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集合意識ペニスマン

殺伐としたTwitter世界に、突如としてあらわれる微笑ましい話。

集合意識ペニスマンについて。報道によると、「Penis Man」と落書きしたアリゾナ州の男、ダスティン・ショーマーが逮捕されたのだという、そして彼の逮捕後も、その謎めいたメッセージは別の場所に書き出され、(恐らく保釈された)彼が意味深な「私たちは皆ペニスマンなんだ」というメッセージをFacebookに残したのだという。

ややこしいようで、ややこしくない話だ。そのメッセージを書き残したいと考えている人間は、彼だけで無く、実際に行動に出たのもまた、彼だけでは無かったのだ。運悪く捕まったのが、このショーマー氏だったというわけだ。

ちなみにこの記事、2年ほど前のモノだが、有名なTwitterアカウントが引用したため、今になって日本語Twitter圏に飛来したようだ。

調べてみると、ショーマー氏はその後、懲役4ヶ月、ただし500時間の奉仕労働で代替、という刑を受けたのだという。

集合意識と、集合無意識について

これらの用語は一見対義語のようであるが、実のところ対になっている言葉では無い。集合無意識は心理学者のユングが提唱した概念であり、文化を超えた普遍的な心の原型を指し、遠い文化で似たような神話が伝えられるなどの現象を説明している。対して、集合意識は社会学者のデュルケームが提唱したとされ、一つの社会の中での共有される信念と、その生態系を指している。

この「集合意識」はその深遠な仮説から、SFでも多用されるコンセプトとなった。大いなる世界の意思が存在し、それとは完全に同期が取れていない子端末がわたしたちである、などというものだ。スピリチュアル界隈が言及する集合意識は、恐らくこちらのイメージだろう。

集合意識という言葉から連想される、怪しさ、胡散臭さも、またそういった派生物から来ていると考えるのが自然である。

だが、考えてもみてほしい、人々の思考の源に、直接アプローチをかけることができたとしたら?それは絶大なる力を手にすることに他ならない。

集合意識を呼び出す、外部的な試みについて

時としてわたしたちは、意図的に集合意識を呼び出そうとする。それは昨今のTwitterを賑わすハッシュタグ・アクティビズムや、広い意味での「炎上」などがその例かもしれない。

社会運動家は何かを訴え、関心を持って欲しいが故にそのタグを付けてTwitterのトレンドに乗せることを画策し、炎上についても「誰かが」怒りをぶつけたいと思っているところにお仲間が集められているのだ。

しかしながら、それらには俗世の人間の、とても浅ましい意思が見え隠れしている。彼らの画面上での華々しい戦績と裏腹に、ひどく燃え上がったように見える場合でも、「炎上」に参加する人間は大変少ないことが明らかになっている。

最近、ハッシュタグで盛り上がりを見せていた政党が、期待していたほど得票できなかった、というニュースもまた、記憶に新しいところだ。

(衆議院選挙の蓋を開けるまで、ハッシュタグ野党の躍進に期待を寄せていたかに見える記事のサンプル)

そういった小物たちの例を見るまでも無く、20世紀にしのぎを削ったファシズムや、共産主義諸国のプロパガンダが、いかに遠大な目標(新しい人類!)を目指していたか、そして彼らが多大なる犠牲を払い、人類社会の集合意識を呼び起こそうとしたこと、また、その失敗をわれわれが参照できるのは、幸せなことだろう。

集合意識への、内在的なアプローチ

あなたが自身の持ちうる、集合意識との接続ー「大いなる目覚め悟りを開く」ーができれば、他人を操らずとも、自身の人生を華々しく見開く事ができるかもしれない。そう考えた人々を、スピリチュアルや宗教の世界に見いだすことができる。

世界の真理を会得するために、ある者は山へこもり何年も座禅を組み、ある者は、いにしえより伝わる薬草やキノコ、あるいは化学の力によって、集合意識へのアクセスを試みたという。そして、その境地にたどり着いた者は、大いなる存在との一体感を得たという。

コロナ対策と自粛マインド、集合意識のうつろい

しかしながら、常に集合意識にアクセスし続けること、それはとても難しく、あまたのシャーマンたちが矛盾した内容を叫ぶように、大いなる意識はあらぬ方向を向くことがある。例としてこの2年ほど人々の関心を集めたコロナと、その感染対策を例に挙げよう。

飲食店の机にはアクリル板を、小学生の給食には黙食を、全ての人間の礼儀としてマスクを呼びかけた彼らは、確かに一時において大いなる意思の体現者であった。しかし、大いなる意思は移ろいやすい。昨日までの立派な常識人は、今日におけるピエロかもしれない。

優れたサイエンスコミュニケーターとして、人々の自粛マインドという集合意識の神官たり得た、著名な医師たちもまた、そのくびきから逃れることはできなかったようだ。こちらの医師のアカウントは、今や一年前の書き込みをペタペタと貼られ、今日言っていることとの矛盾を指摘されるまでに至っている。

疫病に対する心構えや、社会の対応は、実のところ、集合意識への働きかけが成功し、ゆえに子端末が振り回された例といえるだろう。一時期暴れ回った自粛警察など、集合意識が完全に離れてしまった今となっては、笑い話の一つに過ぎない。もう一つ、待ち望まれた集合意識自由市場による円安と、その結末に思いを馳せよう。

自由な市場と、待ち望まれた円安について

家計はインフレを受け入れていない」そう叫ぶ人々にとって、インフレを引き起こす要因として、円安が大変な悪役となっている。しかしながら、著名な経済評論家や、ジャーナリストが円安を待ち望んでいたことは、Twitterなどの過去ログより明らかだ。

回り回って、大いなる意思が自説に微笑んだとき、わたしたちは本当の試練を受けることとなる。そう、子端末にすぎない自分が、本当に正しい判断に至っていたかどうか、である。円安が人々に微笑みをもたらすのか、それはもう少し時間をかけて注視する必要があるだろう。

そしてもし、この一連の経済情勢の変化によって、あなたの投資資金が瞬く間に減少したのであれば、なおのことペニスマンの真理に耳を傾けるべきだ。ペニスマンの普遍性、それはあなたの街の人通りの少ない高架下を見れば十分だろう。同じような落書きが目に入るはずだ。あなたのそばまで、きっと来ている。

Penis Man→ Men is nap (人とは、ひとときの睡眠)

あなたが、時代精神と余りにも離れてしまったと思ったときは、非合法な薬物はさておき、床に座ってまっすぐ座禅を組もう。こころを可能な限りからっぽにしよう。どのみち頭の中に詰まっている知識は、大いなる集合意識から見ればチリのように小さいモノに過ぎない。昨日の常識たるマスクは、明日には福笑いのお面に等しいかもしれない。投資をしているのであれば、真っ赤になった取引口座を、あるいは数字の桁が小さくなったFX口座を、あるがままにみつめよう。

ペニスマンの真の意味
人とは、ひとときの睡眠

空気を読んでマスクを付けた炎天下、値上げされたiPhoneの値段を眺めよう。きっと、あなたの中のペニスマンが走り出す。そしてそれは、あなただけではない。

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