ちゃー

読書、映画、その他諸々自由な記録

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最近の記事

なぜ働いていると本が読めなくなるのか 三宅香帆 / kindle 感想文

本作は文芸評論家である著者が自身の経験をきっかけに、なぜ現代人が「忙しくて本が読めない」のかを読書の歴史をベースに紐解く書籍である。 私自身も隙間時間ができた際につい手にとってしまうのはスマホ、1日を振り返ってみれば本を読む隙間があるはずなのになぜか読んでいない。 この本はそれに対する解決策を提示する、やや自己啓発的な内容が盛り込まれているのかと思って手にとった。 実際は最後に解決策が提示されるものの、本の大部分は読書の歴史に割かれている。ともすれば本離れはスマホの登場に

    • 海をあげる/上間陽子 感想

      ー「この海をひとりで抱えることはもうできない。だからあなたに海をあげる。」 著者である上間先生は東京、沖縄で未成年少女の支援・調査を行いその後性暴力や若年出産をテーマに研究・調査をされている方である。 本書はそんな上間先生が自身が沖縄で生活する中で接する様々な問題を書いたエッセイである。 本書の中では沖縄の基地問題がメインで取り上げられている。一般的な書籍や記事では問題そのものに焦点が当てられ、そこに怒りや悲しみが向けられている。しかしこのエッセイで書かれるエピソードの数

      • 多様な社会はなぜ難しいか/水無田 気流 感想

        本書は著者が日本経済新聞で連載していたコラムをメインに加筆して作成された本である。多様な社会をタイトルとしているが、主眼は女性の社会進出における問題とそれに関連する男性の社会問題に置かれている。 コラムが執筆されたのが2015年から2017年ごろということでやや時間が経過しているため、ここで指摘されている問題はかなり上の世代の感覚のものであり徐々に意識は変化してきていると感じる。私と同世代は育児を家族や様々な人の手助けを借りてすることが当たり前になってきていると感じる。 一

        • メモの魔力 前田裕二 /Audible感想

          起業家として有名な著者が成功の秘訣としてメモの取り方を解説したベストセラーである。 聴く前は詳細なメモの取り方を解説したいわゆるハウツー本かと思ったが、この著作の重要な点はメモをどのように取るかではない部分にあると感じた。 1点目はインプットの要素を取り出して抽象化する能力である。メモというと聞いたことをそのまま書きとる印象があるが、本書ではそれを踏まえて自分のアクションに繋げることのできる抽象化を行うことを勧めている。この転換をできるか、できないかでインプットの成果が2倍

        なぜ働いていると本が読めなくなるのか 三宅香帆 / kindle 感想文

          アドラー心理学入門ーより良い人間関係のために 岸見一郎/ Audible感想

          ベストセラー「嫌われる勇気」の著者が書いたアドラー心理学の基本的理念やアドラーの人物像を書いた著作である。 嫌われる勇気が非常にヒットしたため、同様の思想を紹介する著作と思って読み始めたが、アドラーの人物史や一つ一つの思想とそのつながりが客観的に記載されており、心理学と聞いて難解さや忌避感を感じてしまう人には非常に読みやすい著作だと感じた。 個人的にアドラーの人物像が記載されている点が非常に興味深かった。思想が、人物像や具体的なエピソードとともに紹介されることで、その思想

          アドラー心理学入門ーより良い人間関係のために 岸見一郎/ Audible感想

          イシューからはじめよ/安宅和人 Audible感想

          「生産性」が高い、と聞くと全員がポジティブなイメージを持ち、そうなりたいと思うだろう。(少なくとも仕事においては) 自分もその一人だが、自分の生産性を高めるにはどうすればいいか、というのは習うことはなく自分でがむしゃらに努力するしかないと思っている人が多いのではないだろうか。 本書はそんな生産性の高め方を、問題を抽出し目標を設定することとしてその設定の仕方(イシューの精度の高め方)を解説した本になる。 本書を聴く前、目標を設定することの重要性はわかっていながら精度を高めると

