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むかしばなしを作ってみて、気がついたこと

おはなし」それは、子供たちが幾度となく求める娯楽だ。幼いころの記憶を、幸いにして覚えているのであれば、同じおはなしを何度も何度も話すようにせがんだことを思い出して欲しい。誰もが通る成長の一ステップを。

わたしにも、その順番が回ってきた

4歳の長男と、3歳の次男が、おはなしを求めてやまない。当然ながら、大人となったわたしは同じ話を何度もするのはひどく面倒であるし、ここに創意と工夫を加えてみたいものである。

工夫1.話を端折る

そもそも「おはなし」とは、ひどく単調である。どのみち結論は見えているのだから、さっさと話を進める方が良いに決まっているのだ。考えてもみてほしい、子供たちへのおはなしは、その道徳的規範となるべきものなのだ。決まった話を蒸し返すためのミーティングを、ひたすら開催するようなおじさんには、決してなってほしくはない。それを、伝えよう。

「むかしむかし、あるところに、おじいさんと、おばあさんがいました
おじいさんはしばかりに、おばあさんはももをもってかえってきました」

返答:違うよ、おばあさんは、川に行ったんだよ!

どうやら、話を端折るとばれるようだ。次の試みは、相手の記憶力を試してみよう。

工夫2.登場人物を差し替える

登場人物が多くなればなるほど、説明しなければならないことが増えていく、それは社会に出て働くすべてのお父さん、お母さんの共通認識であろう。あなたの勤務先を思い出していただきたい。そう、リストラと、人員の刷新が成長する物語には不可欠なのだ。

「ももたろうは、すくすくとおおきくなりました、そして、ハトと、犬と、ネコを連れて鬼退治に出かけました」

返答:(神妙な顔)ネコ、いたっけ?

どうやらばれてしまったようだ、結局ネコを、カエルに差し替えて続行した。次はばれても良い嘘を込めよう。ハトがどうとかいうのは、つかえない「てにおは」おじさんへの第一歩だ。ここに触れない我が子は優秀に決まっている。

工夫3.登場人物を、最初から取り替える

やはり、小手先のリストラでは、長話のショートカットは不可能である。大人の組織では、はみ出しモノがいることで、圧倒的な成長を可能にするのだという。子供にも、圧倒的成長を期待しよう。

「ももをわってでてきたのは、鬼でした」

返答:違うよー、ちゃんと話してよー

これは滑ってしまったようだ、ウケが非常に悪かった以上、路線を変更する必要がある。

工夫4. 万能の王者、うんちとおなら

何が面白いのかさっぱりわからないが、ひどくうけるものというのが存在する。上司に提出する何かで、テンプレのように書き込む文面は無かろうか。ここは、良きパパとして、子供たちにテンプレの面白さを伝えよう。

「おばあさんは、おおきな、おおきな、おしりが流れてくるのをみつけました
おばあさんは見上げると、ぶーーーと大きなおとをだして、うんちがでてきました」

返答:一同大爆笑

「これは、いける」と確信したわたしは、さらに話を続ける。キーポイントは、おしりとおなら、そしてうんちだ。このポイントを押さえれば、ウケが取れることは間違いないのだ。

あらゆるビジネスにおける、ソリューションにおいて、第一に考えるべき事は顧客本位、即ちクライアントが心底望むモノはなにか、である。これを脳汁なるものを煮詰めて出す、それが大人の世界なのだ。これは是非、教育効果を期待して、子供たちに伝えよう。

「川からは、ちいさなおしりが100こぐらい、どんぶらこ、どんぶらことながれてきました、
おばあさんがちいさなおしりを10こ持ち上げると、いっせいにおならをしました、めでたし、めでたし」

返答:(一同爆笑)もう一回、もう一回はなしてよ

作戦は、完全なまでに成功した

彼らは、保育園に向かう自転車の中で、シン・桃太郎を絶叫していたことは、わたしにとって誇らしい勝利の一ページだ。どんな文章を書いている人間であっても、推敲を重ねた内容を覚えてもらい、朗読して貰う、それは、すべてのnoteライターにとって感無量ではなかろうか。ましてや自分の子供にである。

社会の複雑なテーマや、子育ての苦労、そういったものから、一マイルほど離れよう。タンポポの生えた道ばたには、野良猫のうんちが落ちているだろう。きっとそれは、子供たちの笑顔を運びこむ、ほほえみの天使なのだ。


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