見出し画像

守りたい「なにか」がある彼女が一番強かった。

花咲くころ

ジョージア(グルジア)。なぜか私にとって特別な国。行ったこともないのに、とても親しみを感じる。そして、いつか訪れたい国。

それは、たぶん、定期的に、ジョージアの映画が日本で公開されて、それらを観に行っているからだと思う。また、今年は岩波ホールで、ジョージア映画祭なるものもあるというではないか。東京だけど、行きたい…。

***

今から約25年前、内戦に揺れていたジョージアが舞台。二人の少女、エカとナティアを中心にストーリーは進む。

91年に独立を果たしたものの、内戦によって人々の心に大きな傷跡を残したジョージア。境遇は異なるが幼なじみの14歳の少女エカとナティアは、不足する生活物資を補う配給の長い列に並びながら、おしゃべりするのがささやかな楽しみだった。そんなある時、ナティアに思いを寄せている不良少年のコテがナティアを強引にさらい、結婚を強要。結婚したナティアは学校にも行かせてもらえず単調な日々を送るが、ある日、ナティアに思いを寄せていたもうひとりの少年ラドの身に悲劇が起こり……。(映画.comより転記)

14才で男に攫われて、めでたく結婚、とか今でも中東やアフリカのどこかの国ではフツーにあるんだろうけど、カルチャーショックすぎて。ジョージアでも、つい最近まであったことだという…。

意志の強そうに見えたナティアの方が、実は流されるタイプで、アンタ、さっきまでラドの方がよかったんちゃいますの、何でコテに攫われて、ハイ、結婚でええんかい、と思ってしまう。親友のエカじゃなくてもね。

エカの眼差しは、この映画の中の誰よりも一際強く、大人たちも怯むくらいで。

そんな彼女の心中は、

何で、みんな私によそよそしいの?

母さん、父さんの手紙をどこに隠してんの?

姉さん、母さんに隠れてワルばっかりすんなよ!

ナティア、本当に好きな人と一緒にならなくていいの⁉︎

というあたりだろうか。不満が募っていると言うよりは、言うに言えない、彼女なりの気遣いや賢さのようなものも見てとれる。

また、エカが、周りからのよそよそしさを感じていると思うのには原因があって。詳しくは描かれていないけど、彼女の父親が原因です。多分その当時のジョージアの複雑な状況も絡んでいて、ロシア側につくか否かで、住民たちも割れていて、エカの父親は刑務所に入っているってことも徐々にわかるんですが、その理由もサラッとしか触れられていないけど、エカの心に暗い影を落としていることはたしかで。

この映画の見どころの一つは、エカがナティアの結婚式で一人で踊るシーンです。あのダンスは男性が踊る振付らしい。私はエカがナティアの結婚に「抗議」している風にしか見えなかった。言葉にはしないけど、目がそう言っていた。酔った大人たちは、物珍しそうに、また感心しながらエカのダンスを見物していた。

それと、ナティアがラドから護身用にとピストルを渡され、彼女はそれをまるでアクセサリーか何かをもらったかのように嬉々として受け取り、また、一部の男子から執拗に苛めを受けるエカに、いとも簡単に使えと渡します。そういう時代だったんだってのもあると思いますが、ナティアの安易さとエカの慎重さが、強調されていて。だけど、ナティアもエカも、こんな場面で、というところで、そのピストルを使うんです。それがこの映画のもう一つの見どころかな。

ナティアが、ただ美しいだけの大人びた雰囲気の少女だとすると、エカは、一見フツーの見た目ですが、彼女には、場面ばめんで、守りたい何かがあって、きっちりとそれを行動に移す。それは、どんな武器よりも強くて。時に、その武器を使って、彼女は強かに生き抜く。

何となく感じる戦中の大人たちの不甲斐なさや理不尽さとは対照的に、エカの強い決意の表れ、眼差しが光っていました。

***

ジョージアの映画には、毎回何かしら気づかされるものがある。もっとたくさんの人に、こんな国があるんだと知ってもらいたいです。

2018年30本目。テアトル梅田にて鑑賞。

#映画 #cinema #シネマ #感想 #レビュー #ジョージア #グルジア #花咲くころ #note映画部 #コンテンツ会議

この記事が参加している募集

コンテンツ会議

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?