」
チェイスは歓喜の声を上げた。
デイブはまだかすかに残る清らかな滝の下にズンズンと入って行った。
目を閉じて「僕は負けない。チェイスを滅ぼす事は悪じゃない!!」と叫んだ。
「な、何だって?」
「僕に弱さは無いんだ。何も怖くない。お前と心中するよ。僕はお前を僕から出さない。覚悟しろ!!」滝の強さが急に増してデイブの体を打ちつけた。
人生を閉じる時、ルビーがいなけれは繰り返す事は無い。ここでチェイスと終わりにすると決めていた。

みるみる湖の色が濁り始め、溢れた湖の水で周囲の草花が枯れ始めた。どんどんと湖の大きさが広がって枯れた草花も湖の中へと沈んで行った。
デイブも湖の中に飲み込まれて姿が見えなくなった。
駆けつけた警察官の照らすライトが虚しく湖を取り囲む。
数人の警察官が湖に入り、気を失ったデイブを救出した。湖の中に黒い煙がまるでビロードのマントの様に広がってゆらゆらとゆっくり沈んで行くのを何人もの警察官がただ眺めているしか出来なかった。

家にデイブが運ばれて来た。
「デイブ!!デイブ!!」ルビーが取り乱して叫び続けている。
オスカーはルビーを抱きしめて「デイブは戦って勝ったんだよ。きっと戻ってくる。大丈夫だよ」と言った。
「戦った⁈もしかして…チェイスと⁈知ってたの?どうして止めなかったの?」ルビーはしゃがみ込み泣き崩れた。
オスカーはかける言葉が出てこなかった。
オーウェンがやって来てルビーを支えてくれた。

デイブとルビーを寝室に寝かせてシャーロットに2人を任せた。

オーウェンとオスカーは警察の話を聞いた。
わざと挑発して自分の体に入り込ませて、多分心中するつもりで滝に入ったと。
本来実体のない影を警察官たちに見させて、信憑性まで確保して。計画性が高いと言われた。
オーウェンはデイブの無茶にため息をついて
「デイブが1人でカッコつける男だったのを忘れてたよ」と頭を抱えた。
オスカーはどんな事をしてでも止めるべきだったんだと後悔していた。
「3日、目を覚さなかったら。ルビーに閉じてもらおう」とオーウェンが言った。
「え⁈」
「デイブはそのつもりだと思う。警察に救出されるようにしたんだ…デイブの旅がここで終わると俺とリリーも消える。オスカー、覚悟しなさい。シャーロットを守ってしっかり生きる覚悟をするんだ」
「やだよ!!だってまだ何も!何もデイブにしてあげられてないんだ!!」オスカーは自分の不甲斐なさを怒りにしてオーウェンにぶつけた。
「オスカーを守ったんだ。オスカーの大切なオースティンとシャーロットを。この想いを無駄にしないでやってくれ」オーウェンに言われて事の重大さに気がついた。今自分の情け無さに怒っている場合じゃない。もう、そんな場合じゃないんだ。
「ごめん…ちゃんと考えるよ」
涙を袖で拭って答えた。
「頼んだぞ。俺も自分の周りを整理する。しばらくは来てやれないが。お前はデイブの息子だ。ここを任せて大丈夫だな」と肩に置かれた手が重く感じた。
「しっかり、デイブとルビーを守るよ」まだ涙目のオスカーはオーウェンを見て言った。
ポンポンと肩を叩いてオーウェンは帰って行った。

オスカーは寝室に戻り、デイブの手を握った。温かい。白々と夜が明けて来た。あと3日。
デイブ僕は信じて待つよ。
帰って来て!強く、強く願った。

to be continue…

今日もワクワクとドキドキと喜びと幸せを🍀

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