旅で受ける温情。１５年間放浪の絵描きしてきた女。

今回は全４話中の第２話です。
人は独りでは生きて行けない

　下記記事では生い立ちと家出の計画でした。
　
　友達にもサヨナラの電話をして、
　「行先は決めてあるけど、もし親が尋ねてきた時、
　　隠し事させちゃぁ悪いから誰にも言わないよ。
　　落ち着いたら連絡するから。」と。

　一番最後に電話したのは、万年片思い幼馴染でした。
　「私、この街から出てくわ。」の言葉に皆こぞって
　行かないで！とか、どこいくの？なり、色々と言葉をくれたんです。
　ところがこの方、即答で、「あっそ。いけば～？(-。-)y-゜゜゜」と。
　ほぼ毎日遊んでたのに、耳を疑い固まりました。
　すると、
　「でもな、お前。出て行くんなら帰って来るな。
　　帰って来るくらいなら出て行くなよ。」と付け加えたのです。
　「う、うん！いってきます！＞＜」と答え、
　　振り切るように飛び出した。　

　この言葉は、未熟過ぎる私にとって最も効き目のある薬になったのは
　言うまでもないでしょう。

　さて、行先は北海道！といきたかったのだが、いかんせん路銀が無い。
　近場だと出張の多い父のフィールドだ。
　会社の伝票を見て取引の無い土地を探す。離島しかダメっぽい。

　う～ん。と唸りながら日本地図を眺める。その時、四国が目に入った。
　これ、何となく北海道っぽくネ？ほ～高知か、聞いた事あるな。てか、
　高知しか知らんけど(;^ω^)　
　てなアホ丸出しな具合でいざ瀬戸大橋を渡りドンドコ高知へやって来た！

　車内であれ程ワクワクキラキラしてたのに、
　着いた時点で全てが少し怖くなった。
　
　電車賃でお金もかなり吹っ飛んだ。
　見えるもの、聞こえる土佐弁もアウェイ感がパない。

　商店街でジャスコ発見。私の地元発祥のJUSCOの看板！
　そそくさと入り、階段の踊り場のベンチでやっと一息入れる事ができた。
　そこには公衆電話があり、求人冊子が刺さっていた。
　パラパラと観ていくと！！！

　女性１８歳以上高収入寮完備即日入居可
　という持ってこいな広告が！店名は「重役室」？まぁええわ。
　電話に出たのは女性の声だった。
　私は慎重に、感じ良く挨拶をして相手の出かたを窺っていた。

　「あのね、うち、ヘルスなの。」
　　・・・へるす。うん。・・・へーるーす？何やろねそりゃ？
　「えーと、へるすですか。あの、、、」としどろもどろになっていると、
　　女性は「あんた、家出してきたんでしょ？話し聞いてあげるから
　　その道まーっすぐ来た所にケーキ屋さんがあるから来なさい。」
　　と言い、直ぐに会ってくれた。ロングヘアーの美人だ。

　そして、私を見るやいなや、近づいてきて頭を小突くような、
　しかし撫でるように手を当てて、こう言ってくれた。
「実は私もね、１０代の時家出して北海道から流れ流れて此処に居るの。
　今は子育てしながら客は取らないで受付と女の子のケアーしてるの。」

　彼女は手をどけて、値踏みをするように私を見た後、こう続けた。
「あんたにはこの仕事、無理だわ。
　でも、もっと客層の良い店を紹介してあげる。　
　何だかあんた見てるとね、私みたいになってもらいたくない気がする」
　と、いたずらっぽくはにかんで、私の手を引いて路地に入って行った。

程なくしてビルの前に着いた。３階には重役室と看板があった。
どうやら私は４階にあるラウンジらしい。

こちらの女性はここいら一帯を仕切る親びんの二号さん。要は姉御だった。

暫くポツリと待ったのち、
姉御が戻って来てヘルス嬢用の寮に住まわせるのはムリ。
でも、ラウンジの方で空き部屋が１つある。
後は何とかなる。ガンバレ！それを告げて行ってしまった。

先ずは面接だ。
重厚なドアを開けると古いが何とも高級な印象の広いお店だった。
ステージがある。それに対して扇状にゆったりしたBOX席がある。
カウンターは無い。

　人の良さそうな初老の店長さんが面接。というか、
　もう合格している様子で説明を始めた。んで、最後に
「あ、そう言えばうちはねフィリピンショーパブね。君、日本人第一号♪」
　ん？フィリピンの人かー、黒人さんかな？まあ、楽しそうやんか！
　と言うわけで、フィリピーナと同じ寮へと車で案内して頂きました。。。

どう見てもスラム！工場の裏手にごちょごちょした一角にそれはあった。
私の入る寮だ。お隣のまあ、人が住んでる感じがする民家から
大家さんご夫婦が登場。
「この部屋なんじゃけど、家族でもって夜逃げしよってそのまんまやちゃー
　いっぺん掃除せんくら、住めたもんやないぜー、
　しょうまっこと。ほれ！」
と、謎の方言でボヤキながら鍵を開けて中を見せた。

１DKの和室。光が差し込んだ瞬間、壁の穴に一斉に逃げ込んだGブリ達。
食べ物が残ったまま腐海になってる鍋。
苔が生し過ぎて緑の箱と化している水槽。
そしてカーペットのど真ん中に鎮座する猫か何かのう○ち。

これを何とか住めるように掃除できたら住んでOKという事だった。。。
うん。ある意味ジブリでよくあるパターンやん。
私、大ファンやんか！う、嬉しいな～あはは。

「わしんくらでカーペットばーら、のかしちゃるきに、
　やりゆううちにホームセンターで買い物してきや。
　ほれ、入店祝いやちゃ(^_^)v」と何や良く分からないけど５万円頂いた！

真っ先に殺虫剤を買って、その他諸々、結構な荷物になった上、徒歩だから
帰ったら夕方だった。
６人程の男性がそこには居て、私を見つけるとワーワー言い出した。
？と思っていると、５万持ち逃げ容疑が掛かっていた(笑)
そういえば、名前も何も言ってなかったしな～・・・

いかがでしたか？
０からの出発で、沢山の方の温情に恵まれ、
１日で仕事も住処も手に入りました！
ラッキーどころの騒ぎではないですよね！

これからフィリピーナとの暮らしが始まり、色々な事が起きます。
そしてフィリピンで暮らす事にもなって行く訳ですが。
それはまた別のお話し。