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【roots】青年期 《18章》心の中に・2

「決まりで、私を妻にしないといけないと思っているんだろうけど。好きになろうとしないで。ちゃんと私を見ることが出来る?」と心細そうに言った。
「昨日、ルビーを見た時に。どうしようもなく胸が苦しくなって、ドキドキが止まらなくて。僕は君を探してたんだって判ったんだよ」
僕は僕の中の精一杯の本当をルビーに聞いてもらおうと必死に言葉を繰り出して頑張った。
「ルビーも。僕が君へ辿り着けずに今日まで待たせてしまって。こんな僕で。それでも良いのか考えてみて」と真っ直ぐルビーを見た。
「手、両手を出して。繋いで」とルビーがテーブルの上に両腕を伸ばした。僕はその手を握り返すと頭の中に映画のように今までの映像が早送りで映し出された。目をパチクリさせる僕とは対照的にルビーは目を閉じてうなづいている。
全てが今に繋がるとルビーは目をゆっくりと開いて「私に嘘をついてないって。真実を話してくれたって判ったわ。手を繋ぐ前にデイブの口から全てを聞く事が出来たから。私は大丈夫」
凄い!ルビーには嘘が通用しない。こんな力があるのか…。
「初めて会った時、私が言ったの覚えてる?見ようとしなければ、いつまでも何も見えない。ちゃんと見る努力をしなさいって」
「うん。見てる。だからこの現実をちゃんと見てるよ」まだ驚いている僕を笑って
「理想と現実は違うのよ」とルビーが言った。
僕と違って大人に見えた。拙い言葉では伝わらないのかと思わず、座るルビーの横にひざまづいて両手を取った。この感情はミアには湧かなかったものだと感じていた。
ルビーが優しく見下ろしている。まだ伝わらないかなと僕はルビーを抱きしめた。
ルビーが背中をぽんぽんと叩きながら「デイブにしたら随分と大胆でドキドキするわ」と言った。
僕は背中いっぱいドキドキで破裂しそうになって真っ赤になって体を離した。
ルビーは手を伸ばして僕の手を自分の頬に当てて目を閉じた。
僕はルビーから愛おしさが溢れて来るのを感じてまたひざまづき。もう片方の手もルビーの反対の頬に当てた。僕からの溢れる愛おしさもルビーに受け取って欲しかった。
これが愛情だと。確信した。
今日初めて話した女性だとは思えない結びつきを感じた。
温かい。心の中に温かなものが流れ込み涙が溢れてきた。
ルビーが僕がポロポロと涙をこぼしているのに気がついて。手で拭いてくれた。
「弱虫なのは変わらないのね」
赤ん坊のようにただ泣くしか出来ない僕をルビーは椅子から降りて嬉しそうに寄り添ってくれた。
「私よりずっと心細かったのね。もう私がいるから大丈夫よ」と背中をさすってくれた。
「デイブ、ここに一緒にいてもいい?」
ルビーの言葉が耳に入ると、ますます涙が堪えきれず声を出してわぁわぁと泣いた。
温かくてたまらなくて涙が出るんだ。

僕の頭の中を色々な感情が駆け巡る。
僕は変われるのかな。
ついこの間まで、怖がりで弱虫で。
部屋から一歩も出ずに誰とも関わらずに生きていた。どこかで温かいものが待っていると思いもせずに。
見向きもせずただ。
心を殺して時間だけをやり過ごして生きていたんだ。
それがある日。
夢か現実かわからない事が起きて。
僕は廊下にいて。旅が始まった。
友達を作って、心の中に沢山の感情をためてゆく旅をした。
自分とはずっと遠くに離れてあった本当の愛を今感じてる。信頼できる感情の繋がりを確信してる。生きるって愛を見つける事だと思えた。

「ルビー、会いたかったよ」泣きじゃくりやっと伝えた言葉にルビーは優しく抱きしめて「ありがとう」と言ってくれた。
散々泣いて、僕は落ち着いて来た。
情け無い僕も愛おしく思ってもらえる安心感にホッと出来た。
「ルビー、今どこに住んでるの?」
ルビーはクスクスと笑って右の壁を指差した。
「え?」
「お隣よ」
僕は引越しの挨拶に行ってない事に気がついた。
「だから、引越ししなくてもいつでも会えるの」
僕はルビーをチラッと見て俯き
「でも、今日は帰らないで。ここにいてくれない?」と言ってみた。
ルビーは僕の顔を覗き込んで笑うと
「そうね。そうするわ」と言ってくれた。
次の朝、目が覚めてルビーが隣にいる事で昨日の事が現実だったとしみじみ実感した。
オーウェンに報告しないとな。とルビーを眺めて思った。きっと心配しているはずだ。
*****
先に起きてコーヒーを沸かした。
コーヒーメーカーだけ引越して1番に出していた。
テーブルに頬杖をついて、寝ているルビーを眺めた。
もしかして息をしていないかもしれない!と心配になる程、美しい人。
この人がルビー。
ピピピピピピ…
アラームが鳴ってルビーが起きた。
「デイブ!!」
「どうした?」とそばに飛んで行くと
「いないから!夢かと思うじゃない!!」とベッドで大の字に足をバタバタさせて怒られた。ごめんと言うと
「コーヒー淹れられるのね」とすぐに機嫌は治った。良い香りがしているからね。
「でも、カフェの方が美味しいよ」と僕が言うと思い出したように
「あ、仕事!仕事いかなきゃ」と言った。
「デイブ仕事は?」
「僕は作家志望なんだ」
「ステキ。デイブの書く物語は優しいでしょうね」とニッコリ笑って引っ張って起こせ!とばかりに手を伸ばした。
僕が引っ張って起こすとぴょんと跳ねて、ベッドから降りると「読むの楽しみ!じゃあ、また後でね!」とヒラリと飛んで隣へ帰って行った。
あまりの軽やかさに呆気にとられて、掴んでいた僕の手がそのままの形で宙に浮いたままだった。
それにフッと笑って。
オーウェンに電話した。
「おはよう、オーウェン!」

to be continue…

今日もワクワクとドキドキと喜びと幸せを🍀

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