#14 ほうちこっか
日本は法治国家である。
それは、この国でいきる誰しもが知っていることだ。
突然なんなんだ、という感じではあるが、まあしばしお付き合いを。
このWikipediaを検索してみて、この考えの前提が「性悪説」だったというのは正直驚きではあったが、そこはまあ、別のはなし。
なにはともあれわたしは、以前の記事でお話しした金銭トラブルをうけ、この法とやらを頼りに、相手に対し法的手続きにより取り立てを試みた。
はじめてのおつかいならぬ、はじめてのさいばん。
今回はその詳細と結果について話してみたい。
お金を貸して泣き寝入りしているかたがいれば、ぜひ参考にしてほしい。
まず最初に行ったのが、支払督促。
簡易裁判所に申し立てを行い、書類を提出。
債権(お金を貸したこと)が立証されれば、裁判所から債務者(お金を借りたひと)に正式な文書として「早く返しなさい」という通知がいく仕組みだ。
相手の住所がはっきり分かっていれば、だれでもできる作業となる。
相手に文書が届き、その後相手から異議申し立てがあれば簡易裁判、なければそのまま強制執行の手続きに移れる。
月猫の場合、異議申し立てがなく、そのまま強制執行のフェーズに移った。
強制執行とはつまり、相手の財産を有無をいわせず差し押さえるという、一見最強の権利といえる。
相手が働いていればその給料を、家や車があればその動産を、預金があれば銀行口座を。ありとあらゆるものを押さえられる。その権利を持っているわけだ。
だが問題がひとつ。
「相手がどこで働き、どんな資産を持っているか」を調べるのは自分自身であるということ。
当然、お金を貸すくらいの相手なので、潤沢な資産を持っているはずもなく、また、あったとしても預かり知るところではない。
わたしはてっきり、裁判所が調査してくれるものとばかり思っていたが、そうではなかった。
わたしは債権が決定してから、ここで相当苦しむことになる。
お金を盗られてないから裁判を起こしているので、弁護士などやとっていられないし、そもそも弁護士に依頼したとて調査してくれるはずもない。
探偵事務所も脳裏によぎったが、出張費など、とてもじゃないが払える額ではない。
そんな時、あきらめ半分でネットサーフィンをしていると、ひとつ手があることが分かった。
「財産開示請求」、これだ。
支払督促が確定済であれば、今度は相手に自分の持っている資産をゲロしなさいという、「財産開示請求」なるものを実施することができる。
ここまでくると、簡易裁判所ではなく、地方裁判所に訴えを起こすことになる。
基本の流れは支払督促と同じ。
今度は最高裁判所のホームページにひな形が転がっているので、それをもとに資料を作成、あとは提出先の地方裁判所に電話や実際に足を運んで添削してもらうのがおすすめだ。
ちなみに簡易裁判所より地方裁判所のほうが丁寧に教えてもらえる。
というのも、こういった資料作り、通常は弁護士が行うことが多いようで、個人でする人は非常に珍しいらしく、貴重な存在として暖かく見守っていただけるのだ。
この財産開示請求をするにあたり、クリアしている必要がある点がある。
まず、この財産開示請求というのは、「強制執行するための債務者の資産をとことん調べたけれど、なにも出てこなかったんです」という大義名分が必要。
その名分を掲げるにあたり、すべきことは大きく二つ。
1.相手の預金を公的に調べる
2.相手の住所の不動産登記状況について調べる
1については、債務者が以前話していた「ここの銀行に貯金しててさ」という言葉にあたりをつけて、銀行に調査を依頼するということ。
銀行に調査という行為自体は、債権者であれば依頼は可能だが、実際の調査は弁護士資格が必要となる。
そのため、月猫もこの部分だけ弁護士先生に依頼した。
1口座あたり1万円程度でお願いできた。
2については、近くの法務局にいけば、調べることが可能。
土地と建物それぞれ調べて、月猫の場合4千円ほどだったか。
それらを調べて「強制執行にあたれる資産なし」との判断ができれば、その旨も資料に書き込めば、最低限、財産開示請求を申し立てる要件を満たす。
資料は一見ややこしいが、裁判所に相談を少しするくらいで、月猫はひとりで実施できた。
わたしの場合、もはやお金を取り返すことは現実味がない(相手は嘘ばかり言っていて、実際は無職で貯金もない)状態だった。
なぜこの財産開示請求の手続きに進んだかというと。
そう、この財産開示請求、裁判所に債務者を呼び出してその場ですべての財産を洗いざらい話してもらうシステムなのだが。
嘘を言ったり、そもそも出廷しなければ、その時点で「刑事罰」に問うことができるのだ。
一円も戻らないならば、せめて社会的制裁を相手に与えたい。
その思いで、わたしは訴えを起こした。
そして、迎えたはじめての裁判。
2時間かけて相手方の裁判所まで行ったわけだが。
相手は結局、姿を見せることはなかった。
わたしのイメージしていた裁判とは違い、応接室の一室を使って、裁判官と書記官とわたしの3人。
相手が時間になっても来ないのを確認すると、裁判官は、
「これで申し立てを終了しますか。それとも再度日にちを設定して呼び出しをかけますか」
ときいてきた。
わたしは刑事罰への移行を希望だったため、その場で終了を判断。
裁判官は正味5分もその場にいなかったくらいで、正直拍子抜けした。
ともあれ、裁判官が退出後、書記官の方が今後の流れなどを詳しく教えてくれた。
この次は警察署に「告訴状を出す」という動きになるわけだが。
お金を詐欺られた、窃盗されただけだととりあってくれなかった警察も、「財産開示請求に出廷しなかった」という状況であれば、民事法違反で確実に動いてくれるとのことだった。
告訴状の書き方テンプレは、ネットをググるとちゃんと出てくる。
というわけで、ここからわたしはこの告訴を行うべく動いていく。
また動きがあれば、記事として出してみたい。
今回の一連の金銭トラブルで月猫は思う。
日本は法治国家といわれているが、いくらでもその抜け道は用意されていて、結局は被害者側が損をみるということ。
もちろん、お金を貸すという行為自体、しないほうがいいのはわかっているが、「どうしようもなくて貸すしかなかった」ということは、経験のある方であれば同意いただけることだろう。
ともあれ、「債権」が認められれば、確かに10年間強制執行の権利は発生する。
でも、ないものの差し押さえはできない。
であれば、働かず貯金もせず、うまく相手をだましてお金を搾り取れる人が、結局は一番得をするということではないか。
法治国家を名乗るのであれば、債務者を探し出して強制労働させて、その給料を債権者に流すとか、そこまでの強制力がなければ、表面上の法をうたっているだけで、実現力などなにもない。
そう、このままでは日本は「放置国家」だ。
悪者には必ず報いがあってしかるべき。
法があるようで実際は機能していない現実をもっと問題視して、カイゼンを図るべきだと強く思う。
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