【cinema】海は燃えている 〜イタリア最南端の小さな島〜
2017年21本目。
ランペドゥーサ島、そこは、イタリア南部の小島で、年間何十万もの難民、移民がボートに乗って押しかける欧州の入り口の一つです。
この映画はドキュメンタリーで、この島に住むパチンコ遊びが好きな弱視の男の子の日常をひたすら映し出すとともに、そこへやって来るアフリカや中東からの難民、移民の人々の姿を映しています。
私はてっきりこの少年と移民の誰かが交流するキッカケがあって、何かしら物語が紡がれていくものだと思って見ていたら。彼らは互いに交わることはなく、淡々とその現実が映し出されていただけでした。
それを物足りないと感じてしまうのか否か。
少年に彼らの存在は一切見えていない。自分の島がどのような状態で、大人たちがどんな動きをしているのか、全くわからない。それは少年の祖母も同じです。淡々と彼らの何てことない日常が映し出されている。
そんな彼の祖母が、漁師の息子が早く漁に出れるようにと島のラジオ局にリクエストするのがタイトルにもある「海は燃えている」という曲。甘ったるくて、ちょっと古くさい、でも確実に南イタリアに根付いている印象的なメロディで、映画を見終えて何日も経っているけど、口ずさめるくらい。
歌詞ナシバージョンはこちら→
https://youtu.be/2DqRKzDmetY
一見何の変哲も無い平和な島。そこで蠢くのは、劣悪な環境下、死さえ覚悟し、祖国から離れることを選んだ、または離れなければならなかった人々。
こんな船に800人⁉︎と思うくらいのキャパなのに、ぎゅうぎゅうづめで、島へたどり着いた時には命尽き果てている者も大勢いる。
彼らを出迎えるのは、厳重な防護服に身を包んだイタリアの海上保安部員たち。そりゃそうだよね。どんな疫病が持ち込まれるかもわからない。島へたどり着く者も受け容れる者も常にギリギリのところでやっているんだろうなと思う。
観る者は色々感じ入るものがあると思う。着目するシーンも違うと思う。とにかく気になるのは、弱視の少年が、良い方の目を隠して使わず、悪い方の目を使い続けることで、視力を回復させるところ。果たして、そのシーンと難民、移民たちの姿に対比させるものはあるのか。意図するものは何なのか。未だにわからずにいます。
この少年の未来は明るいのかどうか。この島の置かれている現実を見てほしいとも思うし、見ずにいられるのであればそうあってほしいとも思う。
私は、この映画が「良い!」とは思えなかったけれど、苛酷な現実だけを映すだけのドキュメンタリーであるよりは、様々な環境下の現実を知るという点でよかったのかなと思いました。
それにしても、おばあちゃんの作る料理が美味しそうだったなぁ〜。
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