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【cinema】ヴォイチェフ

2017年51本目。EUフィルムデーズ8本目。スロバキア映画🇸🇰

ヴォイチェフとは、この映画の主人公のおっさんの名前です。おじさん、じゃない。おっさんです。文字どおり。トップ画像の右側の彼です。

いわゆる中年の危機を迎えた男の日常を描いたアーバンコメディ。40代のヴォイチェフは妻を失い、家族とも没交渉、仕事もぱっとしなければ友達もいない。唯一の話し相手であるタクシーの運転手ラツォと共にさまざまな経験をするが、いずれも残念な結果に終わる。普通の生活を送りたいだけなのに、努力すればするほどおかしなことになっていくヴォイチェフは、果たして幸せを見つけることができるのだろうか…。(公式サイトより転記)

ここに出てくる人たちは、何かしら「抱えてる」人たちばかりです。ろくでなしの隣人ロツォ、その妻サシャ、ガソリンスタンドのカフェ店員のヴァレリア、新興宗教の信者エヴァ…。

玄関先の観葉植物。屋上に飼われている鳩たち。それらを世話する常に短パンのヴォイチェフ…全てが滑稽なのに、笑えない。だって、彼は必死に生きているから。どんなに人から笑われようが、人生につまずこうが、彼はそれを受容しながら生きている。明日は少しよくなると信じて。けれど、そこに「懸命さ」はなく、あるのは「緩慢」と「諦め」だけなんだけど。毎日変わりばえしない日々を過ごすのってこういうことだなと思い知る。

フツーのおっさんの日常をひたすら映し出す映画なんて、どこが楽しいんだと思うでしょう。楽しくなんかないよ。何でこんな映画作ったんだよって思う。でも誰もが感じているフツーの生活の危うさってこんなんじゃないかな。男女関係なく。本当に日々の暮らしに必要なのって、ドキドキワクワク心躍るようなことばかりじゃなくて、屋上から見る何気ない景色の素晴らしさとか、実は自分を密かに見つめてくれている人がいるって気づくこととかなんじゃないかなって。ヴォイチェフは、大切なことは彼の日常の中に隠れているのに非日常を求めすぎてたんだなってわかるんです。

彼を拒否する者もいれば(こっちの方が断然数が多いけど(笑))、求めている者もいるんです。無理して取り繕わなくていい。噓いつわりは、自分以外の誰かを傷つけてるよね、無意識に。人生って、そういうこと。そんな幸せに気づこうよって映画なのかなと思います。

にしてもキャラクターそれぞれがホントにいい味出してます。女=寝る、しか考えてない隣人ロツォが実は一番己の欲望に正直で、周りにも誠実に(あれ、妻には違うか)に生きてるんじゃないかなって思いました。彼はヴォイチェフに変な入れ知恵しかしないけど、なかなか協力的でイイ奴で憎めないんですよね。どこにもいるね、こんなおっさんも。

それにしてもヴァレリアの立場には身につまされるものがあったわー。どこの国も同じやね、「結婚適齢期」を過ぎた独身女性に対する周りの視線、投げかけられる言葉の数々。まるで自分を見ているかのようでした。

「ほのぼの」とはいかないけど、ほんのちょっぴりの希望を持てる感じで、たまにはこんな映画もいいかなって思える内容でした。あと邦画だったら嫌悪感を覚えてしまうけど、遠い国スロバキアのおっさんだから、コミカルでこんな気持ちで見れるのかなとも思いました。

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