【cinema】ジュリアの世界
2017年40本目。イタリア映画祭5本目。
今回のイタリア映画祭で、最後に見た作品。一番衝撃度が強かったもの。というのも題材がエホバの証人を扱った、とてもセンシティブな内容のため。今までそれについてとり上げた映画は見たことなかったし、私自身が日々何気なく過ごす中では全く経験できない世界を垣間見ることになったことはたしか。
厳しい戒律を持つ宗教を信仰する家庭に育った高校生のジュリアは、布教活動中に、刑務所から出所したばかりのリベロに出会う。立ち直らせるために仕事を提供したことをきっかけに、確固としたジュリアの世界が揺らぎ始める…。(映画祭公式サイトより抜粋)
簡単に言えば、エホバの証人について攻撃するものでもないし、「異質なもの」を排除する内容のものでもない。(ただ、日本以上に、信仰する者たちは特殊な人種として描かれているのは感じた。ナチスドイツがあの時代、彼らを排除したように、キリスト教国において、そこは変わらないんだろう)
とにかくこれは愛と信念の映画で、180度異なる世界で生きてきた2人が分かり合える日は来るのか、確固たる信念は何を以ってして崩れてしまうのか、という疑問を投げかけていると思います。ある意味普遍的で、昔から取り沙汰されてきたテーマだし、現代版ロミオとジュリエット的な要素もあるかと思います。
ただ言えることは、「品行方正な」ジュリアが、リベロという不良青年になぜかしら惹かれてしまうのは、偶然でもあり、必然でもあったように思うのです。人を好きになるということに、理屈なんてないし、そこは本能で感じる何かがあるんじゃないかなと。
そして、女は強いです。とにかく強い。これは、彼女が今まで信仰してきた何かが影響しているのではなく、女性が持つ特有の精神的強さだと思います。ある意味現実的で、合理的。本能で突き動かされて、愛の道を選んだ彼女が、それでもふと立ち止まり、これっておかしくない? こんなの私じゃない、と思ったとき。彼女はリベロとの別離を選択するのです。そこでかのリベロが起こした行動は……薬物過剰摂取による自殺未遂…。男ってさ…と思えてくる。
書きたいことは色々あるのだけど、まとめきれないでいます。信仰の違い、男女の違い、生き方の違い。様々な違いがこんなにも矢継ぎ早に描写されると、「みんな違って、みんないい」の精神なんて、どこ吹く風で、観る者は戸惑うばかり。決して「互いを受け入れること」=受容の大切さが説かれているわけでもなく、違う世界に住む人たちが、相互に、俯瞰したままの状態なんです。ジュリアは、その狭間にいて、自分の道を切り拓いていく者として描かれています。
いや、むしろ「異質なもの」として周りから半ば蔑みの目で見られている彼らこそ、「世俗の人間」を排除しているし、受容とは程遠いところに位置しているように思いました。
日本でもいわゆるタブーとされるテーマは多くあって、知りたくてもそのキッカケすらないものがたくさんあります。その一助となるような本や映画はなかなか多くの人の目に触れることはないです。宣伝すらできず、ひっそりと世に出ているものも多いとのこと。この作品はそのうちの一つで、その機会を得ることができた私は、幸せだなぁと思います!知って、考えるべきこと、新たな世界を垣間見て、自身の思考を確かなものにすることほど刺激的なことはないからです。情報過多な現代だからこそ、昔より規制は多いかもしれない。ただ、偏ったものの見方に縛られることなく、柔軟でありたいと思った次第です。
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