          イシューからはじめよ/安宅和人 Audible感想

          犯罪心理学者は見た危ない子育て/出口保行 Audible感想

          タイトルが非常に刺激的であり、文章内で紹介されている事例も犯罪を犯した人の環境であるが、危ない子育てというワードが気になりAudibleで聴くことにした。 紹介されているのは極端な例であり、自分が当てはまることは少ないだろうと思って読み始めたが、自分の子育てにもその要素が生じ得るというのは衝撃的だった。子育ては4つの傾向に分類され、どの型にもメリット、デメリットがあり行きすぎれば我が子が罪を犯してしまう、あるいは社会でうまくやっていけなくなる可能性が出てくる。このため自身の

          犯罪心理学者は見た危ない子育て/出口保行 Audible感想

          アドラー心理学を実生活に取り入れてみた/ 小泉健一 Audible感想

          「嫌われる勇気」で一躍有名になったアドラー心理学を実践的に取り入れてみる方法を著者流の解釈を交えつつ解説する、という内容である。 自身の内面や考え方に重点を置いた内容かと思っていたが、どちらかというと人間関係の中で気をつけるべきポイントや著者が重要だと思っているポイントが解説されていた。アドラー心理学が人間関係を重要視していることから当然のことかもしれないが。 嫌われる勇気など他のアドラー心理学に関する著書よりもより実生活に即した内容が多かったように感じる。特に、褒めるこ

          アドラー心理学を実生活に取り入れてみた/ 小泉健一 Audible感想

          インプット大全/樺沢紫苑 Audible 感想

          アウトプット大全に続く学習のための一冊。アウトプットの前提となるインプットの効率的なやり方や精度を高めるために書かれた書籍である。 Audibleで6時間程度の内容だがアウトプット大全と重なる部分や、やや深掘りした内容が多いように感じた。また、より具体例に落とし込んだ提案が多く前回のアウトプット大全が概念や考え方を提示した本なら、今回は実践の本という意味合いが強いと感じた。 特に、映画鑑賞や読書は現在私が取り組み始めている部分でもあり、何回も繰り返し確認しながら鑑賞と感想

          インプット大全/樺沢紫苑 Audible 感想

          グランドブダペストホテル 鑑賞記録

          「正直、彼の世界は彼が来るずっと前に消えていた。とはいえ、彼は見事に幻を維持して見せたよ。」 現在はさびれかけた、一人旅の客しかいないグランドブダペストホテル。そのオーナーが語る過去のホテルの栄光と栄光の中に生きたある男の物語… 映画のタイトルは何回か聞いたことがあり、非常に有名な映画だということはわかっていたものの、見始めた最初は現実感のないコメディータッチの内容にどうしてこれが名作と言われるのか正直ピンと来なかった。しかし、冒頭のセリフが含まれる最後の15分を見てその

          グランドブダペストホテル 鑑賞記録

          アウトプット大全/樺沢紫苑 Audible 感想

          本、映画、SNS、勉強。現代は情報に溢れていて時間があるとついダラダラと情報を見続けてしまう。インプット量は増えているはずなのに、もっとインプット量の少なかった以前より覚えたり思い出したりできない…それが最近の悩みでした。今回、Audibleでピッタリなタイトルのこちらを見つけて聴いてみました。 目から鱗だったのは、インプットよりもアウトプットの時間を増やす必要があるということ。割合にしてイン3:アウト7 完全にインが9割の私が物事を覚えられなかったり身に付かなかったりし

          アウトプット大全/樺沢紫苑 Audible 感想

          鈍色幻視行/恩田陸 2023年5月 感想

          「旅が終わったのだ。不意にそう思った。私たちの旅は終わった。」(四十五、大円団、あるいは聖者の行進より) 何度も映像化が試みられるも、死亡事故により何度も計画が頓挫してきたいわくつきの作品「夜果つるところ」を題材とした小説です。 題材や帯の雰囲気から謎多い作品を解き明かしながら、旅の中で事件も起こりつつ解決していくお話かと思いきや、良い意味で裏切られる作品でした。 まず、今回の題材は人生、そして死と遺された人々の葛藤だと感じました。人生をなぞらえるように舞台が船旅とされて

          鈍色幻視行/恩田陸 2023年5月 感想