FCNTの倒産に思う事
5月末、いきなりこのような報道が入ってきて驚いた。
https://www.tdb.co.jp/tosan/syosai/4966.html
FCNTは元富士通傘下の富士通コネクテッドテクノロジーズが富士通から独立してできた企業。スマホ事業を手掛けていた。以前から赤字という話は聞いていたので、おそらくは多くの人の想像を超えるほど資金繰りは悪化していたのだろう。
さて、このFCNT、スマホ事業を手掛けていたのだが、そこには決定的ともいえる問題があった。それがキャリアへの依存であった。
これまでの日本の携帯事業はキャリアが端末の開発から販売まで関与し(価格もキャリアが決定権を持つ)、メーカーはキャリアの言われるがままに製品化することがメインとなっていた。しかし、そのやり方は海外からスマートフォンが流入すると状況は一変する。
海外メーカーが手掛ける端末はメーカー自身が企画し製品化して販売するというもので、海外ではそれが当たり前であった。そのため海外メーカーはユーザーの求めるものを追求する必要があり、販売のたびに使い勝手の良さを磨き改良を重ね、シェアを獲得していった。そうした企業はサムスンやアップルは当然としてファーウェイやシャオミといった中華メーカーが名を連ね、世界各地に影響力を及ぼすほどの強さを誇るようになった。
一方で日本の場合は長いことキャリアの顔色を窺うことばかりしてきた影響もあり、彼らに受けの良い製品をつくることしかできなくなってユーザーが求めるものをつくれず、それどころか不要な機能やアプリを詰め込みで不具合の嵐を巻き起こし、技術力も低下して多くのユーザー離れを引き起こした。価格も海外勢と比較して高額でその上性能も低め、おまけに使い勝手に直結するUI周りでも上手くカスタムできていない有り様となってしまった。
キャリアの言いなりになってしまえば当然のことながら彼らの要望の方が優先されユーザーの望む製品はつくることができず、端末にもキャリアの思想が反映され使い勝手が悪化、価格もキャリアの意向が反映され海外メーカー以上に性能比で非常に大きく吊り上げられた結果「日本製=高かろう悪かろう」の図式が出来上がるという、現代の日本の脆弱さを象徴する表現が広まることとなってしまった。
ちなみにキャリアの言いなりになってしまうと、起こってしまうことが以下である。
1 ユーザーの声が反映されにくい
2 消費者よりも既得権益層ばかりを優遇する
3 端末価格が余計に上乗せされる
飼い主たるキャリアの要望が通ることになるのでユーザーの声は無視されやすく、その上既得権益層を優遇するようになり、彼らに受けの良い製品ばかりが生産されることとなる。そうなってしまうとキャリアをはじめとした既得権益層の取り分が端末代に上乗せされる事になり、そうした負担は消費者に押し付けられてしまう。当然ながら端末はぼったくり価格となりコスパ最悪の烙印を押される。利用者も離れメーカーの弱体化につながる。
以上のことをやってきたのが元富士通グループのFCNTで、最近だとスナドラ695を載せて10万弱に価格が設定されたぼったくりのarrows Nを投入したことは記憶に新しく、その点でもまさに典型的な日系企業と言える。
倒産する前にとある大手キャリアに買収を依頼して断られたそうだが、ご主人様に良いように使われ、利用価値が無くなった途端切り捨てられるという創作作品にありがちな負の展開になってしまったのは最早自業自得と言う他は無い。
ユーザーの声よりも飼い主のキャリアの声を優先させ、その上価格もぼったくりにした上で大量のプリインアプリを入れて使い勝手を悪くさせ不具合を連発、日本企業への信頼を損なわせアップルをはじめとした海外メーカーに多くの日本人を流出させたことは将来的な意味も含め国益の大きな損失をもたらしたと言ってもいいほどである。それをつくり出した元凶が大手キャリアと忠実な子分であったメーカー、特にFCNTの前身であった富士通であった(裁判沙汰になった事もある。詳しくは「arrows 裁判」で検索してみよう)。政治においても同様のことは既に当たり前となっていて、国民の声よりも各種利権集団の声を反映させる政策ばかりを打ち出し、国民の生活を苦しめるほどの圧政が敷かれている状態である。そのようなことが続けば国民の支持は当然失われ確実に亡国の道を歩むことになる。大手キャリアがメーカーと組んでやっていることもそれと同じことでまさに圧政そのものであると表現できる。
長い事キャリアにこびりつき彼らの意に沿ったことばかり行ってきた報いが今、倒産という形で跳ね返ってきているので因果応報と表現してもいい。1つの企業が消える寂しさはあるものの、今までの行いを考慮すれば消えてくれたことの嬉しさが勝り、キャリアの悪どい商売が潰えるきっかけをつくってくれたので今回の件は大変喜ばしい事であると言える。ついでにキャリアの端末販売も禁止してほしいものである。そうなれば確実に市場が活性化されるので。
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