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高2のヘアドネート

8月、約2年間伸ばし続けた髪をドネートした。医療用ウィッグにするため。長さ約35cm、腰まであった髪の毛は顎あたりまで短くなった。

理由はと言うと、強いていえばコミュ障故に美容院をサボって伸ばしっぱなしにしていた髪の毛を何人かに「長いね。寄付したら?」と言われたから。
あと本音を言うと自分の髪の毛に超〜〜〜〜〜〜自信があって寄付団体の人とかに「この髪まじやべー最高っス!」みたいなこと言われたかったから。ネタバレすると「この髪まじやべーです」的な連絡は無かったけど、書きたい本質では無いので無視する。

カット当日、私は宛ら断髪式の日のような気持ちでチャリを飛ばし美容室へ向かった。えらく久しぶりの美容室独特の匂いと雰囲気に若干打ちのめされているうちにカットの段取りがどんどん進んでいく。
すぐに髪の毛は6等分にブロッキングされて小さいゴムで束にされてた。いよいよ断髪。本来断髪とは力士の断髪のこと、つまりは引退する証だが、私も一種の引退感というかお別れ感が結構あった。ハサミの音と一緒にどんどん頭が軽くなっていく。「これでこの髪の毛ともお別れか」と思いを馳せてると、ギリギリ泣きはしなかったがやっぱり何か込み上げてきたのだ。

自分語りをするとこれより前に髪を切ったのは中3の時。そこから高校受験と高校受験失敗と地獄高校生活(前半戦)を共にしてきたわけで、こう、上手くは言えないが人生の中で1番濃くて辛い時期を一緒に生きてきたから 、大事な友達が急に居なくなった、みたいなそんな気分にもなった。

しかしまあ切ってる途中で「やっぱやめてください」など言えないのででしっかり切ってもらった。頭がとても軽い。毎日入浴する度に髪の毛が水を含んで重くなるのを「絶対なんか憑いてる」と思ってたけど、これは確実に憑いてない。

憑き物が取れた爽快感で「めっちゃ頭が軽いですね」とおもむろに呟くと美容師さんが「髪が綺麗なのでウィッグはきっと喜んで貰えますよ」と。

そうか、私にさっきまであった髪の毛はウィッグになるのか。
身の上話をすると、私は小学生の頃に父親を癌で亡くしてるので医療用ウィッグというものに結構思い入れというか、親近感というか、とにかくそんな感じのなんやかんや色々思うとこがある。結局私がヘアドネートすることを決めた背景にはこの感情もあるのかもしれない。

カットが終わって美容室を後にすると私は異常にハイテンションで近所の祖父母宅に押しかけてひとしきり見せびらかしたあと帰宅して家の鏡でじっくり自分と髪を見た。異常なハイテンションのまま「毛先、お前もしかして高校受験も知らんのちゃうか?」とか言って髪の毛に話しかけたりしていた。

暫くしてテンションが落ち着いてからあれこれまた考えた。私の高校受験を知ってる髪はもう私には無いけど、その髪はまた別の人の人生を知ることになる。そう思うと今度こそやっぱり涙が出てきてしまった。

なんか寂しい気持ちになった奴みたいな文章になった。

寂しいのは寂しい。でも辛くて苦しかった自分から引退する的な意味での“断髪式”になったと思うので、終わり。

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