また小泉八雲の『怪談』の話なのだが、耳なし芳一とムジナに続いて、今度は『ろくろ首』だ。
思えば、あんまりこの話の詳しい内容を知らない。
「女の首が伸びるアレ」みたいなイメージしか浮かばないのだ。
では、怪談での『ロクロ・クビ』の内容を見ていこう。
(この話、長いぞ……!?)
【旅の僧クヮイリョーと山中の小屋】
もはやゴブリンは定番なのでツッコまないが、山中の小屋で遭遇したのは、まさかの「首のない体」であった。
そう、「ろくろ首」といえば首が伸びるものを想像しがちだが、どうやら「ろくろ首」には色々とバリエーションがあるらしい。
・首が伸びまくる
・首が体から分離して飛び回る
・首から分離するけど細い糸みたいなものでつながっている
このうち、「怪談」で語られているろくろ首は、首が体から分離して自由に動くパターンというわけである。
さて、いったいクヮイリョーはどうするのだろうか……!?
【ロクロ・クビとの戦い】
この僧侶、武闘派すぎる……。
そう、クヮイリョーの元サムライだった設定がここで生きてくるのだ。
サムライなら妖怪とか自分で倒しちゃうのである。
しかしこの部分、完全に精神状態がサムライ時代に戻っている。
殺生を禁ずる僧侶とは思えない暴力描写もそうだが、戦闘の後に小屋に向かっている時点で、逃げたロクロ・クビを全員始末しようとしているとしか思えない。
そして死んだ頭を見て「よいミヤゲができたわ!!」である。
(やはりサムライから僧侶は無理があったのでは……?)
そして普通ならこれでお話が終わりになりそうなものだが、まさかのまだ話が続いちゃうのが「怪談」の「ロクロ・クビ」である。
次はまさかの裁判編!!
【突如始まる裁判編】
まさかの裁判編に突入したロクロ・クビ。
往来を生首晒しながら歩いたらそりゃ捕まるよ……。
そしてなぜか捕まったときに謎の黙秘をしていたクヮイリョー。
「いや喋れや」と思わず突っ込んでしまった自分だが、その後の裁判パートを見るに、喋っても無駄だった気はする。
クヮイリョー、なんだかもう完全にサムライ時代の精神状態に戻っている気がする。
きっと大通りを自慢気に歩いていたのも、敵将の首を見せびらかしているサムライの思考だったんじゃないだろうか。
戦闘描写を語るときに笑いだしたり等、やはり180度違う人生というのは、そう簡単には歩めないのかもしれない。
あと「剛胆」って言われるとつい嬉しくなっちゃう性質がありそうだ。
思えば最初にロクロ・クビの小屋についていったのも、剛胆って言われたからだった。
……だがそうなってしまうのも無理はない。
クヮイリョーは想像以上に名のしれた武人だったのである。
なにせ九州の武人なのに長野県の諏訪の人が知ってるんだから。
ネットもない時代にこれは相当だ。
……まあでも大名から褒美も貰ったし、
これでお話は終わ……らない!!
まさかのラストパートがあるのである。
【クヮイリョー、強盗に遭遇する】
まさかの強盗パートがラストである。
ろくろ首の頭の購入イベントに始まり、まさかのクヮイリョーが途中でフェードアウトするとは……。
そして最後には強盗がろくろ首の供養をして終わるという、読む前には予想もできなかった結末となった。
でも正直クヮイリョーよりこの強盗の方が僧侶適正は高いかもしれない。
(クヮイリョーは絶対供養なんてしない)
思えば序盤の「木こりの過去に対するクヮイリョーのセリフ」と、ラストの「強盗による供養」は、見事に悪人正機説に関する描写だ。
これはそういう教えを含んだ物語でもあったのかもしれない。
まあ教養のある人が読んだら他にも色々と深い感想が書けそうな気がするが、自分はちょっと厳しいので……単純に、面白かった。
武闘派僧侶、戦闘、裁判、強盗による供養……なんだか盛り沢山だった「ロクロ・クビ」。
昔の本を漁ってみるのはやっぱり面白い。
思ってたんとちがったのは事実だが、この裏切られかたは良いものだった。
今後も食わず嫌いせずにあれこれ手にとってみよう。