語りかけることを、諦めない。「なぜ君は総理大臣になれないのか」
小川淳也は、よく泣く。
涙って複雑だ。嬉しくても感動しても悲しくても悔しくても嘘でも流れるし、気持ちを整理したりすっきりさせたいときは、わざわざ努力して泣く。だから、涙には特別な価値を持たせず、何かしらの感情の発露以上でも以下でもないと思うことにしている(って寂しい人間かしらん)。
でも、でも。
小川淳也にはなぜか、彼の涙にはなんでか、真剣さ、一途さ、ひたむきさを感じずにはいられない。全く無視できない。
なぜなんだろう。
おそらくは、あふれんばかりの伝えたいことを、苦心して言葉にして、最大出力で聴衆にぶつけてくるからではないか。聞き手とのコミュニケーションを熱望し、語りかけ、そうすれば互いの回路を開けると信じ、諦めずに伝えようと努力する。伝われ伝われと願い、感極まるから、その涙には無視できない真剣さやひたむきさが宿るのではなかろうか。
小川に好意的だろう監督や撮影クルーだということを差し引いても、彼の涙や言葉の真っ直ぐさに打たれる。
もちろんパフォーマンスの部分もあるかもしれないし、もしかしたら無意識に演技しているのかもしれない。
だとしても、聞き手とコミュニケーションをとりたい、思いの丈を伝え合い語り合いたい、だから腹の底から言葉を紡ぐ。そこは、その姿勢は信じられる。
小川淳也は、伝えることに関して、ほとばしるようなパワーを持つ人だと思った。
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