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【2023/11/3・文化的note】今更のように『君たちはどう生きるか』を観ました

 折角フリーゲーム久しぶりに公開したし連続で投稿して少しでもnoteのPV伸ばそうシリーズ第二弾


『君たちはどう生きるか』 感想


 実験作、だとか象徴的(前衛的?)な作品とは何とはなしに把握していたが、実際に観てみるとそこまで振り切れられているような感じでもなく、(作品でなくこのいかにもネット的な評価の方に)肩透かしとか困惑を感じた。そこまで逸脱的な意味不明な話でもなかったような。

 まあ、不満点というか不安定な感想になるとは思うが大目に見て下さい。
 ちょっとよく分からなかったのが、開始50分くらいで眞人が迷い込むことになる(それまでも不穏めいた描写はあるが)塔、並びに「下の世界」でのメインとなる展開について。

「ナツコさんを助ける」

 これ達成できてないんですよね。お前はいったい何のために下の世界へ行ったんだと。

 大嫌いとか言われちゃってるし。

 世界が崩壊する時に若かりし頃のキリコさんにしれ~と(漫画だったら一コマ描写くらいの軽いノリで)助けられてるし。

 ナツコさんもよく分からない。元嫁の妹(?)という立場で眞人の新しい母親になることへの不安や焦燥が、どうして「嫌い」という感情に収束して(結果として拒絶する)ことへと繋がってしまったのか。注連縄らしき産屋の表現と言い、よく分からねえ。インコが赤ちゃんを食べない理由(インコ軍団、キモさだけならマジでこの作品のMVPだと思います)やそれと対応してワラワラ(胎児)がペリカンに食べられてしまう理由(群れを追われた? この地獄にやってきた?)、意味深な描写や台詞は数あれ、それらが収束されることはなく、宙ぶらりんのまま世界の崩壊という形で放り出されるので、何だかとても、もやっとした(『IQサプリ』じゃないんだからちゃんと感想書け~い)

 妊娠、結婚、出生主義、家族のカタチ、家庭を持ち大人になると言うこと……。
 そういった創作でよく用いられるモチーフ(昨今は割とデリケートな問題になってるように見えるが)が物語と分かち難く結びついているようにも思えずよくわからなかった。というかはっきし言って全編を通しよくわからなかったのだけれど、よくわからなくてもなんかすごいし眼が離せないのがジブリ作品の魅力なんだなあと感じる(ごまかし)。

 冒頭の空襲警報からして戦争の疎開の地理的移動や変わっていく家族の形だとか、時代に翻弄される労働者だとか、学園とかいう監獄における人間関係を描くのかと安易に想定していたのだけれどそんなわけもなく(スパイスにすらなっていないように見えた、学校描写とか一瞬で終わるし)、いや、しかし、前述したように異世界での冒険を経ての成長だとかそういう要素(が齎すカタルシス)にも欠け……でも言っとくと、面白かったんですよね、ちゃんと。この不可思議性をどう表現したものか。 

 ちょっと現実世界⇔下の世界の関係性を整理するか。ってもコス圧要素に欠ける気がする。

 我儘なばあちゃん⇔キリコさん 
 家事で焼け死んだ母⇔ヒミ
 その他ばあちゃん⇔人形
 産まれてくる胎児⇔フワフワ
 セキセイインコ⇔インコの化物(明らかに化物として描かれているので)
 ?⇔ペリカン
 ?⇔アオサギ

 ペリカンとアオサギだけよく分からない。ペリカンに関しては、下の世界に行ってすぐに襲われ、「墓の門」を空けさせるという重要な役割がある。そしてキリコとの出逢いに繋がる。

 マジで何も分からねえ。誰か解説してください。

 積み木、石(≒意志)、悪意、拾うという行為、様々な世界に繋がるドア、世界の狭間に立っている塔(もうこのモチーフ何回も見た、塔は物語に安易に登場し過ぎだとう思うの)……。

 鏤められた暗喩は、中盤で唐突に出る「時の回廊」だとか世界の主らしき大叔父様(うーむ)によって解決の芽を観ることなく「なんだかよくわからないもの」として雲散霧消してしまっているように感じる。ヒミがお母さんなのは冒頭の焼死とペリカン焼き払うシーンの対応ですぐわかるし……。ミステリ的な大掛かりの仕掛けがあるわけでもなく……。ナンセンスって程でも、ないよな。難しい。進撃の巨人やエヴァのように内的世界や“道”のような高次元の世界を示しているわけでもなさそうだし。そう考えるとかなり象徴的。意味がありそうで意味がない。意味なんてないよ、人生には。ばらばらに散らばったピースが偏在しているだけだよ。的な。散乱して元に戻らないパズルのような不可解さを感じました私はこの作品から。
 
 異世界というものについて。
 現代社会の病理のような、と言い過ぎかもしれないけど、異世界ってある種病的な空間ですよね。

そもそも、別世界へ迷い込む系の話って、あくまで現実世界を軸としていて、そこで一時を過ごし(お約束のように現実と時間経過はずれている)そこでも経験を経て少年少女が成長する(そしてこれまたお約束のように忘れていく)。って感じだと思います大枠では。

 不思議の国のアリス然り、果てしない物語然り、ナルニア然り、同じジブリの千と千尋然り。
   
 異世界系作品に造詣が深くないのであれですけど、スローライフものとかはもう異世界の方へ軸足が完全に固定されちゃってるわけじゃニアですか、現実的にはもはや「死」んでしまっているわけで。人生終わったwとか言って『なろう』読む暇あるなら少しでも努力しろよとか資本主義社会に染まり切った私は思うわけですけど、異世界での出来事は一種の安寧に違いがない。

 しかし『君生き』で描かれたようなおぞましい異世界に停滞したいですかね? 世界のバランスがどうこう(ご丁寧に積み木や石まで用意して)という話は、異世界(夢想空間)でさえも邪悪で汚濁的な物に転化してしまうということを示唆していますし、それ以前にあの世界が容易に崩壊してしまう仮初に近い何か(何せ不安定な「石」の力で動いていた)でしかなかった。

 けっきょく、眞人は自力でというかほぼアオサギやヒミに頼りきりで132番のドアから現実世界へ回帰するわけですが(自分一人の意志で頑張ってるだけインコ大王の方が格好いいよ)、これまでの数多の別世界旅行系主人公がそうであったように、次第次第に薄れ忘れ他の雑多な経験の中に飲み込まれていく。あっさりと、何でも何事でもなかったかのように。最後の、寂寥を通り越して清々しささえも感じる「戦争が終わって二年後、」のモノローグには痺れました。夢想でさえも、非現実でさえも、時の流れとともに普遍化していく。……良かったです。

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