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ハンガリー発、エロさが一切ない心でつながる"官能"物語。

心と体と

この物語が、好きだ。

この作品の質感が、とてつもなく好きだった。

全体的に白く、淡く、渇いていて、けれどそれはとても温かく、柔らかい。そんな印象をこの映画から受ける。

この物語の主人公である男女、エンドレとマーリアの二人のやりとりは、とてもぎこちない。他者とコミュニケーションをとることって、距離を縮めようとすることって、こんなにも大変なことなんだって、改めて気づかされて。

ブダペスト郊外の食肉処理場で代理職員として働く若い女性マーリアは、コミュニケーションが苦手で職場になじめずにいた。片手が不自由な上司の中年男性エンドレはマーリアのことを何かと気にかけていたが、うまく噛み合わない。そんな不器用な2人が、偶然にも同じ夢を見たことから急接近していく。 (映画.comより転記)

舞台が食肉処理場というところがまた特殊だ。「無機質な生と死」が隣り合わせになっていて、その違和感を感じながらも、そういう世界があるのだということを思い知る。

エンドレとマーリアの共通点は、夢だ。二人が同時に、それぞれが雄鹿と雌鹿になり、夢の中で出会う。会話すらなく(そりゃ鹿だから当然だ)、しかしその佇まいは、ずっと共にいたかのような二頭で。

スルスルと物語は進み、本当は笑えないけど、特にマーリアのぎこちなさにクスリと笑ってしまう。人を好きになることってこういうことだなって。誰からも教わることなく、共有することもなく、自分の世界に籠っていたマーリアにとっては全てが初めてのことで、そんな彼女がCDショップで店員に聞く。恋する時に聴くオススメの音楽は? と。

で、ちょっとイマドキの若い女性店員がコレよ、というのが、ローラ・マーリングの"What He Wrote"だ。でもこの英語の曲の歌詞をじっくり聴いてみると、どう考えても、これ、恋の悦びっていうよりは苦しみなんじゃないかと。マーリングの悶えるような狂おしさを感じさせる声音と歌詞で、マーリアは、焦燥感みたいなものも感じちゃったんじゃないかな。それでも、この店員のネエちゃんのチョイスはイカしてると思う。この曲でマーリアの「それから」が決まったと言っても過言じゃないからだ。

エンドレとマーリアが寝るシーンもあるし、エンドレが愛人と寝るシーンもある。そして、マーリアのヌードシーンもあるのに、なんだってこの映画にはエロさがないんだろう。わざとそうしているかのようだ。

だけど、セリフだったり、ワンシーンがすごく官能的で(特に鹿たちが出てくるシーン)、これはこの映画にしかない特徴だと思う。

こんな関係が本当にあるとしたら、私もその世界に行ってみたい。マーリアは、誰よりも官能的な世界に自分を昇華できたんだなって。

2018年47本目。シネリーブル梅田にて。

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