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なぜ働いていると本が読めなくなるのか 三宅香帆 / kindle 感想文

本作は文芸評論家である著者が自身の経験をきっかけに、なぜ現代人が「忙しくて本が読めない」のかを読書の歴史をベースに紐解く書籍である。

私自身も隙間時間ができた際につい手にとってしまうのはスマホ、1日を振り返ってみれば本を読む隙間があるはずなのになぜか読んでいない。
この本はそれに対する解決策を提示する、やや自己啓発的な内容が盛り込まれているのかと思って手にとった。

実際は最後に解決策が提示されるものの、本の大部分は読書の歴史に割かれている。ともすれば本離れはスマホの登場によって引き起こされたものと思われがちだが、歴史を知れば必ずしもそれだけにはよらないことがわかる。
特に納得したのは、人がノイズが少ない「情報」を求めてしまうという部分だ。現在、SNSでも自分が関心のある記事だけが表示されるようになり陰謀論者や誹謗中傷が加速化してしまうのも、ノイズを排除した結果なのではないかと思う。

炎上や誹謗中傷も同様の記事が目に入る→自分は正しいと思い込む→誹謗中傷を発信する→より関連する情報が目に入る→さらに自分の論が強化される・・・というスパイラルが形成されてどんどんと純粋になった情報が暴走する。

また、SNSに登場する様々な芸能人にもノイズの無さが求められているように思う。自分が好きな芸能の情報のみ表にだし、政治や経済、宗教等の自分が求めていない「ノイズ」を発信しないように求める。
現代の様々な問題はノイズを一切無くした情報を求める指向が一因となっているのではないかと思った。

自分が読書を続けるためにも、あえて自分と関連のない分野の知識に触れ、反対意見に触れ、見たことのないものに触れ、ノイズを意識的に自分の生活に取り入れたいと思った。

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