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あの瞬間 吹奏楽コンクール全国大会

中学3年の秋、今は無い普門館に私は立っていた。いや、正式には座って演奏していた。

少し遡り本番の少し前

吹奏楽コンクール全国大会、東京代表として出場を決めた仲間と共に早朝最後の合奏を終えて、いざ本番の舞台へと路線バスを貸し切り向かっていた。

車内は普段から歌っている生活の歌(そういうのがある学校だった)校歌を歌い、異様なテンションで会場入りした。 これぞ青春

会場に着くと全国から勝ち進んできた団体とすれ違いに挨拶を交わしたり、女子は地方のスカートの長さに驚いていたりした。

楽器を出し、最後の音調整を終えて舞台袖へ
5000人が入る会場、隙間から見える客席と前の団体の演奏がいよいよだな、と最高の御膳立てをしてくれる。

そして、いよいよ自分達の番になる。
自分の楽器は端にあるため、最初に入りステージを横断しなくてはいけない。
録音用のマイクコードを踏まないように、自然と背筋も伸ばして私は後輩と共に黒光りするステージを浮かないように歩いていった。

景色は戻る。

本番の最中は一瞬に過ぎていった記憶しかなく、一音入魂などと言う綺麗事は15の私には無理だった。
ただ、毎日時間の許す限り練習をしていたからこそ無我夢中で吹く音に向き合い演奏出来ていたのだと思う。

最後の音を吹き終え、舞台上の仲間50人と立った時
あの瞬間は訪れた。

5000人からの拍手、身内以外からの歓声
まさに滝の様に私達の上から降ってきた感覚だった。

しかし結果は銀賞に終わった。


卒業してから今32になるまで他の舞台でも演奏しているが、あの瞬間に味わった感覚は今でもはっきりと身体に染み付いている。

あの瞬間があるからこそ、あの瞬間を越える体験を求めて生きているのかもしれない。

吹奏楽部はブラック部活とも言われてもいるが、私にとっては感謝しかない時間だった。
好きでやっていたから

今年もコンクールが始まっている

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